アリィ「ぐっ…頭がキーンと…!」
ジーク「一気に食べるからだろ。」
ブライア「お客さん達、おかわりいる?まだ色んなシロップあるよ。」
シリル「僕おかわりしていい?」
ブライア「もちろん。」
シリル「じゃあシロップは…」
ブライア「実はここだけの話…サボテンシロップもあるよお客さん。」
シリル「サボ…!?じゃあそれで!」
イリア「サボテンって食べられるのね…私もおかわりしていい?」
ブライア「もっちろん!お皿受け取りますねー。」
アリィ「頭がキーンってなるのは嫌だけど、かき氷って美味しいね!私初めて食べた!」
イリア「私もよ。美味しいわね。」
ジーク「しかしセドリックさんって…本当にただじゃ転ばない人だな。」
シリル「まさかあの氷を利用して、砂漠の唯一の観光都市にしようとするなんて…人は見かけによらないね。」
イリア達が悪魔を持ち帰り帰ってきた直後のこと。セドリックは地下室に悪魔を持って行った。そして、何やら大きな鋸を何個も持ってきて、2人に渡す。その後セドリックは皆に呼びかけて、大人数の町の民を連れ地下室に入っていき、悪魔の氷柱をセドリックの指示に従い、皆が削り切り分けて行った。
アリィ「私も氷削りしてみたかったなぁ。」
ジーク「寝てたんだから仕方ない。それにお前の体調で、あの寒さは流石に無理だ。」
アリィ「ちぇっ…。」
イリア「まあまあ、ジークに免じて許して。」
シリル「僕達、ジークも誘ったんだけどアリィだけ仲間はずれなのは可哀想だからって断ったんだ。」
アリィ「…まぁ…それなら…。」
イリア「それにあれかなりの重労働だったんだから…そんなに楽しいものじゃないわよ。」
シリル「いやあ寒かったね。」
町の住人「セドリック、これ持って行っていい?」
セドリック「構わん。」
ブライア「じゃんじゃん持っていかせてるけど…いいの?」
セドリック「あぁ。緊急用の食料保管庫にはもう十分ってほど、氷は足りてるからな。…元々この砂漠じゃ食べ物がすぐ腐っちまって備蓄という役割が果たせなくなっていた。丁度いい。それに、この町のヒトは皆商売根性逞しい。上手いようにいくさ。ゆくゆくは砂漠で唯一過ごしやすい場所として有名になって、雨の分の金銭的損失を巻き返さないと…。…氷そのものを売ってもいいな…。」
アリィ「セドリックさん、かなり忙しそうだね。」
イリア「今がいちばん大切な時期だもの。」
ジーク「…しかしもうあそこまで寒くはないが、ちょっと涼しくなったな。」
シリル「丁度いいんじゃない?」
ブライア「お客さん達、おかわり持ってきたよー!」
シリル「待ってました!ありがとう!」
ブライア「いいえー!ちょっと私セドリックと話してきますねー。」
ジーク「あ、そうだ。シリル、お前に聞きたいことがあったんだ。」
シリル「僕に?」
ジークの顔は険しくなり、1トーン声が低くなる。
ジーク「…お前身分証の偽造って出来るか?」
シリル「…出来ないことはないよ。なんに使うかにもよるけど…。」
イリア「私のコネも使えると思うわよ。どこに行こうとしてるの?」
アリィ「そういえば砂漠を超えたあとのことは皆話してなかったね。私達元々は時の国に行く予定だったんだ。ちょっと今状況が特殊だからどうすればいいかも相談したいな。」
シリル「…時の国ねぇ…。あそこはぁ…面倒そうだなぁ…。」
シリルは何やら眉間に皺を寄せている。
ジーク「…無理そうか?あそこの港まで行きたいんだけど…」
シリル「いや、無理じゃないよ。ただ…物凄い時間かかるかも…この砂漠じゃ追っ手も来ないだろうし、時間に余裕はありそうだけど…。」
医者「あの…お話中悪いんですが…なんでわざわざ港を使うんです?」
4人は他に誰も居ないと思っていたので、かなり驚く。
アリィ「い…いつから…!?」
医者「身分証偽造辺りからです。」
イリア「おっけー。これ口止め料ね。」
