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文化祭当日。
校内は人だらけで、どこもかしこも騒がしい。
「……ローレンのクラス、どこだっけ」
休憩時間になった葛葉は、スマホを見ながら歩いていた。
「メイド喫茶って書いてたよな……?」
教室の前に着くと、でかでかと貼られたポスター。
【ようこそ♡メイド喫茶へ】
「……は?」
嫌な予感がして、中を覗く。
『いらっしゃいませ、ご主人様〜』
「……」
そこにいたのは。
赤髪で、スカートで、フリフリのエプロンで。
完璧にメイド服を着こなしたローレンだった。
「……おい」
『……あ』
ローレンは一瞬固まってから、にこっと笑う。
『いらっしゃいませ〜、ご主人様♡』
「やめろ」
『なんで?』
「なんでそんなノリノリなんだよ」
『クラスで決まったから』
「聞いてねぇ」
『言ってないもん』
「だろうな」
葛葉は腕を組む。
「……その格好、どういうつもりだよ」
『どういうって、メイド』
「それは見りゃ分かる」
『似合ってるって言われた』
「……誰に」
『クラスのやつ』
「誰だよ」
『女子とか』
「……は?」
ローレンはトレイを持ちながら、普通に接客している。
『お席こちらです〜』
「お前、楽しそうだな」
『まぁね』
「……」
葛葉はムッとする。
「俺には見せたことねぇのに」
『何を』
「そういう格好」
『文化祭だから』
「理由になってねぇ」
ローレンは少し不思議そうに首を傾げる。
『……くっさん、もしかして』
「何」
『嫉妬してる?』
「してねぇ」
『顔に書いてある』
「書いてねぇ」
『めちゃくちゃ不機嫌』
「うるせぇ」
ローレンはくすっと笑う。
『じゃあ、特別サービス』
「は?」
ローレンは葛葉の前に来て、小さく頭を下げる。
『ご主人様』
『ローレンメイドが』
『あなた専用で』
『お給仕します♡』
「……調子乗んな」
『嫌?』
「……」
『他の人にはやらないけど』
葛葉は目を逸らす。
「……それ、俺にだけな」
『え』
「その態度も、その声も」
『独占欲すご』
「彼氏だろ」
『……そうだった』
ローレンは少し照れた顔で笑う。
『じゃあ』
『くっさん専用メイド』
「……それでいい」
『休憩終わったら』
『一緒に帰ろ』
「当たり前だろ」
『じゃあ、今は』
『ちゃんと働く』
「……他のやつに愛想振りまくな」
『くっさん来たら』
『一番最初に』
『笑うから』
「……それなら許す」
ローレンはトレイを持って、客の方へ戻る。
『いらっしゃいませ〜』
葛葉は教室の外で、小さくため息をついた。
「……ほんと、ずるい」
メイド服の裾が揺れるたびに、視線が離れなかった。