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天樹
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『双子の名探偵は今日も嗤う』〜謎あるところに闇は生まれる〜2nd season
最終章 『囚われた名探偵』
〜命と引き換えに〜
第4話 希望を賭けて
『奪還…?』
『あぁ。あいつの元から麻里衣を奪い返すんだよ。でも、洗脳されてるから簡単には奴の呪縛は解けない。だから、あいつの所に攻め入り、倒すのは俺達の役目。そして、この後のことは百合菜にしか頼めない。』
『私にしか…?』
『あぁ。』
俺は百合菜にピストルを渡す。
『方法はなんでもいい。麻里衣の正気を取り戻すのは百合菜の役目だ。君にしか出来ない。』
『っ、このピストルでお姉ちゃんを撃てって言うの?』
『洗脳の解除には強い衝撃が必要だ。ルカス、医学的に言うと…』
『うん、ショック療法だね。主様に妹の百合菜様を思う気持ちがまだあるのなら、賭けてみる価値はある。』
『私が、お姉ちゃんを…。』
ギュッとピストルを握る。
『分かった。私にどこまでできるか分からないけど、やってみる。』
一方その頃――。
リリィファミリーアジト
『本当にその日でいいのか?』
『えぇ。むしろその日の方がいいんです。』
『決行は8月8日。この日になにか思い入れでもあるのか?』
『…クスッ。直に分かります。』
『分かった。では、俺がノックスファミリー達に手紙を出そう。』
『私が行きます。』
『!リリィ、君が?』
『えぇ。悪魔執事とその主の顔をもう一度拝みにね。』
コツコツ……。
『ノックスファミリーと手を組むなんて、流石というか、手間が省けるというか。まぁご挨拶に一発……。』
ズドンッ!!パリーンっ!
窓ガラスにピストルを打ち込み、見張りが出てくる。
『あ、あなたは……っ。』
『リリィファミリーのボスのリリィです。ノックスファミリーのボス、クロウザー・ノックスさんに会いに来ました。』
『っ、貴方を通すわけにはいきません。この命賭してでも、ボスを守ります。』
『……そう。では、あっちから出てきてもらうように仕向けますわ。』
私は剣を抜いた。
『今の音は……。』
『エントランスの方から聞こえたような…。』
と、その時――。
『やめ、やめてくれ…っ!!うぐぁ!!』
『助けて、助けてください、ボス……!』
部下達の叫び声が聞こえて急いでエントランスに向かう。
そこには――。
『…やっと来てくれた。』
ドサッ。
片手で持ち上げた部下を床に落とす。
『…殺してないだろうね。』
『えぇ。中々中に入れてくれないから、少しだけ…痛めつけさせてもらったわ。』
『……。』
見たくなかった。お姉ちゃんのそんな姿。
人を傷つけて楽しんでるお姉ちゃんのその顔なんて。
『言伝を言いに来たの。私達リリィファミリーとノックスファミリーの決戦の日。ディッド様に変わり、私が伝えに来たわ。』
私は手紙を投げる。
パシッ。
『期日は8月8日。貴族が船上パーティを開くの。私達はそれに参加するわ。だからこれは招待状。これはノックスファミリーへ。これは悪魔執事とその主へ。』
『その日に…俺と麻里衣がボスの座を賭けて戦うのか。』
『ボスの座を描ける?クスッ。違うわ。賭けるのは―――。』
私は仮面を外し、床に落とす。
カランカラン…っ。
『賭けるのはお互いの命。マフィアらしい賭け事でしょ?』
仮面を外したお姉ちゃんの両目は光を失い、闇を抱えた瞳をしていた。
『本気、なの?お姉ちゃん。8月8日って…それは、私たちの―――。』
『……。』
『…分かった。そのパーティに参加しよう。
俺達の目的はただ一つ。君を、ディッドから奪還する。そして、元の君に戻す。必ず。』
『…うるさい。私は、もう戻らない。闇の中に居た方が、闇に染まっていた方が相応しいのよ。私は。』
私は仮面を拾い上げ、立ち去ろうとする。
『お姉ちゃん、待って!!』
声を荒らげてお姉ちゃんを呼び止める。
『お姉ちゃんがいる場所はこんなところじゃない。お願い、今ならまだ間に合う。戻ってきて、お姉ちゃん。こんなの、お姉ちゃんらしくない。』
『……クスッ。』
私は剣を抜いて百合菜に向かって斬り掛かる。
『え――。』
ガキンッ!!その前に金属のぶつかる音が路地裏に響いた。
『麻里衣、様、貴方は…。妹まで手に掛ける程、闇に落ちてしまったのですか……?』
ルカスが大鎌をわたしの前に曝け出す。
『私らしくない…?これがホントの私よ…っ!!』
カキンッ!!
『くっ!!やめてください、麻里衣様、私は貴方を傷付けたくありません。』
『もう面倒臭いわ…命令違反だけど、ここで貴方達を殺せば―――。』
と、その時―――。
頭が割れるような痛みに襲われる。
『あ゙あ゙っ!!』
私は頭を抑え込み倒れる。
『主様…!』
『時間切れだよ。俺の百合の花。』
『っ、ディッド…。』
『遅かったから迎えに来たよ。俺のリリィ。』
『ディッド、様…嫌、です。まだ戻りたくないです。今いい所なのに……っ。』
『ダメだ。これ以上は君が枯れてしまう。』
俺はリリィをお姫様抱っこする。
『っ、主様に触るな!!』
『アモン…っ。』
『悔しかったら力づくで奪ってみたら?彼女はそれを望まないけど。アジトに着くまでおやすみ、リリィ。』
『っ……。』
『さて、期日はリリィの言った通りだ。8月8日。楽しみに待ってるよ。』
ディッドは暗闇の中に消えてゆく。
『8月8日…お姉ちゃん。本気なんだね。』
『主様、8月8日って…』
私はムーをぎゅっと抱きしめる。
『私と、お姉ちゃんの…誕生日。』
『!?』
『なんてこと……っ。主様は、主様達双子が生まれた日に決別しようと……?』
リリィファミリー アジト リリィの部屋
『はぁ、はぁ……っ。』
『少し無理をしすぎだよ。リリィ。』
『全ては…ディッド様の為…。私のやるべき事はそれしか……っ。』
『君のやるべき事は、私のために綺麗に咲いてくれることだよ。』
私はリリィの頬を撫でる。
『もう少しだ君が綺麗な花を咲かせるまで。』
(ずっとここにいればいい。絶対に奪わせない。俺だけの、リリィ。誰にも渡すものか。)
次回
最終話 決行
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