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「俺がですか…?」
「うん。本当は自分でどうにかしようと思ったんだけど、恭也くんがあんな事言うから俺、恭也くんにしてもらいたくなっちゃった」
陽雅さんは色っぽい視線で続けて言う。
「だから恭也くん、してくれる?」
陽雅さんの目を見て、心臓がドクンと跳ねる。
その目から目が離せなかった。この人の言う事なら、何でも聞ける気がする。今すぐ陽雅さんを気持ち良くしてあげたい。
そう思ったら、断る理由なんて思いつかなくて。
「いいですよ。俺が気持ち良くしてあげます」
その返事を聞いて、陽雅さんは愛おしげな視線で微笑みながら言う。
「やっぱり恭也くんって最っ高」
(嬉しい…)
胸の奥がじんわりと温かくなる。
早く触ってあげたい。
陽雅さんのものを握り、ゆっくり上下に動かす。
「んっ…」
陽雅さんの口から声が漏れる。
なんだか嬉しくて、もっと気持ち良くなって欲しくて、手を動かし続ける。
「んっ…もっと早く…」
陽雅さんにそう言われ、手の速度を早くする。
「あっ…んっ…そうっ、上手っ…」
手を動かす度に陽雅さんの甘い声が漏れて、気持ち良さそうな顔をしていて、なんだかゾクゾクした。
「あっ…んっ…恭也っ、もうイキそうっ…」
陽雅さんのその言葉を聞いて、手の速度を早くする。
「あっ…恭也っ、──っ!」
陽雅さんのお腹の上に白くドロっとしたものが出る。
俺はそれをティッシュで拭いた。
「恭也、ありがとう」
陽雅さんはそう言った後、後ろにゆっくり倒れる。
「陽雅さん?」
陽雅さんの顔を覗き込むと、眠そうな顔をしていた。
「俺、ちょっだけ寝るね。先にシャワー、浴びて来な」
「はい」
陽雅さんはゆっくり目を閉じ、寝息を立てた。
そういえば前回も寝てたな。能力の副作用だっけ。
あの時俺が大丈夫って思えたのも、怖さが消えたのも、多分陽雅さんの能力のおかげなのだろう。
俺はただ、陽雅さんの事を知りたくなった。
後で聞いてみようかな。能力の事。
階段を降りてリビングに入る。風呂場はどこだろう。
探し回ろうとした時、後ろの扉が開く。
「あれ。あおじゃん」
この声は。
俺は振り向き、確認する。
「零斗さん」
「また来たんだ」
「はい。あの、風呂場ってどこですかね」
「風呂? もしかして、体で払ったの?」
「そうですけど…」
零斗さんは俺の言葉を聞いて、俺に近寄る。
「ふ〜ん。じゃあ次は俺…」
零斗さんはそこで言葉を止め、俺の首元を見る。
その視線の先には、陽雅さんに付けられた”お気に入りの印”。
「は? まじ? 陽雅のお気に入り?」
「あぁ、そういえばなんかそんな事言ってましたね」
「いやだって…お前初めてだろ? アイツとヤったの」
「初めてですけど」
「まじか。初めてで…やっぱりあお、陽雅と相当相性いいんだな」
「相性いい…」
俺はそんなに陽雅さんと相性がいいのか。
嬉しくて、気づけば口元が緩んでいた。
そんな俺を見て、零斗さんの顔が引き攣る。
「ありえねぇ…」
零斗さんは小さく吐き捨てるようにそう呟き、キッチンへ向かう。
「あのっ、風呂場は…」
「そこ。キッチンの横の扉」
「ありがとうございます」
俺のその言葉に零斗さんは無言で頷いた。
シャワーを浴びてリビングに戻ると、零斗さんの姿は無かった。代わりに見知らぬ男性がソファーに座っていた。
さっき零斗さんが居たし、零斗さんのお客さんかな。
男性の前に立つと、本を読んでいた様子の彼が顔をあげた。爽やかで落ち着いていそうな男性だ。
「あの、もしかして零斗さんのお客さんですか?」
「違うよ。君は誰?」
彼は不思議そうに俺を見る。見た目通り落ち着いた声だ。
「あっ、すみません。俺、陽雅さんにお世話になってる恭也です」
「そう。俺はここに住んでる泰輝」
泰輝さん。確か、あんまり部屋から出てこないって陽雅さんが言ってたっけ。そんな泰輝さんは続けて言う。
「恭也くんは陽雅のお気に入りなんだね」
まだ少ししか話してないのに、もうキスマークに気付いたのか。よく見てるな。この人。
