パチパチ、パチパチと目の前の赤い炎が揺めきながら音を立てている。もう何日経っただろうか?彼女達は薄暗い森の中で2人きりで野宿をしていた。外では幻影獣達に気づかれないよう極力会話をしないでいた。そのおかげなのだろうか、最近黙っていても2人で連携プレイを自ずとできるようになっていた。その日も彼女達が森の中を行くあてもなく彷徨っていると小屋を発見した。恐る恐る近づき中に入ってみると少し汚いが、2人で充分生活できそうだ。2人で中に入りやっと安心する事ができるのかと彼女はほっと胸を撫で下ろした。
入って鍵を閉めしっかり施錠をした後彼はソファに深く座り込み背もたれにもたれかけ上を向き、目を腕で隠した。そうとう疲れていたのだろうもう、すぐにでも眠ってしまいそうだ。一方彼女はというと小屋の棚を漁っているようだ。そこで何かを見つけたのだろう。それを持って来て彼の隣に座り飲み物を飲み始めた。少し経った時彼は異変に気づいた。隣から酒の匂いがするからだ。彼は咄嗟に彼女を見て
「おい、それ何飲んでる⁉︎」
と彼は彼女が持っていたものを奪い取り商品名を見る。
「何ってぇ?…ただのジュースじゃらいの〜?」
彼女は完全に酔っぱらっている。アルコールの強いお酒を飲んでいた。
「ん〜そんな事よりぃアニスも飲もうよ〜これすっごく美味しいよぉ?」
彼女の様子に彼は呆れ、ため息を吐き「俺は良い」とそっけない返事をした。
その後彼女はその態度に不満を持ったらしく無理矢理にでも彼にお酒を飲ませようとした。だが意地でも飲まない彼に彼女は怒った。
「もう!飲まないなら口移ししちゃうよ〜??」
小悪魔のように笑いながら口に人差し指を当て挑発してくる彼女にあきれ「飲めばいいんだろ。」と出された酒を一気に彼は飲み干した。すると数秒後彼は俯いたまま
「…酒をくれ、もっと」
その言葉に彼女は驚き大丈夫なのかと尋ねるも帰ってきた言葉は耳を疑うかのような言葉だった。
「もっと…つってんだろうがっ!!てめぇ耳聞こえねぇのか!!」
急な罵倒に彼女は驚く。
「へっあ、え?」
そう彼女が唖然としていると彼は彼女の元に近づいていき急に胸ぐらを掴んだ。
「酒も持ってこれねぇのかよ。」
と言い彼は胸ぐらを掴んだまま俯いた。そんな状況に戸惑い焦り
「ど、どうしたのアニス…」
と尋ねるとアニスは急に人が変わったかのようにおち着いた。そして、ゆっくりと顔をあげ彼女の顔を見た瞬間、ぱあっと彼の顔が明るくなり、彼は彼女に抱きついた。
「会いたかった…セルリア…」
その言葉を聞いた途端彼女は驚いた。セルリア…?全く聞いたこともない名前だ。急な展開に彼女が驚き慌てふためている中、彼はお構いなしにまた喋り始めた。
「でも、何故…君はもう、?」
そう言い終えた後、彼ははっとし抱きつくのをやめしっかりと彼女の顔を見る。すると彼は間違いに気づいたのだろう、すっかりと青ざめ「すまん…」と謝ってきた。2人共もう酔いはすっかり覚めてしまったようだ。少しの間沈黙が流れたが、それを破り彼女が彼に疑問を投げかけた。
「ね、セルリアって誰なの…?」
その問いかけに戸惑いながらも彼は答えようとする。だが、彼はその答えを発言する前に何故か呼吸困難に落ち入りその場に倒れ込んでしまった。
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