続く二回戦。オールラウンダーと言われていたミクラ&カカルナVS爆破の花を咲かすコウタ&ボマーの試合。どちらが勝ったかで僕の相手が決まるわけだが、正直結果は見えてる。次の僕の相手はオールラウンダーのカカルナだろう。爆発物はさっきの僕らのように煙幕を利用されておしまいだ。善戦できてもせいぜいHPの三分の一を削れればいいとこだろう。
対策があるかと言われると実のところ何も思い浮かばない。なぜなら同じ実力のオールラウンダーは意外と付け入るスキがない。実力が離れているならともかく、装備は同じランク帯か一部分だけ高ランクのものだろう。明確に差をつける場所がなく、あるのはどれほど実践を重ねたかになる。が、カナは例の件に巻き込まれてるし恵まれたことに高ランクの友人と模擬戦をやってもらったりと、経験は積んでるが残念ながら『同格』の相手とは経験がほとんどない。つまり、思考が高ランクに寄ってしまい、深読みをする可能性がある。そうなると、相手のペースに持っていかれてしまうものだ。ここだけ気を付けたいが、本人はそれに気が付いてないうえに、教えたところで天狗になってるから聞く耳は持たないだろう。あとはまぁ、こいつに任せるしかない。どうにかやってくれることを祈ろう。
会場は大盛り上がりで、二回戦は予想通りオールラウンダーのカカルナが勝利を収めた。その後の第三試合は遊撃員ことアルルVS狙撃手のスナイプの試合。攻撃方法が似ている二組だが、だからこそ互いの思考が読めてそこにいかに漬け込むかが戦況を大きく変えるカギだろう。僕の予想はスナイプの勝ちで終わるはずだ。
理由はスナイパーというだけあり事前にマップは頭に入ってるはず、そのうえでいくつもの狙撃ポイントを用意しておりそこに相手が辿り着くシミュレーションをしていると予想される。そもそも近づけさせないような策が講じられてるはずだから勝率は高いだろう。対する、遊撃員は、マップに恵まれていない。
その二つ名みたいのから予想するは、自然環境を模したマップでのいろんな策による制圧。……が、今回は街中という正反対のマップだ。これが建物内ならまだ何とかなったが完全な屋外で自然はない都市街。戦法を考えるならやはり、煙幕が一強になる。煙に巻けばこのランク帯は何とかなる。もちろん上に行けばそれは通用しない。相手のレベルも上がって装備の質もよくなっている。しかし、このランクなら煙に乗じて奇襲すれば勝つことはできるだろう。あとは、それを行う際どれだけ別のなにかに気を引けるかが問題となってくる。まぁ、失礼な話だがこの二人には未来はない。なぜなら、最後の試合はミカゲさんが送りこんだ刺客がいるのだ。彼女の実力は今は分からないが、少なくともこの大会に参加している人間よりは質がいいはずだ。なのでこの試合は特に深く考えずに見ることにしよう。
三回戦の結果は、遊撃員のアルルが勝利を収めた。特殊部隊かのような装備に身を包んだ彼女は自分の装備すべてを囮にして、奇襲に成功しその一撃で試合が決まったのだ。思いのほか参加者のポテンシャルは高いようだが、それでも彼女……。ハナカという戦姫に勝てるのか怪しいものだ。なんせ、ただ立っていただけであの気迫。同じ新人にしては圧が違った。ミカゲが仕掛けに来るだけのことはある。
残る試合は彼女の試合のみ。会場も熱が入ってきている。試合時間こそ短いが、その一瞬が熱いバトルで見るものを魅了していく……。午前の部は恐らくこのスズカさんの試合で区切りになるんだろう。彼女の試合、僕も楽しみ半分怖さも半分といったところだ。
「皆様!本日午前の部の最後の試合です!楽しい時間はあっという間ですね!その一瞬を大事に、最後の試合に移りましょう!!
まずは『人生も戦姫も一発逆転!?カズマ&ギャンブラン』のペアから意気込みを聞いていきましょう!」
「勝負は実力が発揮される場と言いますが、時の運というのも存在します。僕にとってその時に運も『実力』なんで、この勝負僕がいただきます!!」
「おぉ!なかなか良い意気込みですね!!運も実力のうちとはよく言いますが、彼はその運を常に味方につけるのでしょうかぁ!?
対するは『動きを読まれてる!?スズカ&ハナカ』のペアにお話を聞いていきましょう!」
「あっ……。えっと……。その……。が、頑張ります!!」
「いいですねぇ!この初々しさが、新人大会の良さでもあります!それでは、早速ですが準備はよろしいですか!?