「そうみたいですね。俺の何が気に入ったのかわかんないんですけど」
俺が苦笑いすると、泰輝さんは本に視線を戻す。
俺は何となく泰輝さんの隣に座った。
少しして、泰輝さんが言う。
「悪いんだけど、あんまり近づかないでくれる? 俺今、お腹空いてるの」
「お腹…それって近づかない方がいい理由になってます?」
「なってるよ。もし俺が我慢できなくて君の首に噛み付いたりでもしたら、俺陽雅さんに殺されるもん」
首に噛み付く…もしかして。
「あっ。アレですか? 吸血鬼」
なんて、冗談だけど。
「正解。だからあんまり俺に近づかないでよ」
ウソ。本当に吸血鬼なんだ。すごい。
俺は好奇心が湧く。
「吸血鬼って十字架が苦手とかいうじゃないですか。あれ、本当ですか?」
「別に苦手じゃないよ。あんなの空想の世界だけだよ」
「へぇ〜。じゃあ、太陽が苦手っていうのは?」
「あれもただの設定。まぁ、俺は個人的に好きじゃないけどね」
確かに、泰輝さんの肌は普通の人に比べて白い。
「だからあんまり部屋から出ないんですか?」
「そうだね。それに、自分の部屋が一番落ち着くし」
「今日はなんか用事とかですか?」
「用事では無いんだけど、ちょっとお腹空いちゃって。陽雅さんに貰おうかなって」
さっきまで零斗さんがいたけど、会わなかったのかな。
「零斗さんに貰わなかったんですか? さっきまでいたんですけど」
「いたね。でも零斗さんの血貰うと俺の熱も要求されるから嫌なんだよね」
「熱…ですか?」
「うん。零斗さん、サーモだから。感情の熱量を吸収するの」
サーモ。感情の熱量を吸収。知らない事ばかりだ。
「そうなんですね。ちなみに、陽雅さんの能力ってなんなんですか?」
勢いでそう聞いてみる。
「陽雅さんはね…ドルって言って…」
その時、リビングの扉がガチャっと開く。
扉の方を見ると、陽雅さんがリビングに入って来ていた。
「恭也お待たせ…あれ。泰輝?」
泰輝さんは立ち上がり、陽雅さんの傍による。
「陽雅さん、血飲ませてくれません? お腹空いちゃって」
「いいけど…兄ちゃんは?」
「なんか、急用出来て来れなくなったみたいで」
「また? なんか最近多いね。俺が言ってあげようか?」
「いや、大丈夫です。 陽煌さんも忙しいと思うので」
陽煌さん。誰だろう。さっき陽雅さんが″兄ちゃん″って言ってたし、陽雅さんのお兄さんかな。
「泰輝がいいならいいけど…まぁ、とりあえず血、飲みな」
「ありがとうございます」
泰輝さんは陽雅さんの首元に口を近づけ、そのまま噛み付いた。ゴクゴクと血を飲む音が聞こえる。
その様子を見て、胸のあたりがモヤッとする。
少しして、泰輝さんが顔をあげた。
「ありがとうございました」
「うん。いつでも飲みに来てね」
「はい。ありがとうございます」
泰輝さんはニコッと笑った後、リビングから出ていく。
そんな泰輝さんを見て、陽雅さんが呟く。
「血貰ったらすぐ部屋に戻るなんて、冷たいな〜。ね、恭也」
俺はただ、俯く。
なぜだか、ずっと胸のあたりがモヤモヤしている。
「恭也?」
陽雅さんが、俺の傍による。
俺は顔をあげて、陽雅さんの首元を見る。
そこには、赤い点が二つ。泰輝さんの吸血痕。
それを見て思った。陽雅さんは俺以外の人ともそういう事をしてる訳だし、お気に入りって言っても、ただの大勢の中の一人としか思ってないんだろうな。
胸がギュッと締め付けられる。
「…俺だけ見てくれればいいのに」
気づいたら、そう呟いていた。
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#y.n
コメント
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うわ、ついに来たか…「俺だけ見てくれればいいのに」って恭也くんの嫉妬がじんわり滲んでて、めちゃくちゃ刺さりました。吸血鬼やサーモみたいに能力の違う同居人がいる世界観、まだまだ謎が多くて続きが気になる。陽雅さんの能力って「ドル」なんだ…何を司ってるんだろう。あと零斗さんの「ありえねぇ」も気になる嫉妬の芽、早くちゃんと育ってほしい(笑)