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スズカの試合が終わり午前休憩に入る。午後の一発目からは僕の試合で、相手はオールラウンダーのカカルナという戦姫だが脅威かどうか聞かれるとそうでもないというのが現状だ。もちろんこれは戦姫としての性能の話。というのも、オールラウンダーは言い換えれば器用貧乏であるため、何かに特化してるタイプの戦姫とは相性はよくないだろう。それこそカナの性格も得意としてる戦闘スタイルも近距離特化のもので予想では苦手なはず……。もちろんその戦姫がよほど経験を積んでいなければの話ではあるのだがまぁ、ルーキーの大会に出てる時点でそこまで実力はついてないだろう。が、それ以上に不安なのはカナの方だ。本人は無意識かもしれないが、この短い時間で死線を潜ってきたから少し天狗になってる節がある。自信があるのは良いことだが、それが裏目に出るケースも無いとは言えない。まぁ、それが杞憂であることを願いつつ一度控室を後にして会場に顔を出しに行く。もちろん念のため運営の方に話して会場にでてもいいかの確認は必要だ。
「あのー、すいません。」
「ん?どうしたんだ?」
「午前休憩なんですけど、表に行ってお昼食べに行くとかって大丈夫なんですか?」
「もちろん大丈夫だよ。ただ、会場からは出ないでね?あくまで、今回使わせてもらってる敷地内での外出は認めてるよ」
「ありがとうございます!それじゃあ少し席外しますね」
「うん。次の試合期待しているよ『音速のカナ』とそのパートナーリナ君。」
「は、ははっ……。」
「大層な名前を付けられたもんね?」
「音速だとさ、よかったなカナ。」
控室を後にして屋台などが出ている会場を歩きながらカナと軽い会話を始める。
「ぶん殴るけど大丈夫そ?」
「くたばるのでご遠慮ください。」
「それで?外出て何すんの?」
「何って、普通に飯食うんだけど?」
「我慢できないの?」
「腹が減っては何とやらって言うじゃん?」
「戦うの私ですが?」
「気持ちは一緒に戦ってるから。」
「気持ちはいらないんで、資金集めたり情報集めたりして強化してください。」
「……。はい、心がけます。」
「選手が外を出歩くなんて不用心過ぎないか?」
外に出るや否や声をかけたのはこの会場まで一緒についてきてくれたアキトだった。
「よっす。これから飯なんだけどどう?」
「……なら、僕も同行してもいいかな?」
そういいながら声をかけてきたのはミライソフトのミカゲという人物だ。彼にはある意味助けられてはいるが、それでも例の事件の会社の社員であるし、僕に対して何か変な期待のようなものを抱いてるのが見て取れるため、少し気持ち悪いとも思っていたりする。
「げっ……。お前まだいたのかよ。」
というように、露骨に嫌な態度が出るくらいには警戒してるし何よりその得体の知れなさが腹の奥から恐怖を湧かせてくる。
「嫌だなぁ?邪険にしないでよ、僕の部下の晴れ舞台なんだ。そりゃ僕がいてもいいだろ?」
「お前の企みがなんなのか不明だからいてほしくないんだよ。」
「でも、僕がいないと天使創造計画についてはずっと分からず仕舞い。それでもいいの?」
「クソ……。見た目に沿わない嫌な奴だ。」
「見た目通りじゃない?痩せた優男なんて裏がある人物確定でしょ?」
「自分で言うんだね……。」
「あるあるだろ?この時代に生きてるんだ漫画アニメを見てるならそんな展開腐るほど見てきてるはずだ。」
「糸目の人間は大体裏切る、とかか?」
「そうそうそんな風に悪者とかの風貌はそんなものじゃない?だから僕の見た目や性格が怪しさ満点なのも察してよ。」
「ふん……。やはり好かないな。」
なんだかんだ言いながらリナはミカゲを含めた三人で会場に設営された飲食店で昼食を取り始める。