戦姫大戦レディー?……ファイトぉぉぉぉォォォォォォォ!!!」
司会の合図とともに試合が開始される。相手の戦姫ギャンブランの装備はシンプルな装備で構成されており、戦法もクソもないまっすぐに直進して、相手を切り裂くという脳筋戦法。それに対して、スズカの戦姫ハナカは機械の翼を模したバックパックにビットが格納されたスカートを装備したビーム兵器の遠距離型。
迫りくるギャンブランに物怖じせず、冷静に攻撃を避けていきサブウェポンであろうビームダガーで簡単に防がれた後大きく弾かれて蹴りによる攻撃で距離を置かれる。
「よ、よし!いいよハナカちゃん!!」
「……。安心して見てなさいよスズカ。私がこんなのにやられるわけないでしょ?」
「そ、そうかもしれないけど……。」
「あんたは研究所にいたときみたく、冷静に相手の動きを見てあたしをラジコンしなさいな。」
「わ、わかった!!」
ダガーを一度亜空間にしまい、ハナカは右手を空に掲げる。すると、腰部のビット格納庫からいくつものビットが現れ彼女の周りを守るように飛び回る。
「ビット兵器なんて怖くないわよ!そんなのこうすればいいんだから!!」
相手も亜空間から大型のガトリングガンを取り出し、それを掃射する。
「避けられないなら、ビット自体を壊せばいい!もちろん丁寧に一個一個壊せないからこうやって乱射するんだけどね!下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるのよ!!」
「だってさスズカ?」
「……。うん。いつもみたいに動いてねハナカちゃん。ビットは二機を残して一度格納。あなたはその場に立ってるだけで大丈夫。残した二機で右のビルを崩して…。壊すのは大体地上から二メートル五十二センチくらい。」
「最後のその指示はちと厳しいかも?」
「大丈夫。誤差十センチなら修正は効くから。」
濃い弾幕の中ハナカは彼女の指示通りに動く、相手の視点ではもうすでに煙の中に彼女は隠れてしまい確認はできない。だが、相手はマップ端で逃げ場はなく、おとなしくその弾幕を浴びるしかないそんな状況下なのだ。だからこそ、ギャンブランは確信している。この勝負は自分がもらったと。だが、結果は残酷なものだった。
「へっへーん♪ここまで撃ち込めばさすがに倒れるでしょ?」
「……。そうだな。相手が一回戦のカナという戦姫かあたしでなければやられてるな。」
「な、なにぃぃ!?私の弾幕が効いてない!?」
「……うん。ちゃんと指示通りの二メートル五十二センチを撃ててる。」
「そ、そんな…。しかもその二機のビットだけで……。」
「弾は大事に使いな?特にガトリング系はリキャストが長いんだからね。」
瓦礫を退かしゆっくりと近づきながら再度大量のビットを展開する。
「スズカ?いつものゲームしてもいい?」
「……。うん。でも、私も疲れるから、ほどほどにお願い。」
「もちろん。」
「な、何をするつもりだ!!?」
「安心して、ただのゲームをするの。」
「はぁ?」
「今からあなたにビットを数個飛ばします。その攻撃をどんどん避けてくれる?時間経過ごとに数を増やしていくから。まずは難易度イージーの三機から。」
周囲を飛ぶビットのうち三機がギャンブランに飛んでいき攻撃を開始する。突如始まったゲームだが、すぐに対応して難なく避けていく。
「三機程度なら何とか……。」
「それじゃあ次は四機だね。」
そういいどんどん数が増えていき、六機目の時点でもう相手はボロボロになっていた。
「くっ……。」
「もうだめになりそうね。それじゃあ最後は特別にハードモードを体験して終わりかな。ビットは三機に戻すよ。」
「はぁ……。はぁ……。さ、三機ならこの体でも……。」
「それじゃあ……。行くよ?」
ビットを飛ばし一門ずつ発射していく。
(このレベルがハードなら反撃チャンスも……。)
「……。ハナカちゃん。三番ビット軸をずらして一番ビットを再度発射。そのあとに軸ずらした三番を発射。」
「はいはーい。」
(よし!この攻撃を避けて……。)
避けた先にビットが構えられており、認識するよりも先に撃ち抜かれる。
「きゃあぁぁぁ!?」
「残念喰らっちゃったね。それじゃあそのままお休み。」
よろけた瞬間控えていたほかのビットすべてが彼女を取り囲み掃射。バトルログには『Wiener スズカ&ハナカ』の文字が浮かんでいた。
「……。っはぁ…はぁ……。か、勝てたよハナカちゃん!」
「あたりまえだってスズカ。あたしは強いしあんたも強いからね。止めれるならあのカナって戦姫くらい。まぁ、可能性は薄いけど、他と比べればね?」
「う、うん。でも、やっぱり勝てたのはうれしい!」
「いつも研究所ではテストで試作武器使ってるでしょ?それと同じよ?あっちでも基本勝ってるんだから。」
「で、でも……。こういう場所では初めて……」
「ハイハイ。そうね。初勝利うれしいね。」
彼女の試合は圧巻だった。ハナカという戦姫はあの試合ほとんど動いていなかった。ビット兵器もこんなに巧みに操ってそれでいて戦姫大戦は初心者だと?そんなバカげた話を鵜呑みにした僕はもっと大バカ者だ。それに、あのスズカという女性。なんとなく途中から雰囲気が変わっていた。意気込みを言ったときは弱々しかったのに、試合が始まるな否やすぐにその弱々しさが払拭されて、戦姫プレイヤー……いや、淡々と仕事をこなす機械のようなそんな風に見えた。彼女はいったい何者なんだ?開発部門とか話していたが、ミカゲさんは本当に人を僕にあててるのか?彼女は機械と変わらない仕事のこなしだったぞ?
(なぁ、リナ?)
思考する彼に突然カナは問いかける。
(どうした?)
(あの、ハナカという戦姫なんだけどさ。)
(あいつがどうかしたか?)
(最後の三機のビットを操るとき、明らかに先読みして攻撃してる瞬間があったんだ。)
(なに!?)
(あの変な前口上はリアルかもしれない。)
(動きを読まれてる、か。あながち間違いじゃないのかもな。)
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