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日本に住んでいる人間───ユウは、気がついたら真っ黒な棺の中にいた。何が何だか分からない状況下の中、火を吐く猫だか狸だか分からない生物と出会って初めに言われた言葉は「ギャーーーー!!なんでお前、もう起きているんだ!?」だったいやなんだお前はこっちのセリフだわ。
「お前、何者なんだ?すっげぇちっせーんだ ゾ!」
マジでなんだお前。失礼に失礼を重ねるとかすげぇなお前。
「…お前こそ誰?狸?」
「俺様は未来の大魔法士、グリム様なんだゾ!!」
「未来の…大魔法士ィ?誰が?」
「だーかーらー!俺様が!未来の!大魔道士になるんだゾ!!」
「うわうるさー…」
正直初めて会った人に対する言葉とかが悪すぎて第一印象普通に最悪だった。それからペストマスクをつけた変人に軽く怒られたり明らかここは異世界です。って言い切れるような説明をされスペキャモードになったりそして何よりこのペストマスクも初めて会った時は「え…貴方、本当に人間ですか?」とか言われた。マスク越しでも分かる疑問感たっぷりな顔で見下ろしてんじゃねぇよ不愉快だ。
◇◆◇◆
「ふむ…貴方、ほんっっとうに人間なんですよね?」
「はぁ…そうだと何度も言ってるじゃないですか…」
一体この会話を何回繰り返しただろうか。俺は、ペストマスクの頭に乗り揺られながら考えていた。
「それにしては…サイゴホンッ身長が低くないですか?」
「いや俺16歳でこの身長なので」
「あと俺の身長は14cmです」と言えばペストマスクは吹き出した。少し顔を下に俯かせているが俺は頭の上に乗っているため笑っているのがバレバレだ。髪の毛引っこ抜くぞ。
それから色々あり俺と魔獣…グリムとは2人で1人のNRCの生徒となりオンボロ寮で過ごすことになりそこの監督生にもなった。
そして半年も経ってないうちにオーバーブロット通称闇堕ちバーサーカー状態になる人が何人もいた。ハーツラビュル寮を初めとし、サバナクロー寮、オクタヴィネル寮、スカラビア寮、ポムフィオーレ寮の人達がオーバーブロットしたのだ。だが仲間達の協力もありオーバーブロットした人達を救い出し友人も増え、親睦も深めることができて俺は大変だったけど素直に嬉しかった。あのペストカラス野郎はクソだけど。
そして、今も俺は皆と楽しく暮らしている
◇◆◇◆
「グリム!!起きろーー!!」
「んん…安心しろ子分…俺様がアイツらから守ってやるんだゾぉ…むにゃ…」
「守るもクソもないよ!!いい加減…起きんかこのタヌキーーー!!!」
「ふなぁぁああああ!!?」
今日は慌ただしい朝から始まった。朝食を食べ、髪も整え、持ち物を素早く確認し、ゴースト達に挨拶をしてから寮を出る。
「じゃ、行ってくるね!」
ゴースト達は笑顔で「いってらっしゃーい」と手を振りながら言ったので自分も手を振りながらグリムの頭の上にぴょんと飛び乗り風で飛ばされないように耳をガッシリと掴んだ。
「む”っ子分!そんなに俺様の耳を引っ張ったら大事なツナパンがこぼれるんだゾ!」
「朝早く起きれなかった自分を恨め…グリム。」
「ふなぁ〜…」
◇◆◇◆
「っしゃ!ギリギリセーッフ!」
「おはよ、今日はギリギリだな監督生」
「はよ、ははっ準備時間がちょいと遅れてさ…」
1-Aに到着し息を整えていると顔にあるハートマークが特徴的なマブダチの1人エース・トラッポラが挨拶をしてきた。エースもエースで初めて会った時の印象は最悪。「グレートセブンも知らねぇ上になんだお前!ちっさwwww」と大爆笑され俺は体は小さいが自身の運動神経を生かし顎に見事なタックルをお見舞したことを覚えている。今までは我慢してきたものの、ここまでくるとさすがの俺でもキレる。エースは「いで!」と少し涙目でこちらを睨んでいるがガチギレしていないだけマシだと思って欲しい。
「なぁなぁ!俺今日の学食はさー」
「おーい!お前ら!」
「お、デュース!おはよ」
廊下から規則違反にならない程度に駆け足でこっちに来ているのはスペードマークが特徴なデュース・スペードだ。
「おはよう!監督生とグリム!」
「おはようなんだゾ〜」
「はよ、デュース」
こんなにも挨拶もしっかりできているデュース君だが、彼は自分で優等生と言いつつ見事な元ヤンなのである。とある事情でヤンキーから優等生になることを決めたらしい。だが簡単にヤンキーの時の癖が抜けることはなく友人がバカにされればオラついて 喧嘩腰になり自分達のことをマブダチと呼んでいる。ちなみにマブダチという呼び方は俺自身も気に入っている。
