昼休みのグラウンド。
あちこちでカップルがハチマキを交換しながら写真を撮っていて、
その光景を見ていた🌸は少しだけ羨ましくなっていた。
そこへ、
パンを片手にゆっくり歩いてきた宮治が声をかける。
「……なんや、じーっと見て。
そない気になるん?」
いつも通り感情薄めの顔で言うけど、
ちゃんと彼女の表情を見逃さない。
「みんな、交換してるなぁって……」
治はパンをもぐっとかじりながら、
ちらっとカップルたちを見て、また🌸に視線を戻す。
「……ほな、俺らもするか?」
「えっ……い、いや別に──」
「いらんの?」
治の声がほんのり低くなる。
落ち着いた性格なのに、独占欲だけは隠さない。
「ほかの奴とはせんでええ。
するなら、俺一択や。」
静かなのに圧がある。
でもそれが逆にかっこいい。
「……治と交換したい」
ぽつりと呟くと、
治の目元が少しだけ柔らかくなる。
「ん、言えたやん」
ひとことだけなのに、
満足してるのがよく分かる。
治は自分のハチマキを外して、
「ほら、来てみ」と手を差し出す。
🌸が行くと、
治は無駄な動きも照れもなく、
彼女の頭にゆっくり巻いてくれる。
指先が髪に触れ、
首筋にそっと当たる。
「……じっとしぃ。動いたら曲がる」
淡々としてるのに、
耳の先、赤くなってる。
巻き終わると、
治は少し離れて彼女を見て、ぼそっと言う。
「……似合うな。俺のん」
彼の声は低くて静かで、でも甘い。
「次、🌸のも貸して」
🌸が差し出したハチマキを治は受け取って、
何も言わずに、自分の首にくるっと巻く。
「治、頭じゃなくて首なんだ」
「せや。
飯食う時も外れへんやろ?」
“飯優先の理由”で笑えてしまうけど、
治は真面目な顔で続ける。
「……ここにつけとったらな。
誰が見ても分かる。
『治のもん』って」
淡々と独占欲を放り込んでくる。
その時、近くで男子が
「おー、宮の彼女可愛いよな」
と話しているのが聞こえた。
治の眉がピクリと動く。
そして、パンを片手にしたまま振り返り、
「……見すぎや。
あんまジロジロ見んな」
声は低くて淡々。
でも怒ってるのが誰でもわかる。
男子たちは慌てて散っていった。
「治、怒ってる?」
「別に。
ただ……俺の見とんのが気に食わんだけや」
治はそう言って、
🌸の手を強めに握る。
「交換したんやから、今日はずっとそばおれよ。
……離れたら、機嫌悪なる」
それは脅しなのか甘えなのか分からないけど、
唯一の弱さがのぞく。
「体育祭終わったら……
飯食いに行こ。二人で。
ご褒美に、いっぱい甘えたるわ」
思わず笑ってしまうほど、治らしい誘い方だった。
コメント
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双子は世界を救う_:(´ཀ`」 ∠):