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例え飯塚のような奴でも、何も知らないマナにとっては大好きで大切な存在なのだろう。もし俺が飯塚のことをマナに話してしまったら、俺の目の前にいるマナの笑顔は悲しみの表情に変わってしまうかもしれない。一瞬だけど、言わない方がマナにとって幸せなんじゃないかと思ってしまった。飯塚がマナを傷つけないという補償があるなら、例え遊ばれているとしても、このままでいいんじゃないのかとさえ思ってしまった。
「圭ちゃん、どうしたの? 深刻な顔して?」
「何でもない。ちょっと疲れただけだ」
「だったらいいんだけど。それなら早くスタバに行って、キャラメルフラペチーノを飲もうよ」
「そうだな。さっさと行こう」
それから俺とマナは、いつものように2人並んで歩いた。そしていつものようにマナが話し役で俺は聞き役になった。相変わらずマナの話はテレビ番組の話や、芸能ニュースの話、ゲームの話が多かった。テレビを殆んど見ない俺にとって情報の提供源はマナだった。別に聞いてもいないし知りたくもないけど、マナは知っている限りの情報を俺にぶつけてくる。
学校を出て30分ほどで駅に到着すると、駅構内にあるスタバの店に入った。マナは言っていた通り〝キャラメルフラペチーノ〟をミドルで注文した。しかもも2つも――。俺もマナと同じ物を注文した。
「おいしぃ~。やっぱりこれだよね。これっ」
「お前、2杯も飲んで腹壊すなよ」
「大丈夫だって。これ好きなんだから」
「そういう問題じゃないだろ」
「いいの! 好きな物でお腹が痛くなるなら全然いいよ」
「腹痛くなるのは俺じゃねえから別に構わないけどな」し
ばらくの間、たわいもない話で時が流れていった。
「それより圭ちゃん、何か話したいことがあったんでしょ?」
「あぁ――」
マナの方から、その話題に触れてくるとは思ってもみなかったので少し驚いた。
「何?」
「飯塚先輩のことだ」
「はぁ――またその話か。だと思った。そうだったね。圭ちゃん、先輩のことが嫌いなんだもんね」
「嫌いとか好きとかそういうことじゃないんだ!」
「何が気に入らないの?」
「それは――」
「わかったぁ。もしかしてマナが先輩と付き合ってるの面白くないんでしょ? 圭ちゃん妬いてるんだぁ」
「はぁ? 何言ってんだ! どうして俺が妬くんだよ。いいか、よく聞けよ。俺はマナのために言ってるんだからな」
「聞いてあげる。言ってみなよ」
「なら言ってやる。お前の大好きな男はな、お前以外にも付き合ってる女がいるんだよ。しかも殆んどの女が遊ばれてるだけなんだ。あの男が本当に付き合ってるのは、あの3年のマドンナ的存在の白鳥先輩なんだよ」
「――――」
「マナ、何とか言ってみろよ」
「知ってるよ――」
「何が?」
「飯塚先輩が私以外にも複数の女性と付き合ってること――。それに、白鳥先輩が本命だってことも――」
マナにしては珍しく、目を潤ませ真剣な面持ちで言っていた。