さて、今日も見回りに行こう。『はぁ〜やっと少しずつ涼しくなってきたなぁ〜。』
今のところはまだ暑いけど、少しマシにはなってきた。
『ほんと、暑かったですよね。』
皆と話しながら歩く。
と、
『あぁ、困ったなぁ〜。どこへ行ったんだぁ?』
そこに、困っていそうなおばあさんがいた。
『何か、お困りでしょうか?』
島田さんが訊く。
『あのねぇ?財布を落としてしまったみたいで、見当たらなくて困っとるんじゃ。助けてくれんかのぉ?』
財布か。
早く見つけた方が良いだろう。
『孫が写った写真が入っておる、茶色で、こんな財布じゃあ。』
おばあさんが手で、大きさなどを表してくれる。
『失くされる頃あたりで、どこをを通ったかや、行ったお店などを教えていただけませんか?』
『そうじゃのぉ、え〜と、そうじゃ、あれじゃ!あのお店じゃ!』
あのお店…
手で、何かを表しているようだが、
何一つわからない…
『どんなお店ですか?』
僕も訊いてみる。
『いぬやじゃったか…』
いぬや?
『いぬ…もしかして、ペットショップでしょうか?』
いぬって、犬のことか。
『そんなじゃったかのぉ…きにしとらんかったのぉ。』
違うのかな?
『何か、買ったものはありますか?』
『売り切れてて、何も買ってこなかったのぉ。』
確かに、何も持っていなかった。
『何を買う予定だったのですか?』
『ジョンの餌じゃ。』
『ジ、ジョン?』
『そうじゃ、ジョンじゃ。』
ジョンって何だ?
『ジョンは、ペットだったりしますか?』
ペット?
ペットの名前ってことかな?
『ジョンはペットボトルじゃなくて、犬よ。』
おばあさんが笑った。
なるほど、犬か。
『わかりました。では、どこを通ったか教えていただけませんか?』
『そうじゃなぁ、確か…あっちをああ行って、こっちに曲がって、むこうを…どう行ったかな…あ、確かあっちじゃ。』
わからない…
あっちとかこっちとか言われてもなぁ…
『ちゃうちゃう、そっちじゃった!』
『そ、そうですか…』
皆、困っている。
『と、とりあえず探してみようぜ。』
そうするしかないな。
『なら、こっちは近くのペットショップを見てくるわ。』
皆と別れ、
手分けして探す。
が、
それらしきものは、なかなか見つからない。
そのまま、島田さんと合流した。
『こっちにはありませんでした。』
『こっちも、見当たらなかった。確か、あっちにホームセンターがあった。そこを見てみよう。』
次はお店の中を見てみる。
でも、ない。
『お忙しいところ申し訳ございません、茶色の財布を預かったりしてませんでしょうか?』
島田さんは、お店の店員さんに訊いている。
けど、
『申し訳ございませんが、現在そういったものは預かっておりません。』
見つからない。
『交番を見てみようか。』
交番、
この島には、交番はある。
でも、
『特徴と一致するものは、こちらにはございませんでした。』
なかった…
皆と合流する。
『こっちも、ないって…』
見つからず、
ここら辺は、見たはずだ。
でも、ない。
『・・・』
盗まれたのだろうか…
『その、失礼ではございますが、財布を家に置いてきているということはありませんでしょうか?』
家に?
『わからんのぉ、見てこよか。』
え、
ということで、見に行くことに…
歩いて少し、
一つの家に着いた。
おばあさんが、家の中に入っていく。
犬の鳴き声が聞こえる。
ジョン、かな?
しばらく待つ。
と、
出てきた。
『見つかったよぉ!なんとねぇ、テーブルの上にあったのよぉ!』
おばあさんは笑っていた。
『あ、ああ…』
無事に見つかったならよかった。
『それはよかったです。』
島田さんも、にっこりと笑っていた。
『皆さん探してくれて、どうもありがとうねぇ〜お金、これくらいでええかの?』
おばあさんが財布から、お金を取り出し、こちらに差し出した。
『いえ、私たちは剣士でして、人の安全を守ること、幸せにすることが仕事なので、気にしないでください。』
島田さんが戸惑いながら両手を振り、断る。
『なら、お菓子あるから食べていきな。コーヒーもあるよぉ。』
『お気遣いありがとうございます。ですが、お仕事中ですので、これで失礼させていただきますね。』
気遣いは嬉しいけど、今は仕事中だ。
財布は無事見つかったので、もう行こう。