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「……バイオレットは、人形……?」
「君は、誰……?」
「あたしは……あたしは、菫、です……」
「そう……。スミレ……」
菫はなぜかとても哀しそうな顔をしていた。声には全く力が無かった。
彼女の手には、バイオレットのものと思われる、人形を操るための取っ手のような物があった。
でも、そんな事はどうでもよくて。
「人形……? 駄目だ……違う……! バイオレットは、バイオレットは……っ」
触れた髪は? 唇は?
可愛いと、愛しいと思ったのは、やっぱり腕の中にいる彼女。
頬を撫でる。冷たい、人形の感触。
それでも、やっぱり……
「……っ」
涙が出た。
崩壊でごまかしてた涙が。
崩壊を愛おしいと思う涙が。
人形でも構わない。
やっぱりバイオレットが好きで、好きで……。
きつく抱きしめると、バイオレットの体はぎしぎしと変な音を立てた。
漠然と、分かったことがある。
俺は絶望に襲われて。
壊れた俺は、狭い、狭い小窓の奥に踊る人形を見つけて。
人形は俺の逃げ場所になった。
彼女を好きでいる事で、俺は現実を忘れ、癒されていた。
でも結局、
自分はさらに崩れてしまって、絶望にはなんの変化も無かった。
ただ、いつの間にか、本当に彼女が愛しくて愛しくてたまらなくなっていて……
哀しい気持ちは、愛しく玩ばれる人形を作ってしまった。
哀玩人形