「なぁミカゲ……。」
「ん?どうかしたのかなリナ君?」
「答えてくれないだろうが一応聞きたいことがある。」
「まぁ、内容次第かな。」
「あんたの部下であるスズカという人物についてなんだが……。」
「彼女がどうかしたのか?あっ!もしかして惚れたから彼氏いるかの確認かな?」
「…はぁ、僕にはもったいない人だ……。あんたが彼氏さんにでもなってあげな。」
「彼女いい子だから君と相性良いと思うんだけどなぁ?」
「あっそ……。で、はぐらかそうとしてるから単刀直入に聞くけど彼女『先が視える』人種か?」
「……。というと?」
今の質問で急に彼の雰囲気が変わった。直前まで僕を馬鹿にしていたまるで子供のような大人が、突然仕事のスイッチが入ったようでどことなく影があるような圧があるような……。先ほどまで感じられなかった威圧感を放つ。
「さっきの試合を見ていてカナが疑問に感じた瞬間があったんだ。それがビットの動きで、最後の動きだけ明らかに先読みをしているような動きだったと話していてな。それの真実が僕は知りたくてね。」
「…なるほど。彼女が先読みをしていた、と。それが嘘かまことか知りたいか……。では、そんな君に僕から答えを提示しよう。その力に関しては僕も未知数ということだ。」
「はぁ?」
「言っただろう?彼女は戦姫大戦は初心者で僕の元部下。今は開発部門に配属されているから僕の管轄外。それ故、彼女が一体どんな戦闘スタイルなのか、彼女自身の力がなんなのか。それは僕も分かんないだよね。」
「情報を渡さないための嘘か?」
「アキト……。残念だけどこの雰囲気とあいつの目は嘘は言ってない。どうやらマジで知らないみたいだ。」
「確かに僕は彼女の中に光るものがあると思って僕の下に就けたが、上層部がそれを気に入らなかったみたいで彼女をクビにまでしようとしたんだよ。で、それを防ぐために開発部門にいる僕のお友達の力を借りてあくまで左遷したっていう形にして彼女を保護してる。それくらい僕は彼女を買っている。でも、彼女の持つ『光る何か』までは僕も確認できていない。それを確かめるべく彼女にはこうして表舞台に出てきてもらっている。会社での表向きの理由は君の情報収集。本当の目的は彼女の実力を確かめたかった。これが真実だよ。どう?満足したかな?」
「……。分かった。その言葉を今は信じる。けど、実際に戦ったときまた違和感を感じたらその時は再度問いただす。いいな?」
「あぁ、結構だよ。君の方から僕を求めてくれるなんて良い機会じゃないか!」
「……ミライソフトの連中はみんな変わってるのか?」
「どうだろうね?少なくとも僕の周りはみんな癖ある人物だらけだね。」
腹の探り合いのような昼食を取り終えリナとカナは待機室の方にと帰っていく。それを二人は見送り、リナが見えなくなるのを確認したアキトはミカゲに質問する。
「あんたの部下のスズカってやつ、彼女は一体どんな人物なんだ?」
「おや?君も彼女が気になるのかい?スズカちゃんは罪な女だねぇ」
「俺も別にそういう意図で言ってるわけじゃない。ただ、今の話を聞いてもしそれが本当だったら彼女の戦闘スタイルはどうなるのか疑問に感じただけだ。」
「……そうだねぇ。前も話した通り彼女はいわゆる情報キャラだ。情報を元にあれこれする人物でね、恐らく戦闘スタイルもそれに近しい立ち回りだろう。なんせ本職は開発部門だ。武器の特性から相手の戦姫の情報なんて筒抜けになるんじゃないかな?まぁ、これは僕がそうであってほしいという願望でもあるんだけどね。」
「敵であるあんたに聞く話ではないがリナは勝てると思うか?」
「あぁ、勝てるだろうね。でも、完勝とはいかないのも事実だ。なんせ彼女は『先が視える』らしいからね」