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「わたしには分かるんだよっ。アリエッタちゃんかわいいもん!」

「いえっ、そんな……」


ニオは全身全霊をもって否定したかった。しかし目の前にはアリエッタ本人もいる。言葉は完全には分からないとはいえ、意外な言葉を学んでいるかもしれないと考えると、下手な事は言えなかった。


(なんか面白い事になっちゃった)


ニオを連れてきたネフテリアは、この状況にニヤニヤしている。他の大人達も、小さな女の子達の可愛らしい三角関係がどうなるか気になって傍観している。


「アンタがどれだけアリエッタちゃんの事が好きなのか知らないけど、一番のお友達はわたしだからねっ」

「は、はいっ!」


メレイズは出会った時からアリエッタの事をとにかく気に入っている。そしてアリエッタがミューゼの事を大好きなのも知っていて、その関係を友達として応援しているのだ。

2人の間で何が起こってるのかちゃんと理解していないアリエッタ、アリエッタを守るようにニオの前に立ちふさがるメレイズ、アリエッタが怖くてメレイズの誤解を解けないニオ。そんなおかしなこじれ方をした関係を見て、ネフテリアが我慢の限界を超えた。


「ほらニオ。何か言わないとアリエッタちゃんが取られちゃうわよ」

「ふあええええええっ!?」

「やっぱりっ!」

「ちがうっ! ちがうのっ!」

「悪魔か」

「さすが魔王女なのよ」


面白そうと思ったら即行動。それがエインデル王女ネフテリアである。例えピアーニャとイディアゼッターに冷たい目で見られようとも、楽しい事は止められないのだ。他国への接待で真面目にやってた反動というのもあるが。

ここで、会話を理解しようと頑張って単語を拾っていたアリエッタが口を開いた。


「ともだち……」

「うん、友達っ」


にっこにこなメレイズと、繋いでる手を見て、真面目な顔つきになるアリエッタ。そして、ハッとした表情になり、慌てて前に出た。


「ニオ、ともだちっ」

「いやああああああああああああ!?」


笑顔で正面から手を取られ、反射的に悲鳴を上げてしまうニオであった。

その様子に、保護者であるネフテリアはニッコリ。


「うむうむ。期待通りの反応」

「心の底からの悲痛な叫びでしたね」


シャダルデルクでの一件を聞いているイディアゼッターも、なんだか諦めたような表情になっている。とりあえず3人娘の動向を見守る事にしたようだ。

周囲の人々も、ニオの悲鳴で何事かと見守っているが、当事者達の表情からは状況を全く掴めない。


「アリエッタちゃんが友達って言うならいいけど、1番はわたしだからねっ」

「いいですっ、1番なんていらないですぅっ」

「なんで!? アリエッタちゃんの1番になりたくないの!? こんなに可愛いのに!」

「え、あれ、ええええっ?」

「メレイズおまえメンドクサイな!?」


しばらく見ないうちに、すっかりアリエッタ好きを拗らせてしまったメレイズを見て、ミューゼとパフィは呆れ顔。


「まったくもう。アリエッタが可愛いのは分かるけど、暴走するのは良くないわ」

「そうなのよ。そんなんじゃアリエッタがビックリするのよ」

「アンタが言うなっ!」


ネフテリアのツッコミでピアーニャが我に返り、場所を変えて話をしようと提案。人が集まる場所で、小さな女の子3人を中心に騒いでいるので、とにかく目立っているのだ。

一行は上の階へと移動。戦う事を目的とした者達が出入りする1階と違い、2階は休憩や戦わない者達が過ごす場所になっている。食堂やお土産屋さん、そして借りられる部屋や家などが並んでいた。


「かりているイエにいくぞ」

「もしかしてメレイズちゃんのため?」

「そうだ」(わちのタメにもなるがな)


