テラーノベル
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大学生活が始まる直前の春休み。涼架の住むワンルームアパートは、引っ越しの段ボールと、3人の熱気で溢れかえっていました。
「狭いねぇ、ごめんね! でも、ここが僕たちの作戦本部だよ!」
涼架が淹れてくれた紅茶を飲みながら、元貴と滉斗はこたつに入って、広げられた不動産の冊子やタブレットの画面を真剣に見つめていました。
当初の予定は、大学に近い場所で元貴と滉斗が二人暮らしを始めるための家探しでした。
「ここは? 日当たりもいいし、防音もしっかりしてそうだよ」
元貴が指差した物件に、滉斗が身を乗り出します。
「……いや、ここだとスーパーが遠い。お前に重い荷物持たせたくないし、俺が買い物に行くにしても時間がもったいない」
「じゃあ、こっちは? 駅から近いし……」
「……繁華街が近すぎる。夜、酔っ払いの声がうるさくてお前が眠れなくなったらどうするんだ」
滉斗の「元貴第一条件」が厳しすぎて、なかなか理想の部屋が見つかりません。横で見ていた涼架が、ふと思いついたように口を開きました。
「ねぇ……二人の条件を全部叶えようとすると、普通のマンションじゃ足りなくない? いっそ、僕も一緒に住んじゃうのはどうかな!」
冗談半分かと思いきや、涼架が取り出したのは、少し駅から離れた場所にある静かな住宅街の中の一軒家(借家)のチラシでした。
1階: 広いリビングと、涼架の部屋(保育士の準備で散らかしてもOK)。
2階: 元貴と滉斗のそれぞれの部屋(中身は結局つながりそう)。
環境: 庭付きで静か。遮音性も高く、キッチンも広い。
「僕、今のバイト代と奨学金で、もう少し広いところに引っ越そうと思ってたんだ。3人で家賃を出し合えば、この一軒家、借りられるよ! 僕が二人のご飯を作るし、二人がテスト期間の時は僕が家事全部やる! ……どう?」
元貴と滉斗は顔を見合わせました。
涼架の賑やかさは、元貴にとって最高の安心材料であり、滉斗にとっても(口には出しませんが)一番信頼できる「身内」です。
「……りょうちゃんと、また一緒に住めるの?」
「……悪くないな。涼架さんがいれば、防犯的にも、食生活的にも……元貴が寂しがらない」
数日後、3人は内見に向かいました。
真っさらな畳の匂いと、広いリビング。
「決まりだね! ここが僕たちの、新しい『204号室』の進化版だよ!」
涼架がはしゃぎながら階段を駆け上がり、元貴は窓から差し込む穏やかな光に目を細めます。滉斗はもう、元貴の部屋にどの厚手のカーテンを付けるか、メジャーを取り出して測り始めていました。
引っ越し当日。
「藍林檎学園」を卒業した3人の荷物が、大きな一軒家に運び込まれました。
夕食時。広いリビングのテーブルを囲み、涼架特製のカレーを食べる3人。
「来週からいよいよ大学だね」
「うん。ひろと、明日一緒に教科書買いに行こうね」
「ああ。……涼架さん、おかわり」
家族でもなく、ただの友達でもない。
「夫婦」と「お兄ちゃん」がひとつ屋根の下で暮らす、賑やかで温かい「3人暮らし」という新しい物語が、ここから静かに幕を開けました。
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コメント
2件
3人一緒……!ありがてぇことです……好き……(*´ω`*)
また3人一緒になれてよかった!