最近また、先生が他の教師と仲良くしている
特に科学の杉浦とか言う若い男
廊下ですれ違った時、先生と並んで笑ってた。肩を叩いたりして、気安い感じで
冗談じゃない
俺はああいう”距離の近い男”が一番嫌いだ
先生が誰かと笑い合うのが許せない
それが、俺以外の”男”ならなおさら
放課後、理科室のドアを静かに開けた
杉浦の机の上、書類の束をひっくり返す
混じっていたレポートをいくつか破いて、ゴミ箱へと突っ込む
代わりに数枚のメモを忍ばせた
<生徒と不適切な関係を持っている>
<金銭の受け渡しがあった>
<女子生徒に手を出したという噂>
そんな内容を匿名の投書風に
筆跡は変えた。ネットで調べて学んだ通りに
数日後、職員室がざわついた
あいつが暫く休職になるって噂が流れた
笑った
ざまぁみろ
それからすぐ、先生の顔が少しだけ暗くなった
「どうしてあんなことになったんだろう」
って悩んでるみたいな顔
心配してるのか?
そんな無駄な暇があったら俺だけのことを考えればいいのに
ある日の放課後、先生に言った
「ねぇ先生。俺、杉浦の嫌いだったんだ」「消えてくれて…安心した」
先生はぴくりと瞼を動かした
「……それってどういう意味?」
「そのまんまの意味だよ?」
「先生が誰かと楽しそうにしてると、気が狂いそうになる」
「っ…翡翠くんそれはーー」
「俺が狂ってるって?知ってるよ」
「…でもね先生」
俺は先生の胸元に手を伸ばした
服の裾をゆっくり掴む
先生の体がびくりとした
「こんなに好きなのに、それでも俺の事突き放すの?」
「……」
先生は何も言わず、ただ俺の手をそっと外した
その手が優しかったのがーー一番残酷だった
だから余計に思った
もっと壊したい
先生の優しさなんて全部壊して、俺のものにしたい
その夜、俺はベッドで考えた
どうやったら先生は俺なしでは生きられない人間にできるのか
もう愛とか、そんな名前じゃ足りないんだ
先生は俺のもの
俺の一部
俺だけの
檻に閉じ込めたい