テラーノベル
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澄み切った青空が広がる朝。
高度育成高等学校のグラウンドには、
各クラスの生徒たちが続々と集まっていた。
ついに、体育祭当日――。
ひなは体操服の裾をぎゅっと握りしめながら、
胸の高鳴りを抑えきれずにいた。
「緊張する……」
小さく呟いたその瞬間。
「ひな〜!」
明るい声とともに、
軽井沢恵 が駆け寄ってきた。
「今日は絶対楽しもうね!」
「うん……!」
その隣では桔梗ちゃんも優しく微笑んでいる。
「ひなちゃんなら大丈夫だよ」
二人の言葉に、
ひなの肩の力が少し抜けた。
開会式のあと、
Dクラスの生徒たちはテントの下に集まっていた。
平田洋介 がみんなを見渡しながら言う。
「勝ち負けも大事だけど、今日はクラス全員で力を合わせよう」
その言葉に、
クラスメイトたちから力強い返事が上がった。
以前のひななら、
この輪の中にいることさえ難しかったかもしれない。
でも今は違う。
ここには、自分の居場所がある。
最初の競技まで少し時間があり、
ひなは一人でグラウンドの端に立っていた。
その時、
静かな足音が近づいてくる。
「緊張しているのか」
振り向くと、
綾小路清隆 が立っていた。
「うん……少しだけ」
ひなが正直に答えると、
彼はいつもの落ち着いた表情で言った。
「結果は気にするな」
「え?」
「お前がここに立っているだけで、十分意味がある」
その言葉に、
ひなの胸がじんわりと温かくなる。
「……ありがとう」
彼は少しだけ視線を和らげた。
「それに」
「うん?」
「借り物競走では、たぶん面白いことになる」
意味深なその言葉に、
ひなの心臓がどきりと跳ねた。
「綾小路くん……」
名前を呼ぶと、
彼はひなの頭にそっと手を置いた。
「困ったら、俺を見ろ」
その一言だけで、
胸の中の不安がすっと消えていく。
「……うん!」
ひなはしっかりと頷いた。
遠くから恵ちゃんの声が響く。
「ひなー! 最初の競技、そろそろ始まるよー!」
「今行く!」
走り出す前に、
ひなはもう一度綾小路くんを見上げた。
「頑張ってくるね」
「ああ。見ている」
その短い言葉が、
何よりの力になった。
体育祭の朝。
クラスの仲間たちの声援。
大切な友達の笑顔。
そして、静かに背中を押してくれる大切な人。
今日という一日は、
きっと忘れられない思い出になる。
ひなの青春は、
今、まぶしい秋空の下で大きく走り出そうとしていた。
コメント
1件
ああ、この第35話、すごく良いな……。体育祭当日の朝、緊張がひしひしと伝わってくるけど、恵ちゃんや桔梗ちゃんの「大丈夫だよ」って一言でほぐれて、そこにさらに綾小路くんが「結果は気にするな」って来るのが本当に効く。彼の「お前がここに立っているだけで十分意味がある」とか「困ったら俺を見ろ」って、もう、それだけで一気に心の拠り所になる感じがする。ひなが「自分の居場所がある」って実感できたのが、このエピソード最大の勝利だと思う。青春の全力疾走を、しっかり応援したくなる一話でした。
夜久瀬
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