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「おーい、吾郎?吾郎ってば!えーい、いでよ!凱旋門吾郎!」


「なんだとー?!」


「あ、やっと起きた」


「寝とらんわ!」


オフィスでぼんやりしていた吾郎は、透にちょっかいを出されて我に返った。


「どうかしたのか?吾郎」


大河が心配そうに声をかける。


「内海不動産の件が終わって、一段落なんじゃないのか?」


「ああ、それはそうなんだが…」


「ミュージアムの制作は俺達で出来るから、吾郎はしばらくのんびりしたらどうだ?旅行にでも行って、リフレッシュして来いよ」


「うーん、一人で旅行に行ってもなあ」


すると透がひょこっと吾郎の目の前に顔を覗かせた。


「じゃあさ、今週末マンションの内覧会に一緒に行かない?」


「え、内覧会?」


「そう。俺と亜由美の部屋、完成したから内覧会があるんだ。部屋を見たあと、同じく入居予定の人達との懇親パーティーもあるんだって。吾郎も行こうよ」


「いや、そんな。俺は部外者だし、亜由美ちゃんと二人で行ってこいよ」


「亜由美も吾郎に会いたがってたよ。と言うか、みんなに会いたがってる。亜由美、賑やかなのが好きだからさ。ま、俺もだけどね。あはは!」


陽気に笑う透に誘われるがまま、結局吾郎は週末の内覧会に同行することになった。



「やっほーい!吾郎さーん。元気?」


「ああ、元気。と言いたいところだけど、亜由美ちゃんと比べたらそうでもない」


「何言ってんの?あははー!」


週末、透と仲良くマンションに現れた亜由美は、相変わらず明るく元気だ。


(つくづく思うけど、透と亜由美ちゃん、ほんとにそっくりだな。いやー、ここまで似た者夫婦も珍しい)


繋いだ手をブンブン振りながら仲良く歩く二人を後ろから眺めて感心していると、エントランスの前に安藤の姿が見えた。


「深瀬様、いらっしゃいませ」


「こんにちはー。莉沙さん」


透と亜由美に笑顔でお辞儀したあと、安藤は驚いたように吾郎を見る。


「都筑さん!今日はまたどうして?」


「ああ、二人に誘われてね。お邪魔してもいいかな?」


「はい、もちろんです。では早速お部屋にご案内しますね」


どうやら透達の担当は安藤らしく、胸に抱えたバインダーを確認しながら、丁寧に説明して回る。


「深瀬様のお部屋があるこの棟は、リビングが南向きで公園に面しています。今日は実際の日当たりもご確認いただけますよ」


まずはロビーのコンシェルジュデスクやラウンジ、ライブラリーやテレワークスペースを案内してから、いよいよエレベーターで最上階へ行く。


つき当たりの部屋が透達の新居だった。


「どうぞお入りください」


門扉を開けてポーチを抜け、玄関のドアを開けた安藤が振り返る。


「わー、素敵!玄関広いねー!」


亜由美は1歩足を踏み入れると、感激して透を見上げる。


「うん。ウォークインシューズクローゼットもいいね!冬はここにコートとかも掛けられるんだ」


安藤は微笑んで頷く。


「はい。それに将来、お子様のベビーカーや三輪車もここに置いておけますよ」


「きゃー!楽しみね」


ふふっと笑う亜由美に、透も笑顔を返して見つめ合う。


(うわー、この二人って見つめ合っただけで赤ちゃん出来そうだな)


吾郎は真面目にそんなことを思いながら、お邪魔しまーすと部屋に上がった。


「ひゃー!なんて素敵なお部屋なの」


亜由美は透の手を引いてリビングへと進む。


「明るい!広い!それに、ほら!ここからウッドデッキに出られる!」


「おおー、景色いいね。それに開放感があって気持ちいい」


「うん!夜にはここでお酒も飲めるね」


「そうだね。楽しみだな」


二人の後ろで、吾郎も目を見開く。


「これは想像以上にすごいな。デジタルコンテンツで再現したつもりだったけど、本物は更に素晴らしいね」


「ありがとうございます。私も自信を持ってオススメ出来るお部屋です。と言うより、羨ましくて仕方ないです」


「あはは!確かにね」


安藤の言葉に頷きつつ、リビング以外の部屋も見せてもらう。


透と亜由美のこだわりのシアタールームは、防音仕様になっており、大迫力のスピーカーと大画面のテレビを置こう!と二人は盛り上がっていた。


更に螺旋階段でメゾネットの上の階へも行ってみる。


「このお部屋は最初は広く使って、お子様が大きくなったら、可動式スライドドアで分割出来ますよ」


安藤の説明に、透と亜由美はまた笑顔で見つめ合う。


(こりゃ子だくさんになるな、きっと)


部屋は何分割まで出来るんだろう?と、吾郎は余計な心配までしていた。


共用施設や公園などもゆっくりと見て回り、最後にスカイラウンジに上がった。


ガラス張りの広い部屋には所狭しと料理やドリンクが並べられ、同じように内覧を終えた入居予定者が集まっていた。


皆、それぞれに、初めましてと挨拶を交わしている。


透と亜由美も、早速同じ棟に住む家族と仲良く会話を始めた。


吾郎は隣で、ふう、とひと息つく安藤に、お疲れ様と声をかける。


「ありがとうございます。あー、緊張しちゃった。でも都筑さんがいてくださって、なんだか安心しました」


「そう?ごめんね、部外者なのにお邪魔しちゃって」


「いえいえ。都筑さんもお料理召し上がってくださいね」


「いや、そこまで図々しくなれないよ。あ、木谷さんと原口さんもいらっしゃるね。挨拶してから帰るよ」


吾郎が二人に声をかけると、「都筑さん!」と破顔して握手を求められる。


「いやー、またお会い出来て良かった。都筑さんの同僚の方は、内覧会どうでしたか?お気に召していただけたでしょうか?」


「ええ。夫婦揃って感激していました。私もこれから事あるごとに、新居にお邪魔しようと思います」


「ははは!都筑さんにもここに住んでいただきたかったなあ」


「私も今日、つくづく後悔しました。こんなに素晴らしい物件だったとは。独り身ですけど、思い切って買っておけば良かったです」


「あはは!」


和やかに原口達と歓談してから、吾郎は透と亜由美に声をかける。


「じゃあ、俺はここで。今日はお招きありがとう。楽しかったよ」


「吾郎さん、もう帰っちゃうのー?」


「うん。あとはお二人でごゆっくり」


じゃ、と手を挙げて吾郎は部屋をあとにした。


「都筑さん!」


呼ばれて振り返ると、安藤がタタッと駆け寄って来た。


「あの、今日はありがとうございました。それから先日も。大変お世話になりました」


頭を下げる安藤に、吾郎はにこやかに口を開く。


「どういたしまして。またいつでも遊びにおいで。トオルも君に会えると喜ぶし」


「本当に?!いいんですか?」


安藤は途端に目を輝かせる。


「ああ、もちろん。あ、それなら今度、どこかのドッグランに一緒に行く?」


「行きます!行かせてください!」


「あはは!前のめりだね。じゃあ、お互いの休みが合う日にでも」


「はい!よろしくお願いいたします!」


勢いよくお辞儀をする安藤に、吾郎はプライベートの名刺を渡して別れた。

極上の彼女と最愛の彼 Vol.3

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