「確か今日の1時間目は魔法薬学だったよな」
「クルーウェル先生か…俺あの人苦手なんだよなぁ…」
「そうか?クルーウェル先生すげぇ優しいけど…」
「それは監督生限定だろ」
「え?」
そう。ここ、NRCに通っている生徒や先生の大半が監督生に激甘なのだ。ただツンデレ気質なヤツもいるため、監督生がそれに気づくことは無い。あと、こんなことを言っているが、エースやデュースも監督生に甘くなんならグリムも甘い。
「あ、もうそろそろでHR始まるな。監督生、こっちに来い」
「はーい」
差し出された手のひらの上に乗る。そして手は移動し、デュースの肩の上に俺はちょこんと添えられた。
「おー、やっぱり視点が高い方がいいな!」
「確かに、お前の身長だと色々苦労しそうだもんな」
「おぉ!すげぇ!グリムに持ち上げられないと見えなかったところもデュースの肩に乗れば見える!!」
自分の肩の上でキャッキャッとはしゃぐ監督生を見てデュースとグリムはほっこりしていたがエースはほっこりすると同時に悔しかった。なぜなら監督生を肩に乗せるのは当番制だからだ。1週間の内3:3でまず分け、残りの1日はジャンケンでという話になり、デュースはその監督生を肩に乗せられる貴重な1日を勝ち取ったのだ。だからエースは早く自分の番が来ないかと今か今かと待ちわびている。
◇◆◇◆
数時間が過ぎて3人と1匹は大食堂にやって来た。昼食の時間だ。エーデュースはこの昼食の時間がやってくるのが毎回楽しみで仕方がなかった。
「俺今日はパンの気分だから」
「奇遇だな、僕もパンの口なんだ」
「2人とも毎回それだよな」
「俺様はデラックスメンチカツサンドを取ってくるんだゾ〜!!」
「問題を起こしちゃダメだからなー」
大食堂で人気な食べ物、デラックスメンチカツサンドはすぐに品切れになってしまうことが多いのでグリムは急いでいたのだろう、姿が人混みの中へと消えて行った。
「監督生ー、お前はこれでいいか?」
「え?俺に聞くの?」
「だって監督生も食わなきゃだろ?」
「いやいやいや、エース達の好きな物頼んでいいんだよ?俺はそれを少し分けてもらう身なわけだし」
監督生は身長(サイズ)が小さいため、食べる物の大きさや量も考えなければならない。そんな中で一番適切な食べ物がパンだったという話だ。
「じゃ、俺はコーンスープ付きのサンドイッチセットで」
「それじゃあ僕はコンソメスープ付きのパン定食で」
「あーあと小皿1枚ください」
「悪いな…」
「監督生はボロボロこぼすからなー 」
「ウッ…」
「申し訳ねぇ…」と言いながら下に俯いた。
「エース…」
「いやいや冗談だって!じょーだん!」
「うぅ…でもこぼしてんのはマジの話じゃん…」
「マジの話だけど俺ら別に迷惑してるとかじゃねぇから!!」
「なら…よかった」
それから少し経った頃。俺はデュースに「席確保しててくれ!」と言われ空いているテーブルの上にそっと下ろされた。暇だなーと左右にユラユラと揺れていたらふと銀色が目立つ尾が視界に入った。
「この尻尾は…!」
そう呟いてバッと真横を見るとエース達よりも体がデカい獣耳男の後ろ姿が目に入る。ただその男の周りにも似たようなヤツらがいたが、全員俺には気づいていないらしい。誰にも気づかれていないというのが自身の悪戯心に火をつけ、男の尾に手を伸ばす…
「おい、」
「ぉわ!!」
微かに揺れる銀の尾の毛を片手に収まるくらいの量の束を作りキュッと握ると尾がぶんっと動き俺は衝撃で手を離してしまい男達の方のテーブルの上にべしゃっと落ちた。そして俺はテーブルの上に俺を落とした人物の名を呼んだ。
「ぁわ、じゃ、ジャック」
「なにしてんだ、監督生」
ジャック・ハウル。それがこの男の名前。俺の同級生でありオオカミ族の獣人だ。
「い、いやーあっはは、ごめん、ちょっとモフろうとした」
「はぁー…いきなり触られてビビったじゃねぇか」
「え、マジ?それは普通にごめんだわ」
全くの嘘である。ジャックは監督生の匂いを覚えているため小さかろうがなんだろうが席の後ろにいたのは気づいていた。これは彼なりの悪戯だ。マジかー…と思っている監督生の後ろからシシシッという特徴的な笑い声が聞こえた。
「ウチの可愛い後輩をよくも驚かせてくれたッスね監督生君」
「あ、ラギー先輩」
「さて、どうしてくれましょうか。レオナさん」
「そうだなぁ…」
シシシッと笑うのはラギー・ブッチ。ハイエナ族の獣人だ。そしてラギー先輩の問いにニヤニヤと笑みを浮かべる人物、サバナクロー寮の寮長、レオナ・キングスカラーがいた。