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03 有能、無能
レイとは保育園が一緒で、小学校も中学校も一緒だった。
一緒の学校に受験しようね__って笑ったレイの顔を私は見ていられなかった。
『レイは頭がいいし、私なんかに合わせててもいい学校に行けないよ。』と、言えば『いいの!私のことを好きでいてくれるミコに価値があるの!それに頭の良さは一緒だよ!』って微笑んだ。
レイはよく女子からは嫌われていた。
理由は嫉妬、とか。今考えてもくだらなかった。
同じ部活の先輩からは特に。
レイは一年の頃から弓道部に所属していたが、レイは1ヶ月練習するだけで、見事三年生の先輩を差し置いて大会が決まった。
対して私は別の意味で部活の先輩から嫌われていたと思う。
私は活動日が少ない家庭科部…月2で料理やお菓子を作る部活に所属していたけど、どうやら私に家庭科の才能はなかったみたいで、何度も料理やお菓子を焦がした。
3ヶ月目ぐらいまでは『仕方ないね』って言ってくれていて、ガミガミ怒る先輩を他の先輩が庇ってくれた。
「次は頑張ろう!」
そう意気込んで、家でお菓子を作ったり、料理の本とにらめ合いっ子をしていた。
でも、そんなことは無駄だった。
4ヶ月経ったある日、プツン___と、優しい先輩をとうとう怒らせてしまって、『やる気がないなら出てけ!』と家庭科室を追い出された。
唯一私のことを怒らないでいてくれていた先輩も、
「あの子を怒らせたらもう部活に居場所はないと思うし、退部届を出すことをお勧めするよ___きっとみこちゃんには別のことが向いてる。」
と、緩やかに言われた。
向いていることなんてない。興味のある事なんてない。
あの時言われた『2度と来んな!』という先輩の怒鳴り声を今でも忘れられない。
このことは誰にも相談できなかった。
両親に言っても悲しむし、心配させちゃう。
レイには言えなかった。
いや、正直に言うと言いたくなかった。
なんでもできるレイに言いたくなかった。
『そんなこともできないの?』って思われたくなかった。
「家庭科部、やめたの?」
ある日の帰り道、帰りの電車をホームで待っている時に聞かれた。
「え!?あ、うん。今は、ちょっと勉強を頑張りたいな__って。」
そんなあやふやな返事にもレイは首を突っ込まなかった。
「そっか、勉強、頑張ってね」
そうレイに言われたとき、すごく胸が苦しかった。
レイの親は2人とも家にいないことが多くて夜でも帰ってこない。
だから例は夜遅くまで勉強してて、『あぁ、完璧な人ってこういう人のことを言うんだ。』
そう、思った。
それからこの頃ぐらいからだろうか。
レイのことに異性として気にし始めたのは。
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