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第十五話:その視線の先に
その日、陽翔はいつも通り教室に入った。
でも、空気が……明らかに違っていた。
ざわっ
すれ違う誰かが、小さく笑いながら何かをひそひそと話してる。
その内容が、自分に向けられてるってことは、すぐにわかった。
「……おはよう」
声をかけても、返ってくるのは乾いた「あ、うん」だけ。
やけに視線が集まるのに、誰もちゃんとは目を合わせてこない。
胸がざわざわして、心臓がずっと落ち着かない。
そして休み時間、スマホに届いた1通のメッセージ。
「これってお前らじゃね?」
画像添付
添付された画像には、夕暮れの駅前。
真白が陽翔の頭を撫でながら、手を繋いで歩いている姿が、遠目から撮られていた。
──全部、バレた。
⸻
──放課後、誰もいない教室
陽翔は自分の机に突っ伏していた。
扉が開く音に顔を上げると、真白が立っていた。
「来るの早くない…?」
「お前の様子、心配だったからな」
真白は静かに近づいてきて、陽翔の机の前で膝をついた。
「…バレたな」
「うん。噂になってる。たぶん、明日には学年中に広がってる」
「……怖いか?」
陽翔は唇を噛み、しばらく何も言わなかった。
でも、小さく首を振って答えた。
「…ううん。怖いより、悔しい。
ちゃんと向き合ってるのに、知らない奴らに笑われるのが、すごく悔しい」
その言葉を聞いた真白は、ゆっくりと立ち上がり、教室の扉に近づいた。
そして、教室の外を歩いている生徒たちに聞こえるような声で、こう言った。
「俺が付き合ってんのは、陽翔だ」
「――!」
陽翔は驚いて立ち上がった。
真白は振り返って、堂々とした目で陽翔を見た。
「俺たちは、お互いちゃんと好きで、ちゃんと付き合ってる。
誰かに笑われるために一緒にいるんじゃねぇ。
笑う奴がいたら、俺が全部守る。陽翔をバカにする奴は、俺が許さねぇ」
廊下が一瞬しん…と静まりかえった。
でもそのあと、小さな拍手と「…かっけぇ」っていう声が聞こえた気がした。
⸻
──夕方、帰り道
陽翔は黙ったまま歩いていた。
でもその手は、真白の手を強く握って離さなかった。
「…先輩、あんなこと…よく言えたね」
「本当のことだし、俺、ずっと思ってた。
誰かの顔色気にしてお前と過ごすくらいなら、堂々と愛してるって言ってやりたかった」
「……ずるいよ、そんなの。カッコよすぎて、また惚れる」
「じゃあ、何回でも惚れ直して?」
陽翔は笑いながら、真白の肩に寄りかかった