テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
常盤木中学校の放課後、夕日が差し込む図書室は、霧谷遼太(神代)にとって唯一、人間のノイズが薄まる場所だった。しかし、今日の図書室には、隣の席の雨河慶介(如月)もなぜか付いてきていた。
「おい如月、なんでお前まで図書室に来るんだよ。ただでさえお前が横にいると耳鳴りがするのに」
「静かにしろ神代。昨日、西の連中から奪い返した『呪具』の解読方法が、東の古い文献に載っていないか調べに来ただけだ」
二人が小声で言い合っていると、カウンターの奥から「トントン」と、静かに机を叩く音が聞こえた。
「……お静かに。ここは本を読む場所です」
声の主は、図書委員の制服を着た少女――星野りの(ほしの りの)だった。サラサラとした長い黒髪に、感情の起伏が見えない端正な顔立ち。いつも物静かで、図書室のパソコンで何やら高度なプログラミングを弄っているか、熱心に分厚い本を読んでいるミステリアスな1年生だ。
(……あ、すまん)
遼太が心の中で謝りながら、何気なく彼女の精神へと『覚』の触手を伸ばした、その瞬間だった。
『……あのごつい本、背表紙の革の質感が綺麗だな。剥ぎ取るなら、どのナイフが一番綺麗に切れるかな……フフ』
「っ……!?」
遼太は思わず息を呑んだ。可愛い女の子の見た目からは想像もつかない、あまりに冷酷で、一切の躊躇がない「サイコパス」な思考の断片。驚く遼太をよそに、星野りのは表情一つ変えず、引き出しから取り出した高級なチョコレートを静かに口へ運んでいる。慶介もまた、何かに気づいたように目を細め、りのをじっと見つめた。りのは二人の視線に気づくと、ただ物静かに、けれど底冷えするような瞳で二人を見つめ返した。
――その夜。遼太と慶介は、いつものようにあの赤い電話ボックスから『*864』をダイヤルし、妖界へと足を踏み入れていた。昨夜の襲撃に備え、妖界の薄暗い大通りを、互いに背後を警戒しながら歩く。キィィィン……。その時、二人の脳内に、昼間とは違う種類の冷たい耳鳴りが走った。
「神代、後ろだ」
「あぁ、気づいてる。……誰かが後ろを『ついてきてる』」
足音はしない。だが、確実に、自分たちの背後の影がじわじわと近づいてくる圧倒的な気配。振り返っても誰もいない。けれど、一歩進むたびに、その距離は確実に縮まっている。
「……間違いない。この、執拗に獲物の後ろを狙う妖気……『送り狼(おくりお狼)』か!」
慶介が風の結界を構え、遼太が精神障壁を展開しようと一斉に振り返った、その瞬間。二人の背後の影がぐにゃりと広がり、そこから一人の少女が姿を現した。人間の制服ではなく、夜の闇に溶けるような美しい黒い和装。その頭上には、狼の鋭い耳と、妖艶に揺れる尾が見える。
「……驚きました。まさか、名門の『覚』が二人揃って、私の追跡に気づくなんて」
怪しげな紫色の月光に照らされたのは――昼間、図書室で物静かにチョコを食べていた、星野りのだった。
「お前……昼間の図書委員の……星野、りの!?」
遼太が叫ぶと、りのは感情の読めない瞳のまま、コチコチと手元の小さなノートパソコンのキーボードを叩いた。
「はい。妖界での名前も、星野りの、です。……西の『如月』が東の神代のテリトリーに逃げ込んだと聞いて、面白そうなので見にきました。……お二人とも、すごく綺麗な形をした『心』をしていますね」
りのは不敵な笑みを浮かべるわけでもなく、ただ淡々と、恐ろしいことを口にする。
「中身をじっくり観察して、バラバラに分解してみたくなります……フフ」
物静かながらも、確実に何かが破綻しているサイコパスな送り狼、星野りの。彼女の読めない思考と、執拗な追跡能力を前に、遼太と慶介は再び、新たな驚愕に包まれるのだった――。
「星野 りの」さんは、れいんこーと☔️さんが考えてくれました!
参加したい人は、第3話を読んでからコメントに書いてね!(もう締め切っている可能性もあるよ)
コメント
5件
ありがとうございます!!
うわああ第4話も激アツだった!!😭💕 図書室で静かにチョコ食べてると思った星野りのちゃんがまさかの妖で、しかもサイコパス思考とかギャップがエグすぎる……!「中身をじっくり観察してバラバラに分解」って台詞、あの無表情だからこそ逆に怖さ倍増だよ〜🥶 送り狼設定もかっこいいし、新キャラで一気に世界観広がった感じ!次の話が待ちきれない!🔥✨
新庄 駿
182
#文芸アクション
大正
4,228
#主人公最強
ウサギ様
396