テラーノベル
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「……諜報とは、どうなってやがんだあ?」首領からの命令で、俺は北の方へ任務に向かっていた。任務は諜報で、何が好きでそのようなことをさせられるのかわからない。
……太宰とはかれこれ、三日ほど会っていない。
この間に訃報が来てしまえば、俺はどのような顔をして戻れば良いのだろうか。
出発前に太宰に言われて追加した連絡先も、二日前で止まっている。
意味もないのに、その連絡先を開いては閉じを繰り返している。
「ちぇっ、ふざけてんだろ」
どうしても、悪態が止まらない。
否、太宰の事が気になり、悪態をついていないと仕方がないのである。
行わなくてはならない諜報も、気が分散して上手くいかない。
それ故に、バレるまでは行かずとも、情報を得られずにいる。
「……はあ」
ため息も、まともに出ない。
何が突っかかるのか知らないが、どうにも、全ての行動が太宰への気に向く。
任務は他の部隊員と合同で行っているので、俺だけが足を引っ張っている。
部隊員は場所が悪いだけだ、と言うが、どう考えても注意散漫になっている俺が悪いのである。
……残り、二日。たった、二日である。
なのに、その二日間がどうしても耐えられそうにないのである。
刹那、携帯電話が振動した。
瞬時に携帯電話を手に取った。
『中也、もうむり、はやくかえってきて』
平仮名ばかりで書かれたその文に、俺は何と返信すれば良いのかわからなかった。
……二日も、待てそうにねーな。俺ではなく、太宰が。
そう思う事で、自尊心を守る。決して俺は、太宰に会いたいわけではない。
だが、太宰が無理だと言うのなら、と俺は、早く帰る方法を探り始めた。
翌日の任務ではとんとん拍子に情報を得る事ができ、今までの遅れを全て取り戻す事ができた。
よって、首領からの帰宅が命じられた。
俺は高速で荷造りをし、列車に乗り込んだ。
……俺は太宰に会いたいわけではない。太宰にあのまま、死なれたら困るだけだ。
そう言い聞かせながら俺は、どうにも正直な気分の高鳴りをただ感じていた。
かれこれ数時間揺られ、最寄駅に着き、俺は列車を降りた。
改札を抜け、俺は足早にとある社員寮に向かっていた。
……決して会いたいわけではない。
何度言い聞かせれば気が済むのか、そう自分でも思うほど、そう言い聞かせて俺は足を運ぶ。
部屋の前に着き、俺は一つ息をついた。至って冷静な様に振る舞い、そっと扉を開く。
「……は?」
目に入った情景に思わず、変な声が溢れた。
「やァ、中也。随分と早かったみたいだね」
薄茶色の外套を着こなした、今にも壊れてしまいそうな太宰。
「やあ、中也君、任務お疲れ様」
楽しそうに太宰の世話を焼く、首領、森鴎外の姿があったからである。
太宰の手首に巻かれた包帯が、嫌に赤く滲んでいるのに気がつく。
俺が気が付いていると言う事は、首領も既存の事だろう。
なのに、どうにも胸がざわついている。何と言えば良いのか分からない。
「……首領」
勝手に、口から言葉が溢れていた。
「ん?」
「……太宰の世話係は俺だけです。貴方が首を突っ込む必要はありません」
……俺は一体、何を言っているのだろう。
咄嗟に出た言葉が、俺の首を締め上げた。
……これではまるで、俺が太宰の事を好いているようではないか。
首領は目を見張っているし、太宰ですら驚いた顔をしている。
「ふふふ、太宰君、良かったね」
「……何が?」
「中也君が、君を一生世話してくれるって。君が一人で悩まなくても良いようにね」
語弊のある言い方に俺は反論しようとしたが、何故か声が出せなかった。
「……別に、それなら中也じゃない方が良いんだけど」
「ごめんね、二人の間を邪魔してしまったね。私はもう行くよ」
そう言って去っていった首領を、俺はひたすら見つめるしかなかった。
扉が閉まる音が響く。太宰が素早く外套を脱いで、床に放り投げた。
「……はあっ、中也っ…ぁは、中也ぁっ…!」
泣きながら俺を抱きしめる太宰に、俺は何故か嫌な気がしなかった。
むしろ、少し気分が良かった。
「そんな泣くなよ。良かったな、俺がいねー間首領が居てよ」
照れ隠しのつもりでそう言うと、太宰は首を横に振った。
「中也が居ないと、僕になれないから……」
首領にも本心を出せずにいると聞いて、俺は少しだけ嬉しかった。
自分だけが知っている顔がある、と言うのは、いつまでも嬉しいものである。
……太宰だから、嬉しいのかもしれない。
否、そんなわけ、ない。
しっかりと否定出来ない俺も、もう手遅れなのかもしれない。
「……そーかよ」
……自分が何故ここまで太宰の世話を焼くのか、理由が分かった。
普段は回さない腕を、太宰の背に回した。
コメント
1件
読み終わりました……!中也の「会いたいわけじゃない」って繰り返しながら、太宰からの連絡で即帰る決断するところ、もう完全に手遅れじゃんって思わずにやけちゃいました(笑)最後の抱きしめ合うシーン、太宰が中也にしか見せない顔があるっていうのがすごく刺さりました。重いのに温かい。続き気になります…!
アオイ
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