納得したネフテリアが後ろを振り返ると、嬉しそうなメレイズと、いまにも気を失いそうなニオが、にこにこ笑顔のアリエッタに手を繋がれ、ついてきていた。


「えへへ、ほんと久ぶりだねー」

「にひひー」

「タスケテ、タスケテ」


その後ろからミューゼとパフィが見守っているので、安心してピアーニャと会話が出来るようだ。


「ここだ」

「あ、2人だけじゃないのね」

「まぁな。トックンしたいヤツのメンドウみるくらいなら、モンダイない」


飾り気の無い小さな家に到着し、中に気配を感じたネフテリアは、それもそうかと納得。シーカーが強くなる事は、リージョンシーカーにとっても利となるのである。


「リョウリやソウジも、たのめるしな」

「………………」


感心して損した気分になったが、確かにピアーニャとメレイズでは家事が出来そうにない。見た目幼女と本物の幼女というのは伊達ではないのだ。

ピアーニャが『雲塊シルキークレイ』を使ってドアを開け、全員で中に入ると、メイド服の人物が出迎えた。


「おかえりなさ……あら、ネフテリア様に、皆さんお揃いですか」

「いやあの、なんでツーファンがいるの……」


現れたのは、エインデル城でディラン王子の護衛を務めている筈の、料理人ツーファンであった。メイド服と手に持ったお玉が似合っている。


「特訓に便乗させていただいております」

「まぁこんなトコロでハナシをしてもしかたない。ナカにはいるぞ」


家のリビングに通され、パスタラザニアとマカロニで作られたローテーブルを囲んで、全員が床に座った。借り家なので、備え付けの家具等は元々置かれてないのである。


「どうぞ」


ツーファンが全員分のお茶を出し、ピアーニャを見た。


「べつにキンキュウジタイとかじゃないから、すきにしていいぞ。メレイズは、きょうはもうやすみだ」

「では、外に出てきますね。食事は、パフィさんお願いします」

「? まかされたのよ」


そう言って、ツーファンは家から出ていった。


「……なんで?」


ネフテリアがピアーニャに問いかけた。もちろんツーファンがここにいる事についてである。


「アニをたおしたいんだと」


ピアーニャが言うには、兄であるコーアンの息の根を止める為、今回のメレイズの特訓に便乗してきたという。ディランやフレアには許可を貰っており、この際だから思いっきり特訓してこいと言われたそうな。護衛が強くなる事は喜ばしいのだ。

ツーファンがついてくる事で、体が小さすぎて家事が出来ないピアーニャの助けにもなる。それもあって動向を許可したのだった。


「ピアーニャだっさ」

「うっさいな! しかたないだろっ」


事情は分かっていても、からかわずにはいられないネフテリアであった。

ピアーニャのふてくされる姿を見て、ミューゼが不思議そうに呟く。


「総長は強いのに、出来ない事って多いのね」

「それはそうです。お嬢は戦う力を持っているだけですから」

「戦う事と生きる事はまったく別なのよ」

「?」


イディアゼッターとパフィの言う事がいまいち理解できないミューゼ。ニオとメレイズも、何を言っているんだろうという顔で、パフィを見た。


「説明が難しいのよ。ゼッちゃん頼んだのよ」

「雑ですね」


というわけで、イディアゼッターが説明する事になった。


「まず、食料を得るために森で獣と戦ったとしましょう。勝ったら何が手に入りますか?」

「お肉?」

「お肉は好きだよ」


ミューゼとメレイズの答えに微笑み、話を続ける。


「勝ってすぐにお肉が手に入るわけではありません。手に入ったのは獣の死体で、解体しないとお肉を手に入れたとは言えませんね」

「うっ……」

「ほえーなるほどー」

「さらに、お肉に出来たとしても、それを食べられるようにするには捌いたり焼いたりと、やる事が多いですよね」

「う、うん」

「焼くにしたって道具が色々必要です。さて、再び質問です。獣と出会ってから食べるまで、戦う力が必要だったのはどれくらいでしょう」


ミューゼとニオがハッとした顔になり、メレイズが難しい顔で指を折って何やら数えている。

何かを言おうとしたミューゼだが、口を開けて止まってしまった。言葉が上手く出てこない様子。


「この答えはヒトや能力にもよるでしょうね。ラスィーテ人などは戦闘と料理を同一視してしまいますから」

「でも、あたし達は戦うだけで食べ物は作れない」

「戦う以外の力が無いと、生活が出来ないです……」

「あっ、そっかー。戦いしか出来ない人って、役に立たないんだね!」

「そこまではいってないだるぉ!?」


メレイズはばっちり曲解したようだ。一応ゆっくり説明し直したが、それ以上はちゃんと理解されなかった。まだ幼いので仕方がない。ミューゼと同じように理解できているニオのほうが例外なのだ。

そしてピアーニャが拗ねた。アリエッタもちょっと拗ねている。


(何話してるのかわからん! ちょっと寂しいな……)

「どーせわちなんて、クモをあやつるしかできないチビだよ」

「お嬢は体が小さいから仕方ないですよ」

「そーなのよ。大きくなったら料理教えてあげるのよ」

「オマエにおそわってもな……」

「ミューゼさん、ニオさん、メレイズさん。強くなる事は悪い事ではないですが、生きる為には強さ以外を大切にするのですよ」

『はーい』


戦う事と戦わない事の道徳的な話を子供達に聞かせる事が出来て、ちょっといい気分になったイディアゼッターであった。

話は逸れたが、ここに来た本題はピアーニャの目的とメレイズの存在についてである。


「メレイズをつよくそだてて、ミューゼのイエにおくりこもうとおもってな」

「うちはあんまり大きくないから、そんなにホイホイ増やされても……」

「ああすまん。エルトフェリアのほうだ。とくにヴィーアンドクリームな」


なんとピアーニャは、エルトフェリアをミューゼの家の一部と認識していた。そういう風に教え込んだのはネフテリアである。


「そこにいれば、メレイズはいつでもアリエッタにあえるからな」

「えへへ。いつでも会えるんだよ、アリエッタちゃん」

「? メレイズ、うれしい?」

『………………』


嬉しそうなメレイズとよく分かってないアリエッタを見て、大人達は考えた。そしてすぐに同じ答えを導き出した。


『なるほど、生贄』

「ワルいフウにいうなっ!」

からふるシーカーズ

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