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◇不信感
『あの人とは余り深入りしないほうがいいかもね』と、夫も言ってるくらいだからもし、
直接淳子《あつこ》さん本人から誘われても行かないよね? 匠ちゃん。
それにしても……と、圭子は思った。
これまでにも淳子から夫の匠平のことを羨ましがるような発言はあったけれど、今日みたいに
夫の良いところを細かく指摘されたことはなく、普通に社交辞令として聞き流してきたのだが、
今更に少し嫌な気持ちになった。
それでも、突然前触れもなく夫に対して先日の礼を放ったりというような淳子の
言動がなければ、そこまでの嫌悪感は生まれなかった《持たなかった》かもしれない。
そんなこんなで、モヤっと形にならない不安が圭子を襲うのだった。
彼女がご主人の不倫で離婚していること、住宅という高額な買い物をして毎月キツい
住宅ローンを抱えていること、おそらく額にして3800万円~4000万円近くの
ローンがあるのではないだろうか……世の夫たちが払うのでさえ大変な額のローンを
抱えていて、今度は返済のため自宅でマッサージサロンのようなものを始めていること、
収入が激減していると話していたことなどが、胸に刺さり引っ掛かりを覚えてしまうのだ。
淳子の話は、いくら考えても身の丈に合ってないように思える。
ふと圭子は自分が今の淳子の状況になったらどうするだろうと考えてみた。
分譲マンションを賃貸に出して自分は家賃の安いハイツかアパートに移るかな。
それなら夜職しているのだから余裕でなんとかなるんじゃないかしら。
彼女の話からざっと算出すると、実質手元に残るのが、生活費や必要経費など
差っ引いても55万円前後になるみたいで、目減りしたとして今これが40万円と
考えても、賃貸料-家賃=13万~15万収益として残るのだから、手元に残るのが
53万~55万でしょ。余裕でローン返せるんじゃないのかな。
残ったお金は失業したときのために貯金するとかして。
自分は未経験者だし多くの事例も知らず、声を大にしては言えないが、例えば
お金が溜まった時にパッとまとまった額を一気に返済してしまうという方法も
あるというのを聞いたことがある。
また、人によっては利息が低ければローンとしてできるだけ長く借りて長期戦で
払った方がいいと考える人もいるようだ。
まぁ、私たちの住んでる物件は、駅近で人気があり、このご時世でも販売価格が
高騰しているので、最悪売ってしまえば生き残りの方法はあるのかもしれない。
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