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第十四話:バレたかもしれない
月曜の昼休み、教室の片隅。
陽翔はぼんやりと窓の外を眺めながら、弁当の箸を止めていた。
「……なあ、お前さ」
「え?」
クラスメイトの中でも陽翔に近い位置にいる友達が、ふと不思議そうに聞いてきた。
「最近さ、真白先輩と一緒にいること多くね?なんか付き合ってんの?」
「――ッ」
箸を落としそうになった陽翔は、必死に笑顔を作った。
「え、なにそれ。違うよ、先輩には世話になってるだけ」
「ふーん、でもこの前、駅で一緒に買い物してたの見たしさ」
「……たまたまだよ」
言葉を濁す陽翔の心臓は、ドクドクと音を立てていた。
⸻
──放課後、屋上
真白は陽翔からその話を聞くなり、数秒黙ったあと、肩をすくめて笑った。
「そろそろ限界かもな、隠すの」
「ごめん、俺…うまく誤魔化せなくて…」
「お前が謝ることじゃねぇよ。むしろ、隠させてたのは俺だ」
風に吹かれる陽翔の髪を、真白がそっと直しながら続ける。
「俺さ、別にバレてもいいと思ってる」
「えっ……」
「だって、嘘ついて付き合うより、堂々とお前の隣にいたい」
陽翔の目が、大きく見開かれる。
「でも、バレたら…いろいろ言われるかもだよ?」
「言わせとけ。俺は、他人よりお前を守りたい」
真白のまっすぐな瞳に、陽翔はぎゅっと唇を噛んだあと――
「……先輩ってさ、たまに、ズルいくらいカッコいいよね」
「毎日言ってくれてもいいんだけど?」
「調子乗るから言わない」
ふたりは静かに笑い合い、指先だけそっと触れ合わせた。
屋上の風が、いつもより少し優しく感じた。
⸻
──夜、アパート
晩ごはんを終えたあと、ソファで並んでテレビを見ていると、陽翔がぽつりと呟いた。
「…俺、ちゃんと隣に立ててるかな」
「は?」
「先輩のほうが、大人で、かっこよくて…
周りに見られたとき、恥ずかしくない俺でいられるかなって」
真白は一瞬驚いた顔をしてから、無言で陽翔を抱きしめた。
「そういうの、もう言うな」
「……なんで」
「お前は、俺が惚れた男だろ。そんな自信のなさげな顔、俺が一番嫌いなんだ」
「……じゃあ、俺も強くなる。もっと、堂々としてたい」
「…それでこそ、俺の彼氏」
真白は、陽翔の額にそっとキスを落とした。
その仕草に、陽翔はそっと目を閉じて、安心したように息を吐いた。