テラーノベル
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休日の午後、涼ちゃんの家には、ゆったりとした時間が流れていた。
リビングのソファには、元貴、涼ちゃん、滉斗の三人が横並びで座っている。
テーブルの上にはポップコーンとジュースが並び、クッションを抱えた涼ちゃんがリモコンを手にしていた。
「今日はホラー映画にしようって言ったの、元貴だよ?」
涼ちゃんが少し不安そうに笑う。
「だって、涼ちゃんが怖がるの見てみたいんだもん」
元貴はいたずらっぽく笑いながら、涼ちゃんの肩にぴったりと寄り添う。
「元貴、ほんとに子どもみたいだなあ」
涼ちゃんは苦笑いしつつも、元貴の距離感にはもう慣れてしまっている。
滉斗もすぐ隣に座り、涼ちゃんの反対側の肩にそっと寄り添う。
「怖かったら、無理しなくていいからな、涼ちゃん」
滉斗は優しく声をかける。
「ありがとう、滉斗。でも、せっかくだから最後まで観るよ」
映画が始まると、部屋の明かりが落ちて、スクリーンの光だけが三人を照らす。
怖いシーンが流れるたびに、元貴は
「うわ、涼ちゃん、今の見た?」
と涼ちゃんの腕にしがみつく。
「元貴のほうが怖がってるじゃん」
涼ちゃんが笑うと、元貴は「だって、こうやって涼ちゃんにくっつけるから」と小声でささやく。
涼ちゃんは顔を赤らめて、視線をテレビに戻した。
滉斗はそのやりとりを横で見て、心の奥で小さく嫉妬が芽生えるのを感じていた。
(元貴は、こんなふうに素直に涼ちゃんに甘えられて、いいよな……)
自分も涼ちゃんの隣にいるのに、どうしてもあんな風にはなれない。
滉斗は、涼ちゃんの好きな飲み物をテーブルにそっと置いてあげたり、
ポップコーンがなくなりそうになると、すぐに補充してあげる。
「滉斗、ありがとう」
涼ちゃんがふと声をかけると、滉斗は「どういたしまして」と微笑んだ。
でも、その笑顔の奥では、元貴と涼ちゃんの距離の近さに、胸が少しだけ苦しくなる。
(俺だって、本当はもっと……)
そんな思いを抱えながらも、滉斗は二人の幸せそうな様子を邪魔したくなくて、
ただ静かに隣で寄り添い続ける。
映画が終わる頃には、外は夕焼けに染まっていた。
元貴は涼ちゃんの肩に頭を預け、「涼ちゃん、やっぱり一緒にいると落ち着くな」とぽつりと呟く。
「元貴、またそうやって甘えて」
涼ちゃんが優しく頭を撫でると、元貴は嬉しそうに目を細めた。
滉斗は、そんな二人の姿を横目で見ながら、
自分はこうしてそばにいることしかできないのだと、少しだけ胸が痛くなる。
でも、涼ちゃんが笑ってくれるなら、それでいい。
「また、みんなで映画観ようね」
涼ちゃんがそう言うと、元貴も滉斗も「うん」と声を揃えた。
三人で過ごす休日の午後。
その穏やかな空気の中で、それぞれの想いが静かに重なっていく。
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