テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#溺愛
桜咲かな
174
18
#先生
なべたろう
179
#11..罪
新しくできた垢は、使いにくかった
慣れないアプリに翻弄されつつも、正体を言わず、りおんに接触することができた
これは何の悪気もなかった
ただアプリでやってみたいという興味から、いたずらを仕掛けただけだった
だが、私の悪事はこの後だった
今までの仕返しと言わんばかりに、新しくできた垢で、隣という関係を組んでしまった
今思えば何故こんなことをしたのか想像もつかない
元はと言えば、ちょっとした意地悪をしてやろうと思ったこと自体がいけないことだったのかもしれない
そのまま何も言えずに一週間という日々が過ぎた
言ってしまえば失望されると思ったから
いいように相手のペースに飲まれて
断れなかった私を、貴方はどう見るのだろうか
だが、私もそこまで我慢強くはなかった
自ら言ってしまった
言わなければいけない気がしたから
この人に嘘をつき続けるというのは想像を絶するより、遥かに苦しいものだと実感させられた
〔ずっと嘘ついてたの、?〕
〔ずっと俺を騙してたの?〕
〔楽しかった?〕
一つ一つの言葉が私の背中にのしかかる
どれも重たく、私の罪がどれほどのものなのか教えてくれた
言い訳などできない
どれも事実なのだから
まだ電気のついた部屋の中で、自分のした行いを反省した
なんて返せばいいのか
なんと言えばいいのか
全てがわからなかった
もう、何を言っても駄目なことくらいわかっていたから
自分が憎い
こんなことを言わせてしまった私が嫌い
でも言ってしまえばこういう事になると想像できなかった訳では無い
だからこそ、私は今の気持ちがわからない
【許してほしい】
そんなことは厚かましく、言えない
かと言って、【離れよう】
なんて事は考えられなかった
本当に自分のことばかり
保身が一番大事だと言わんばかりに、りおんを傷つけてきた
今までかけた言葉も全て本心だと、今言っても信じてはもらえないんだろう
そんなことはわかっている
だが、今の疑心暗鬼のりおんを作ったのは私だと思いたくなかった
私が散々騒いで、招いた事態だと言うのに
私にはもう望みなどない
新しくできたばかりの垢を消す
この行動でも、傷つく人がいると想像できるのに
お別れの返事も待たずに消した
つくづく、私は周りの人を傷つけてばかりだ
やはり私は人と関わらないほうがいい
周りの人に依存しないほうがいい
そう思ってしまった
ベッドから降り、一階へ行く
照明のついていない暗い台所から先の光る刃物を取り出した
溢れてくる涙は止まらない
私がなぜ泣くのか、よくわからない
でも何故か流れ落ちて、床を濡らす
手に持った包丁を首元に当てる
だが私は勇気もない
ぺたんと床に座り込み、包丁を落とす
乱れた髪は涙で汚れた顔を見せない
床に落ちているスマホが鳴る
〔もう過ぎたことだ、大丈夫〕
〔次はやめてね〕
なんでこんなにも君は優しいのか
だがこれがただの優しさではないことくらい分かる
諦めと、呆れ
こいつはもう駄目だと、そう言われているように感じた
だから全て思っていることは心の中に閉ざした
これ以上は失望させない
今は許してくれた君
私か同じ立場ならどうしていたかわからない
だからこそ、本音は言わない
もう迷惑などかけない
そう決めたのだった
次の日
私はなんと声をかければいいのかわからないまま、夕方になってしまった
〔辞めます〕
今日1日ずっと見ていたこのアプリに、新たな投稿があった
その内容は辞めると宣言したりおんだった
私のせいだと思った
昨日の一件があったから
そして、辞めると嘘をついて転生をすることくらい予想できた
私を迎えにはこないのだろう
何ヶ月か前にも似たようなことがあった
私と恋仲になる直前だ
そのときの恋仲と穏便に別れるために、辞めると嘘をついて、転生をしたことがあった
だからわかった
捨てられる
そう思ったとき、涙は流れてはいたが悲しくはなかった
ただあるのは、安堵の気持ち
これ以上傷つけなくて済むという、安心だけだった
もちろん、寂しいという一方的な気持ちはあった
でもそれを伝えたところでどうにもならない
だから私は何も言わなかった
この気持ちを封印した
言ってはいけないと決めつけて
【りおん、やめるの…?】
ただ最後に言葉を交わしたいと思ったから
分かりきっている答えに正解だと言ってほしいように、聞く
〔うん、やめるよ〕
〔嘘だけど〕(削除)
消されたメッセージが見える
【え…?】
その時、私はネットの友達と電話をしていた
今までずっと相談に乗ってくれていた友達だった
だからなのか、それをりおんから聞いたとき、泣き出してしまった
電話とはいえ、人前なのに
気持ちが抑えられなかった
ここでようやく、悲しい、寂しいという気持ちがこみ上げてきた
〔転生するから、迎え行くね〕(削除)
【うん、】
削除された文字は他の人には見えない
だから私達は演技をして、通知画面の中で裏の会話をした
「っ…」
声を殺して泣く
通話越しの友達に気づかれないように
貴方には言わない
容易に捨てられることが想像できたこと
これはずっと私の胸の内に秘めている言葉
「ずっと一緒にいて…」
次回➸#12
コメント
8件
よく私がわかったね!?迎えにきてくれてありがとう!! 相変わらず、日本語が上手だね〜!!やっぱせいらちゃんの物語はいい!! 表現の仕方が好き
ああ、この話…読んでて胸がぎゅっとなりました。りおんから「楽しかった?」って言われたときの、主人公の心の重さがひしひしと伝わってきて。 新しくできた垢で仕掛けたいたずらが、こんなに大きな罪になっていく。自分を責める気持ちと、それでも離れたくない気持ちと、どっちも痛いほどわかるものだから読むのが辛かったです。でも、嘘をつき続けるより正直に言ってしまおうと思ったあの瞬間は、本当に勇気がいったんだろうな。 消えたメッセージを使った裏の会話が切なくて。最後の「ずっと一緒にいて…」が心に刺さりました。りおんの優しさの裏にある諦めも、主人公への罪悪感も、全部が丁寧に描かれていて…次の話がすごく気になります。