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「ボクは飛倉 音々、、今日からこのクラスに入る、転校生だよ」
「転校生??」
雪が来てからまだ大して時間は経 っていない。短期間に二人も転校してくるなんて、珍しい。加えてどちらも麗人だ。
「てかなんでもう転校生が普通に座ってんだよ、大体クラスで紹介されてから馴染むだろ」
「それはまあ、、、、、そんなことより、君は?」
「西宮 凛、後そこ俺の席な」
「あ、それはごめん」
スッと退いてくれた。もう少しなにか言ってくると思ったが。
「、ん、?、、、、飛倉、?」
「気づいたようだね、そうだ、ボクの、、、仮にもお義父さんが、ここの担任なんだよ」
「!、なるほど、、、なあ、担任って前はどんな名前だった?」
「確か、元の名前は三澄 康、だったかな 」
「あぁ、それだわ」
「?」
道理でそんな名前だったか、と思った訳だ。しかし誰も指摘しなかったな。名前が変わってることを強調してたのか。今思えば教室を出るときの担任の背中は少し悲しそうだったような気もする。
「で、いつまで視界に入ってるの?」
「え、冗談とかでは?」
いやいや、と首を振る飛倉。やっぱ何だこいつ。
そんなことを考えていた時。
「ぁ、」
後ろから声がした。
「、、、ゆ、、天鈴さん」
「おはようございます、西宮君。えっと、その方は、?」
少し不安そうな目でこちらを見る天鈴こと雪。学校だから仕方ない。
浮気でも疑われているのだろうか。まだ付き合って日が浅いのに、そんなことをする度胸も隠し通す技量もない。
「、ボクは飛倉 音々、、、転校生だよ、よろし、、、」
途中で気取った挨拶が終わったかと思うと、飛倉は目を見開く。
「、、、?、お、おい、飛倉?」
「何だこの可愛い生命体は!!」
「!?」「!?」
雪と 同じリアクションで一歩後ろに下がる。何だこいつpart3。
しかし、飛倉はササッと距離を詰めて、雪の体を観察しだす。
「ほぼ黄金比だ、、最高じゃないか、、大きな目、、、ほぼメイクもしていないのか!?それでこの可愛さ、、、そしてこのふくやかとしつつもハリのある胸!、、、うぉ、やわらけ、」
「!?、飛倉さん、?、、っ、んぅ//、?」
「しかも感度も良いと来た!!」
何だこの状況は。雪の胸を触る飛倉。同性ならセーフなのか?、何かキモいおっさんの脳内をシュミレートしたみたいになってるぞ。というかけしからん、俺にも、じゃなくて、、、
「おい、何してるんだよ///、初対面でコレはない、、いや初対面じゃなくてもないぞ」
「でか、、、グへ、」
「おい!、困ってるだろ!」
「!ハッ、ボクとしたことが、、、///、すまない、、美しいモノには目がなくてだな、 」
「?、??」
「今更取り繕うのか、」
「う、うるさい!、天鈴さんが可愛すぎて、、、、申し訳ない。、、てか、西宮君だって卑猥な目で見てたじゃないか?」
「え、?///」
恥ずかしそうに身じろぎをして胸を隠す仕草をする雪。まずい。隠しきれていなかったか?、いや、カマかけだな。
「そ、そんなことは、、、、お、お前に関してはグヘヘとか言ってただろが」
「アレは本能てk、、、コホン、それは聞き間違いだろう」
「今本能って、」
問い詰めようとしたところ、廊下から人の声が。時計を確認すると、もう一般的な登校時間になっていた。こんな話、聞かれるわけにはいかない。
「、一旦、この話は辞めよう」
「う、うん、?」
「あぶねっ、、」
こいつ今、あぶねぇっつったか。
癖は爆弾、ルックスは一級の変人が、一人加わったのだった。
「はぁ、何なんだ、あいつ」
その後のホームルームでの紹介で、こいつの本性が露見するかと思っていたのだが、なんとあいつはすごい猫被りだった。少し鋭い目に短い自己紹介。クールな印象を感じてしまった。
時は昼休み。今日は食堂を利用している。 焼きそばパンを購入し、席についた。
その時だった。
「席空いてないな、、、」
一年と思われる男子高校生二人が机を探している。補修か何かで遅れたんだろう、昼休みも後半だ。立ち食いは禁止な上、エリア内でしか食事はできない。このままでは彼らは食事できない。、、、、、、しょうがない。被害者は二人より一人がいいだろう。
「君たち、ここ使いなよ、食べ終わったからさ」
焼きそばパンを死角に隠して席を空ける。
「!、いいんですか?、、、、ありがとうございます!」
一机二席なので、椅子には困らないだろう。サッと去る俺。かっこいい。
「、、、、、慶は、いないか」
しかし割とピンチだ。雪は食堂を利用しないし、まず同じ机にいると関係を疑われかねない。 友達も二人と少ないし、そのどちらも居合わせていない。困った。
「なあ君、西宮君だったかな?」
「え、?、、、げ、」
声の主は飛倉だった。
「なんだい、、げ、とは!、、、、まあ、全部見てたからさ、、、とにかく、席ないんだろう?、ここ、来なよ」
トントン、と椅子を叩く飛倉。何だこいつ。良いやつかよ。てか見られてたのか、カッコつけが。
「悪い、、、、良いのか?、変な噂立つかもだぞ」
「気にしないよ、ほら、食べれず終わるよ?君、午後、昼食べずにイケる自信があるのかい?」
「、背に腹はなんとやら、だな」
「何なんだ君は、」
「冗談だ、助かった」
「、、、、」
飛倉の言う通り、あまり昼休みも残されていない。俺は焼きそばパンを一気に食べる。
「うめ、初めて食った、コレ」
「ねえ、西宮君、」
「?」
「天鈴さんと君は、恋人関係かい?」
衝撃が走った、とはまさにこういうことだろう。本当に、やばかった。
「!?!?、、な、ち、違う、雪とはそういう関係では、」
「天鈴さんではなく 、、、雪、と」
「ぁ、」
やってしまった。あばば。、、、しかし、閃いた。なんとも言えない手だが、人質作戦だ。
「、、、、お前が雪の胸触ってたこと、知ってるからな」
「なんだい、急に、、、、、こういう話題で男の君と女のボク。一体何人が君のことを信じるかな?」
「ッッッ!!」
だめか。
「辞めてください、この件は内密にお願いします!、俺はパシリでもなんでもいいから、 せめて雪だけでも!」
「、、、」
飛倉に席を使わせてくれた良心がまだ残っているなら。この可能性に、賭けるしかない。
「、、、い、いや、何を言っているんだい、?!」
「?」
「誰にも言うわけ無いだろう?、、わざわざ人前では天鈴さん、と呼んでいるんだ。隠したほうが都合がいいのだろう? 」
「??」
「、、、少し確認しただけだよ、気づいたからにはね」
「???」
何なんだ、ただの良いやつじゃないか。マジで、良いやつ。てか洞察力すごいな。
「、、、少し、残念だけどね」
「ん、?なにか言ったか?」
「食べながら喋るもんじゃないよ、」
「なんか、お礼しようか?、、、、、というか、今更だが、ナチュラルに呼び捨て&タメ語やってたわ、ごめん、、敬語にしようか?」
「だから、食べながら、、、、、まあ、そこら辺は気にしないから。好きに呼んでもらって構わないし、タメ語でいい。お礼か、、、、そうだな、、、」
少し間をおいて、飛倉は言う。
「カフェでコーヒでも奢ってよ」
にこやかに笑う飛倉は、目尻に何故か少しの涙が寄っていた。
第五話 《完》