医者の言葉を聞いた直後、イリアは即座に医者の手にかなり重たい袋を渡す。
医者「わぁこんなの持ってたら殺されそう。要りません〜。私も昔は結構ヤンチャしましたし、君達を陥れるようなことしたらセドリックさんに怒られちゃうので、引き渡したりしませんよ〜。」
ジーク「なんでセドリックさんが…?」
医者「そりゃそうでしょう。だって君達が来なければ、未だにこの町には雨が降っていたんですから〜。恩人に酷い扱いは出来ません〜。」
そう言うと、医者は自分の袖を捲る。袖から見えた腕はそれは酷く赤くなっていた。
医者「なんにも被害がなかった訳じゃないですからね〜。」
シリル「それよりもさっきの話…」
医者「あぁ。さっきの話ですね〜。実は時の国が分断した時に港は恒陽の国の所属になっちゃって永夜の国が大変苦労したんですねぇ〜。それで永夜の国が最近になって橋を完成させたらしいですよ〜。別に水の向こうもこちらの大陸扱いですから、身分証を求められることはありませんよ〜。」
イリア「凄い詳しいけど…一体昔は何を…」
医者「悪い方のトレジャーハンターです〜。ガイド違反で、あちこち追いかけ回されましたね〜。まっ、逃げ切りましたけど〜。」
アリィ「すっご……。」
ジーク「…なぁでもそれ話してよかったのか?」
医者「あっもう時効なんで大丈夫なんです〜。それに私昔セドリックさんを助けたことで後ろ盾がありますからね〜。」
シリル「今まで会った中で1番ダメな人でしょこの人。」
医者「えへっ。」
ジーク「それじゃあ目的地は決まったな。」
アリィ「うん。永夜の国に行こう。2人は…」
イリア「私達はこれから南の方にある、マムロウ国に行く予定なの。砂漠の殆どは乗り越えたし…途中までは一緒だけど道の分かれ道でお別れかしらね。…道あるわよね?」
シリル「砂漠地域はこの町を抜けたら後数日だから砂がないはず…道はあると思うよ。」
アリィ「そっか。じゃあそこまでだね。色々助かったよ、ありがとう。」
イリア「こちらこそ…貴方が庇ってくれていなかったら、私は死んでたわけだし…」
アリィ「でもイリアの望みの邪魔しちゃったかな。」
イリア「そんなこと!私は…シリルを無事に家族に送り届けるまでは死んじゃダメだもの。」
アリィ「そっか。」
シリル「…僕らは全部の国を周って行ってるから、また会えるかもね。」
ジーク「楽しみにしてるよ。明日には出発したい。」
イリア「私もそれでいいと思うわ。」
アリィ「じゃあ皆挨拶するなりそれまで自由に過ごそうか。私も大分回復したしね。」
シリル「うん。」
医者「あまりまだ激しくは動かないでくださいねぇ〜。」
アリィ「分かってる。昨日皆が氷を削ってくれたから、今日は色々ないか見てみようかな。美味しいものがありそうな予感…。」
ジーク「俺も…いや、やっぱりいいや。楽しんできな。」
アリィ「わーい!」
イリア「とても怪我人とは思えない元気さね。」
ジーク「それがいいとこだよ。」
シリル「僕も、ちょっと周ってくる。」
イリア「何しに行くの?」
シリル「武器の手入れ。最悪設備さえあれば自分でも出来ないことはないけど…とりあえず探してみる。万が一切れ味が悪いと困っちゃうからね。」
イリア「行ってらっしゃい。」
シリル「うん。」
イリア「ふぅ…。」
ジーク「イリア、食べ物で何か好きな物はあるか?」
イリア「急に?ステーキだけど…もしかして、作ってくれるの?」
ジーク「ああ。」
イリア「本当に急にどうしたの?」
ジーク「気が向いただけだ。…よく言ったな。」
イリア「…私達そんな気まずそうに見えた…?」
ジーク「いいや、むしろいつも通りすぎるくらいだ。でもお前は嘘をつかないって分かったからな。」
イリア「…そう。」
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