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12 ◇ヤバい
予想外の施術で、これには参った。
先程ゆるゆると気持ちよく上っていた階段とは次元が違う。
ヤバいのだ。非常にヤバい。
しかも、彼女は長い時間そこから指をどかそうとせず、ギリギリのライン上である股間を
攻めてくるものだからたまったものではない。
とうとう俺のモノが反応してしまう羽目になる。
「小泉さん、もうこれで充分ですから……」
と、俺は施術をやめるよう懇願した……というのに。
「大丈夫ですよ、恥ずかしがらなくても。
皆さん、鼠径部周りを施術すると同じような現象になりますから。
平気、平気」
『いや、あなたが平気でもアタシは困るんですぅ~』
と、心の中で唱えたものの、彼女を突き飛ばしてやめさせるわけにもいかず、途方に暮れつつ
悶えていると、いつの間にか彼女が俺の腹の上に乗っかかり、自分の 意志とは関係ないところで
身体の敏感な一部を篭略されてしまった。
こうなってしまっては、理性を取り戻すことも己の肉体の一部を奪還することも、もはや
不可能な領域へと突入した。
電球の交換を頼まれ、お礼にと夕食を呼ばれ、マッサージをしてあげると言われ、その挙句が
今こんなことに……どうして?
俺は大きな快感の渦に飲み込まれてしまい、気怠い身体を持て余したまま
混乱と、自問自答の嵐の中にいた。
「どう? 気持ちよかったでしょ。
お気に召したようでしたら、またマッサージサービスしますよ」
俺の身体から降りた女がそんなことを言う。
『何故だ、何故次があるようなことを言うのだ』
女の今までの振る舞いも、今の言葉も、全く自分には分からん、分かりたくもない。
同意のない性行為に、吐き気がした。
『あっ―――』
彼女が確信犯であることは明々だ。
見ていないからだ。
彼女が事に及んだ時、下着を脱いだところを俺は見ていない。
彼女のあの時の挙動は実に素早かった。
だが、何のためにこんなことを?
しかも、後輩の夫である俺に対して。
身体の芯が収まったところで、俺は一刻も早くこの場から去ろうと素早く
身支度を済ませた。
そして、俺は彼女の顔も見ずに「じゃ、失敬」とひと言いい置いて、
素早く彼女の家を辞した。
13 ◇告白
昼食のあと、いつものように妻が娘を寝かしつけたところを見計らい、
意を決して彼女に声を掛けた。
「圭子、未紗寝た?」
「うん、やっと寝てくれたぁ~」
そう言って圭子が和室の襖をそっと閉めた。
「コーヒーでも淹れましょうか?」
「うん、いいね。
あのさ、コーヒーができたらちょっと聞いてもらいたい話があるんだ」
「いいよ~、OK」
そして圭子が淹れてくれたコーヒーを前に俺は心を決めた。
「昨日さ、下の共用ラウンジ付近で淳子さんに待ち伏せされたんだ」
「えっ? それって会社からの帰りってことよね。
確か昨日って22時頃帰って来たよね。
えーっ、そんな時間にあの人匠ちゃんのこと待ってったっていうの?
電球の事と言い、待ち伏せの事と言い、学生時代持ってたイメージから程遠い言動に
なっていて、何ていうかこんなこと言っちゃあいけないんだけど気持ち悪いね」
「圭子、俺ね、変に圭子に彼女のことで誤解されたくなくてできるならこの話は
自分の胸の中にだけしまっておこうと思ってたけど……」
「何かあったの?」
「あのさ、今から話す俺の話を途中で聞くのを止めたり怒ったりしないで
とにかく最後まで聞くっていうのを約束してほしい。
順序を追って話をしていくと、絶対誤解されそうな話なんだ」
「ということは、その話の内容って、私が聞くと怒ったりするような
内容になるんだ」
「そうじゃないって言いたいけど、そうだね不愉快な話だよ、俺にとってもね。
どうだろう、嫌な気持ちになっても俺のことを信じて最後まで話を聞いてくれるかな?」
「うん、分かった。
泣いたり怒ったりしたとしても、話の途中で席を立ったりしないで最後まで
話を聞くって約束する。
それで、昨夜の待ち伏せで淳子さんから何て言われたの?」
14 ◇押しの強さに負けた
「あの日、君が実家に帰っていなかった日、彼女から電球の交換を頼まれて
家へ行ったことは話したと思うけど、実はそのあと、食事していくように
勧められた。勿論断ったよ。
だけど、そのあとも強く勧められて結局彼女の押しの強さに根負けして
一緒に食事した。
それで食事が終わって帰ろうとしたら今度はお礼にマッサージをしてあげると言われて
……これも断ったんだが、この時も彼女の推しの強さに負けて施術を受けた」
「アロママッサージだよね? あの人が最近始めたってサイドビジネス」
「そうみたいだね」
「施術のときって、その……やっぱり洋服は脱ぐの?
脱いでしてもらうの?」
「一応みんなにはそうしてもらってるからって言われて、
全部脱いだ」
「全部って二人しかいない密室で全裸だなんて信じられない。
ね、私、淳子さんが自宅でアロママッサージサロンを開くって聞いて
少し調べたことがあるんだけど、そういうサロンではオイルで濡れても
いいように使い捨てパンツを準備してるらしいのね。
それも穿いてなかったってこと?」
「そう……だな。
そういう知識があの時あれば、今回の事故は防げたのかもしれないな。
今その話を聞いて思ったことだけど。
その時は、初めてのことで脱ぐのが当たり前みたいに言われて、下着を脱いで
バスタオルを巻き施術台に乗ったんだよな。
ご近所さんだし、君の知り合いでもあるし、最初は施術を受けることに
抵抗があった。
だけど、仕事帰りのあとだろ?
疲れててマッサージはすごく気持ち良く感じて……まぁ、リラックスして
無防備なところを突かれたというところかな。
しばらくして、彼女が駿足で俺の身体の上に乗ってきて、それで
そのまま襲われた。
こんなこと言うのも情けないけど、合意なきレイプだよ、彼女のしたことは。
彼女自身最初から下着を身に着けてなかった可能性が高いから、
確信犯だと思う。
この一度で終わっていたら、俺は今後二度と彼女とはかかわらず、
起きたことは君には話さずに墓場まで持っていくつもりだった」
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