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僕は誰かに染まりたかった。
染められたかった。
でもそんな権利は当たり前になくて、
只々モノクロの世界とにらめっこ。
そんなつまらない日々を描いた僕の作品は売れなくて、
誰の目にも留まらなく、消えていく。
海の中に溶けていく__。
海は好きだ。
身を任せておけば何処にだっていけるから。
わざわざ努力なんてしなくていい。
する必要がない。
僕は海に恋している。
「..海は僕の一部だ。」
このモノクロな世界を彩る為に今日も絵を描く。
透明なアクリルに色をのせ、
神秘的に、細かく、丁寧に。
「…よし。」
書き終わった絵に口づけをし、
別れを告げる。
「..僕の為に犠牲になってね。」
「ばいばい。」
色は海に溶け、また透明なアクリルだけが残る。
こうして僕は海を明るく彩っている。
青だけなんて寂しいじゃないか。
君もそう思うだろ_?
「…いるか、さけ、かに..。」
思い付く限りの生物を描き、息を吹き込む。
どれか1つくらいは僕を愛してくれるだなんて、
そんなわけないのにね。
期待しちゃって馬鹿みたいじゃん。
今の海はとても綺麗だ。
輝かしくて、沢山の色が混ざっている。
でも、何か物足りない。
飢え。それすら感じる。
「…絵の具だけじゃ足りないか、」
クレヨン。クレパス。色鉛筆。マーカー。
時には素材だって変えた。
アクリルじゃなくて画用紙にしたり、
色々なことを試した。
が、それでもやっぱりこの隙間は埋まらない。
大好きな海を彩ることが難しくて、
海の為に何かをしてあげたくて、
それでも僕は無力だから、
只々海を汚していくばかり。
でもその汚れは人間の目には届かない。
表面上の綺麗な部分だけが光に照らされて、
美しく輝く。
汚れの部分を一切感じさせない海は、
きっと我慢することが上手なんだね。
これは僕と君だけの秘密。
「足りないもの..足りないもの…。」
「…あ。」
1つ思い出した。
足りないもの__。
「..つめた、笑」
頭から液体をかぶり、僕を染める。
色々な色が混ざりあう。
アクリル、色鉛筆、持って来た物を全て抱えて、
準備体操をする。
あの水平線の向こうには何があるんだろう。
それはきっと、かけがえのない大切な物。
この海と、
この青空と、
この大地を踏みしめて、
地から足を浮かせ青空目掛けて羽ばたく。
風に乗って運ばれる僕の色が、
「 誰かに届きますように 」
そう願って。
….。
【静かな海は鮮やかな色で彩られていて、】
【それはきっと誰かの努力の証。】
【アクリルと筆は波に乗られ運ばれ、】
【これからも誰かに伝え続ける。】
【この魂の叫びを_。】
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