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◇
「お~いイカルス」
「ん? どうしたセドゥル?」
村スキルの中、イカルスは毎日考えていた。彼と同い年のセドゥルの声に答えながらも村の発展を考えている。
「ようってわけじゃねえんだけどな。今日も何かお願いするのかなってさ」
「ん? ああ、思いついたらな。マスターの力になれればいいからな。ふむ、戦闘を俺達村人が出来れば簡単に赤い夜を過ごせるな」
セドゥルの声に答えながらも想像を口にする。次は何やら戦闘に関してのことをお願いするようだ。
「おいおい、赤い夜は防衛者様の領域だろ? 俺達村人が出ていって死にでもしたらマスターの為にならないだろ」
「セドゥル。お前いいこというな~。そうだよな。村人が出ていったらダメだ。村の中から攻撃できるようなものを」
「……ダメだこりゃ」
セドゥルの言葉をもとに想像に励むイカルス。彼は地面に絵をかいて想像を現実のものにしていく。そんな姿をセドゥルが見ているとジャネットとジャンがやってきてイカルスに声をかける。
「イカルス。マスターが褒めていたよ」
「ジャネット様? マスターが私を? なぜです?」
「あなたの提案がすべていい方向に向かったからよ」
ジャネットの声にイカルスは首を傾げた。本当にわかっていない様子の彼に続けて彼女が話すと更に首を傾げ始めた。
「私はマスターのスキルの中の産物。褒める必要はないと思うが」
「マスターはとても優しい方。例え私達が心ない鉄くずでも褒めてくれるでしょう」
「ん~、そういうものですか?」
イカルスはそう言いながらも地面に絵を描いていく。見張り台のようなものに大きな弓矢をつけている。
「弓の弦を巻き取って威力を上げる。そしてその力で大きな矢を放つ。ルドラ様の風の砲弾と同じくらいの威力になる。これを試験して、実験あるのみ」
「……変わった人だな」
「ほんとに。でも、マスターの力になる人。私達も負けていられない」
イカルスは自分の世界に入っていった。ジャンはそんな彼を見てため息に似た声を上げてジャネットを見つめる。
彼女は変わった男イカルスを見て何かを確信する。ムラタの力になると確信したのだった。
◇
「ふぁ~……。体が痛い」
ルーザーさんとエクスの痴話喧嘩の後、なぜか剣の訓練が始まってしまった。そして、体がボロボロになった僕は筋肉痛で目覚める。
「あの二人恐ろしいな。訓練の後に酒を浴びるように飲んでた……。異世界人はお酒から生まれるのだろうか……」
エクスなんて酔っぱらうまで飲んでいたくせに激しい運動してさらに飲んでた。完全にイカレてるよ。まあ、二人が仲直りしてよかったけれど……。
「おはようムラタ」
「あ、おはようございますルルさん」
支度をして自室を出るといつも通りルルさんが朝食を準備していてくれた。食堂の席について早速口に運ぶ。今日はトウモロコシとソーセージと白いパンか。
ん~、白米が恋しいな~。まあ、美味しいからいいんだけどさ。
「ムラタ! 起きてるか!」
「んぐ、げほげほ。ルーザーさん? どうしたんですか?」
ソーセージを食べて白いパンも続けて口に入れると勢いよく宿屋の扉が開く。ルーザーさんが駆け込んできて、僕は驚いて食べ物がのどに詰まりそうになった。
「あの洞窟! やっぱり異常だった。コボルトが沸き続けてるらしい」
「ええ!? 沸き続けてるってどういう」
「推測でしかねえが。魔法が込められてる魔道具の仕業かもしれねえ。ある程度の魔物をずっと生み続けるんだ」
そんな恐ろしいものがあるのか。ルーザーさんは更に続けて話す。
「魔道具だったら恐ろしいことが考えられる。魔道具っていうのは人が作るものだ。ってことは人が関わってる」
「それって。どういう?」
「人為的に起こされてるってことだ。オルクスを狙って起こしてる可能性が出てきた」
ルーザーさんの説明を聞いて首を傾げると説明してくれる。
この町を狙ってそんな魔道具を使ったってこと? 何のために?
「魔道具っていうのは珍しいものだ。大抵は【魔道都市オルディナ】で取引される。ということはオルディナが関わっている可能性が高い」
「はぁ~……」
説明されてもわからないよ。とにかく、魔道具でコボルトが増やされてるってことだよね。それなら、
「魔道具を壊さないといけないってことですね」
「おお、そうだな。裏に誰がとか、意図とかを調べるよりも先にその魔道具を壊さないとな。ムラタは頭がいいな」
僕の言葉にポンと手を叩くルーザーさん。とにかく、目の前のことから片づけていかないとね。訳が分からなくなっちゃうから。
「エクス達は先にコボルトを倒しに行ってる。俺達もすぐに向かうぞ。ジャネット達も呼べたら頼む」
「了解」
白いパンを平らげてルーザーさんと一緒に宿屋を出る。
大変な仕事になりそうだ。みんなにも手伝ってもらわないと終わらなさそう。