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渡辺ユウキ(12)。最近中学生になった。
相変わらず休み癖は治らないらしいが……。
そんなダメダメな私は自殺を企んでいた。夜なら皆寝静まり止められない、自殺にピッタリだった。
私は夜になるのが待ち遠しかった。
襖をあけたら風の通り抜けが激しい廊下。空いた窓には風鈴がつけられていて暑い風が風鈴にあたり夏の終わりを感じる。
廊下の奥には父親の秘密の部屋があった。そこには沢山の本が並べられておりオカルトものばかりだった。
夏にピッタリなその本は父親とよく読んでいたものだ、とお気に入りの本を手に取りページをめくる。
父親はある日私達を置いてどこかに行ってしまった。原因は夫婦喧嘩だろう。父親が出ていったその日は部屋が昨日の晩とは比べ物にならないくらいに荒れていた。
父親は茶髪の長い髪をひとつに括り丸眼鏡をかけていた優しい父親だった。
昔父親に勧められて読んだ本があった。その本はオカルトでもなんでもない本だった。それは酷く悪寒がしたが、ただの普通の本。
その本はある男の人の人生を描いたものだった。”秤健太”という男はある宗教の信者で殺すように促され、ある一人の女の子に一目惚れした話。しかしその後、自分で自殺をし幽霊となった…と。
その話はどこか本当にあったかのように綴られていた。だから嫌な気配がしたのだろう、と言い聞かせていた。
と本を読んでいたら夜になっていた。私は部屋に引きこもった。鍵をかけて親がご飯で呼んでも返事はしない。その時はえらい長い時間に感じた……。
みんなが寝静まった4時頃、私は鍵を静かに外し窓を開けで屋根に足をつける。屋根は昼の時と違ってとても冷たかった。しばらくそこに座って辺りを見回す。
…………死のう。
私は飛び降りた。
本当はここで飛び降りても死なないことなんて分かってた。少し痛いだろうけど大怪我はしない高さ。自分は飛び降りた。死ねることを願って。
………目を開けるとあたりは真っ赤に染まっていた。どうやら血が出てしまったようだ。
……なんで死ねないんだよ。
家の鍵を開けていればよかった………。
あと3時間、外で耐えなければいけないのか。
私は窓を開けっぱなしになっているのを見て外からでも入れる道を探そうと辺りを見回す。
いい感じに屋根の高さにある物置、物置よりも半分しかない大きさの柵。
屋根は滑り止めみたいに滑りにくい。
私は試しに屋根まで登ってみることにした。
予想的中。案の定登れた。帰る経路は見えた。
私は夜の雰囲気に誘惑され、少年心を擽られ少し街を歩いてみる事にした。
静かな田畑、街灯一つない道路。明かり一つない路地裏。
街灯の下に白い女が見えた気がした。
私はあの話を思い出す。
“花見さん”
夜道に歩く人間に襲いかかる危険な幽霊。しかし仲良くなりたいだけかもしれない…………
という話。話しかけてみよう。
私は堂々と街灯の下に近付く。
花見さんも思われるその人はとても可愛らしい風貌をしており、花柄の白い着物を着て花のピンを付けている。
私は花見さんに話しかけた。