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春の陽気が心地よい休日、三人は近所の公園へと足を運んだ。
桜はすでに葉桜へと変わりつつあったが、緑のトンネルを歩くのもまた気持ちがいい。
「涼ちゃん、こっちこっち!」
元貴が涼ちゃんの手を引いて、芝生の広場へと駆け出す。
「ちょ、元貴、そんなに急がなくても……」
涼ちゃんは笑いながら、元貴の勢いに引っ張られていく。
滉斗は少し後ろから、二人の様子を見守りながらゆっくりと歩く。
(元貴は本当に、いつも涼ちゃんにまっすぐだな……)
そんなことを思いながらも、滉斗の胸の奥には、また小さな嫉妬が芽生えていた。
芝生の上にシートを広げ、三人は並んで座る。
元貴はすぐに涼ちゃんの肩に頭を乗せて、「涼ちゃん、外で食べるおにぎりって最高だよね」と無邪気に笑う。
「元貴、さっきから甘えすぎ」
涼ちゃんは呆れたように言いながらも、元貴の頭を優しく撫でてあげる。
滉斗は、そんな二人のやりとりを横目で見ながら、おにぎりの包みを涼ちゃんに差し出した。
「涼ちゃん、梅干しのおにぎり好きだったよね。これ、作ってきたんだ」
「えっ、滉斗が? ありがとう!」
涼ちゃんは嬉しそうに受け取り、一口食べて「やっぱり滉斗のおにぎり、おいしい」と笑った。
その笑顔を見て、滉斗の心が少しだけ軽くなる。
(俺も、こうして涼ちゃんの役に立ててるのかな……)
公園には子どもたちの笑い声や、犬の鳴き声が響いている。
元貴は涼ちゃんの膝に頭を乗せてゴロゴロし始め、「涼ちゃん、眠くなってきた」と甘えた声を出す。
「もう、元貴ったら……」
涼ちゃんは困ったように笑いながらも、元貴の髪をそっと撫で続ける。
滉斗は、そんな二人の姿を見つめながら、心の奥が少しずつ苦しくなっていくのを感じていた。
(どうして俺は、こんなにも涼ちゃんのことが好きなんだろう)
(元貴みたいに素直に甘えることもできないし、気持ちをぶつけることもできない)
(それでも、涼ちゃんの隣にいられるだけで、幸せなんだ――)
ふと、涼ちゃんが滉斗の方を向いて
「滉斗も、こっち来なよ」
と手招きした。
「え、いいの?」
「もちろん。三人で一緒に座ろうよ」
滉斗は少し照れながらも、涼ちゃんの隣に腰を下ろす。
元貴が「滉斗も涼ちゃんに甘えていいんだよ?」と冗談めかして言う。
「俺は……そういうのは、元貴に任せるよ」
滉斗は小さく笑い、でも心の中では、ほんの少しだけ涼ちゃんの肩に寄りかかる自分を想像していた。
春の風が三人の髪をやさしく揺らす。
何気ない休日のひととき。
けれど、その中にはそれぞれの想いが静かに、確かに息づいていた。