「だったら何で、そんな男と一緒にいるんだ?」
「だって――飯塚先輩が《確かに白鳥とは一番長く付き合ってるけど、俺が今一番好きなのはマナなんだ》って言ってくれたんだもん」
「お前なぁ――カッコいいようなこと言ってるけど、最低のこと言ってるかんな!」
「――――」
「そんな言葉に惑わされるなよ!」
「私は先輩のこと信じてる。そうじゃなきぁ一緒にはいられないよ」
「信じるのはお前の勝手だ。でも、傷つくのはお前だからな。マナと一緒にいない時は、他の女と一緒にいるんだぞ。それでもいいのか?」
「嫌だけど――先輩、私が1番って言ってくれたもん」
俺に笑顔で応えたマナの作り笑い――少しだけ寂しげに見えた。無理して強がっているようにしか見えなかった。
「そんな顔をしてるなら、飯塚のことは諦めろ!」
「何それ? 私どんな顔してるの?」
「ツラそうなんだよ」
「ツラいよ。ツラいに決まってるじゃん――」
「マナ――」
やっぱりそうだよな。ツラいんだよな。
「お腹が空きすぎて、ちょーツラいんだけど――」「お前なぁ――」
「ふんっ」
「そんな顔してるから心配してやったのに、これだよ。心配して損したわ」
「何でもいからお腹いっぱい食べたい!」
でも、俺の瞳に写るマナの表情はそんな風には言ってはいなかった。
「わかった、さっさと注文して食べちまうぞ」
「おごりだよね?」
「あぁ、好きなだけ食べればいいじゃんか」
「よっしゃあ! 圭ちゃん、だ~い好き!」
マナは俺に向かって投げキッスをしていた。それからマナに1,000円を渡して買いに行かせると、その金で買えるだけの食べ物を買って戻って来た。
「それ全部食べるのか?」
「全部食べないよ。残ったら家で食べるの」
「そっか」
「それと、お釣もらっちゃっていい?」
「いいよ、好きにしろよ」
「サンキュー。やっぱり圭ちゃんサイコー」
マナの言うサイコーとは、きっと色んな物を買ってくれる優しい人間のことを言ってるのであろう。
「マナ、俺はお前と友達だから厳しいことを言うからな。俺もゆずきもマナが飯塚と付き合うのは絶対反対だ!」
「友達だったら、少しは応援してくれたっていいじゃん。本当に2人は私を友達と思ってるの? 本当に友達なの?」
「――――」
余りにヒドイ言われように、一瞬返す言葉を失ってしまった。
「俺もゆずきもマナの友達だから、友達が傷ついたり悲しむような思いはさせたくないんだ」
「へぇ~でも私は友達なら応援してもらえる人のがいいなぁ。友達でいたいなら応援した方がいいんじゃないの?」
「いつだって応援してるよ」
もうこれ以上マナと話していたら、キレそうだし、嫌いになってしまいそうなので止めといた。
「良かったぁ。圭ちゃんが友達じゃないと何かと困るもん」
「あぁ、そうだろうな――」
マナにとっての友達とは、自分にとって都合がいいか、便利かということなのだろう――。俺は構わないけど、ゆずきはマナを本当の友達と思っているから、その気持ちを裏切るようなまねだけはして欲しくはなかった。