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離婚します 第三部

30 - 第30話 ニシちゃんと貴君(12)

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2024年12月01日

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◻︎これからのことを私らしく


それから、ウィークリーマンションに戻ってゆっくり考えることにした。

今日はお酒は買ってない。

買ってきたのは手帳とペン、それから牛丼とサラダ、ご褒美のコンビニスィーツ。

ガッツリ食べて元気を出すつもりだ。


____私の人生は私が決める


これからやりたいことを、真新しい手帳に一つ一つ書き出していった。


____この結婚が失敗だったと後悔しないために



ぴこん🎶

『そろそろ、お母さんが恋しいみたいです』


お義母さんからのメッセージが届いた。

いくらおばあちゃん子でも、樹はまだまだ小さい。

私は樹の母である以上、自分のことだけを考えて生きていくわけにはいかないけれど。


次の朝、マンションを解約して家へ帰ることにした。



「ただいま帰りました、樹!待たせてごめんね」


敷地内にある母屋のリビングへ入るとシュークリームを食べながらテレビを見ている樹を見つけて抱き上げた。

たった三日ほど会っていなかっただけで、また大きくなっているような気がした。


「おしごとおわったの?」

「うん、ごめんね。でも樹はいい子にしてたんだね?おばあちゃんが褒めてたよ」

「へへ、うん」

「あら、お帰りなさい。どう?少しは気分転換になった?」

「はい、考える時間をもらえてよかったです。結局、貴さんからの連絡はなかったんだけど」


家を出てから、一度も夫からの連絡はなかった。


「ホントにあの子ったら。侑斗君のことは、ちゃんと説明したんだけどね。なんだろ?意地を張ってるのかもね」

「意地ですか?」

「貴があんなふうに感情的になったのは、もしかすると初めてのことかもしれないのよ。お父さんとも話してたんだけどね」

「そう言われてみるとそうかもしれませんね、私もいつも穏やかな貴さんしか知らないです」


やたらに感情的になったりせず、落ち着いているところは大人だなあと思っていたけど。


「それだけ、裕美ちゃんのことが好きだということかしら?でも、間違えていたのは貴なんだから、そこはちゃんと謝るべきよね?大人なんだから」



ガレージを見ると通勤用の車はない。

仕事に出た後のようだ。


「どうする?もう一回家出しちゃう?樹も連れて」


お義母さんがニヤリと笑った。


「いえ、ちゃんと話してみます」

「そう?万が一離婚になったら私も連れていってね」

「は?」

「だって、樹と離れたくないから、ね!たっ君」


苦笑いしかできなかったけど、笑えている自分にどこか安心した。

もう私の気持ちは決まっているのだから。



3日ぶりに今我が家に入る。


貴は普段、ほとんどの家事をやらない。

頼めばやってくれるけど、説明するより自分でやったほうが早いから。


____きっと、荒れてるんじゃないかな?


玄関は、普通。

リビング、ダイニング…も、あれ?思ったほど散らかっていない。

食べ散らかしているかと思っていたけど、そうでもない。


「裕美ちゃん、どう?あの子、散らかしてるんじゃないの?」


お義母さんが後ろからついてきた。


「いや、それが思ったほどは。お義母さんが手伝ったとか?」

「のんのん!ちょっと懲らしめようと思ってね、なーんにもしてないの。だから買ってきたお弁当か、簡単に作ったか?あ、作れないかな。にしても綺麗ね。キッチンなんて磨いてあるような?」


お義母さんに言われて、換気扇のあたりを見たら、たしかに綺麗になってる。

フード周りの油が掃除されててベタベタしない。

ゴミ箱を見ても、空っぽだった。

昨日はゴミの日だったからか。

お風呂もトイレも、綺麗になっている、多分私が出て行った時よりも。


「なぁーんだ、あの子、特に困ってなかったみたいね、全然懲らしめられてないみたい。残念。それにしても、これは…罪滅ぼしかしらね、裕美ちゃんへの」


お義母さんは、ふむふむと家の中を観察している。

あの日、貴が侑斗を殴って散らばった営農関係の書類は、テーブルの上にきちんと並べられていた。


「反省はしてるみたいね。一昨日、侑斗君のことを説明して誤解をといて、それからは顔も見てないのよ。裕美ちゃんのことも樹のことも、何一つ、訊いてもこないし」

「そうなんですか…なにも考えてないんですかね?」

「これだけキチンと綺麗にしているから、反省はしてると思うわよ、裕美ちゃんが帰ってきた時にドヤ顔したいんじゃないの?」


____正直言ってよくわからない、何を考えているのか


「お義母さん、私ちょっと出かけてきます。1時間くらいで帰ってくるから、樹を…」

「ぼくもいく、おかあさんと」

「また置いていかれると思ったのかな?たっ君は」

「そっか、じゃあ、行こうか?」

「うん!」


膝にしがみつく樹を、不憫に感じて連れて行くことにした。

チャイルドシートに乗せて樹と向かったところは市役所。

階段を上って住民課の窓口へ。


「あの、離婚届ってこちらでもらえますか?」

「こんにちは、はい、しばらくお待ちくださいね」


窓口の女性が後ろの書類棚から、離婚届を持ってきた。


「はい、こちらです。必要事項を記入して捺印、そしてこちらへお持ちくださいね」

「あ…はい」


離婚届の書類なんて、簡単に手に入るんだなぁと妙に感心した。

帰り道、樹とハンバーガーを食べる。

こんなお店も、3人できた記憶はほとんどない。

あの人は、仕事がお休みの日はたいてい自動車関係かバイク関係の仲間と出かけて行く。

唯一の趣味だからと黙認していたけど、これも話さないといけないことだと思った。






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