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2人が戻ってきたのは1時間後。
少し目元の赤いクロノアさんと真っ赤に目を腫らしたトラゾーさんだった。
顔を上げたトラゾーさんと目が合う。
手を引かれていた彼はクロノアさんの手を離し、僕のところへ走ってきた。
「え、え、?な、なに?」
がばりと急に抱きつかれてぎゅっと抱きしめられる。
突然のことに目を白黒させ、戸惑っていた。
ってか、めちゃめちゃいい匂い、じゃなくて。
「トラゾー、さん…?」
僕に抱きつくトラゾーさんの肩にそっと触れる。
「ごめんなさい、ただいま戻りました…”しにがみ”さん…!」
「!!」
その声の響きは”トラゾー”さんだった。
すごく嬉しくて、泣きそうになって胸が痛くなった。
そして、僕より広い背中に手を回す。
そこはやっぱり少し痩せていたのか、厚みが薄くなっていた。
「ッッ!おかえりなさい…!”トラゾー”さん…僕の方こそ、ごめんなさい…ッ」
ぼろぼろと泣く僕とトラゾーさんはぎゅっと抱きしめ合った。
そこから抱きしめ合いながらぽつりぽつりと話をしていた。
僕たちの思いを、トラゾーさんの思いを。
辿々しくも、しっかりと自分の言葉で。
ひとしきり話をして、落ち着いてきて笑い合った。
暫くしてバサバサと紙が落ちて床に散らばる音がした。
その方を見ると、目を見開いたぺいんとさんが棒立ちしている。
僕はそっとトラゾーさんから離れる。
トラゾーさんは両手をいっぱいに広げた。
「”トラゾー”!!」
ぺいんとさんの大きな元気な声が響き渡る。
「”ぺいんと”…!!」
トラゾーさんのよく通る大きな声が同じように響いた。
両手を広げたトラゾーさんに突進するするかのように走り、抱きついたぺいんとさん。
隙間がないくらいに無言でお互いを抱きしめ合う2人を見て、心から安心した。
言葉なんかなくても伝わり合っている2人。
そして、ひとしきり抱き合ったあとぽつりぽつりと僕と同じように話し始める。
所々でトラゾーさんが小さく笑ったり、ぺいんとさんが焦った顔をしたりしていた。
見慣れた、いつもの情景。
「よかったね」
隣に立つクロノアさんを見上げれば微笑んでいた。
「そうですね」
再び2人の方を見れば、ズビズビと鼻をすするぺいんとさんとトラゾーさんは顔を見合わせ笑っていた。
トラゾーさんのそのあどけない、けど見慣れた笑顔を見て僕たちは心の底から嬉しく思った。