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しめさば
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花月夜れん
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榎本くもり
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ここから先は、少しだけ私達の話をしてもいいかな?
物語の中で語られなかった二人の恋の始まり――。
ーーー
水がどんどん私の中に入ってくる。
あぁ、私――。
誰かの声がする。
「一番最初に君が目にした人。その人に君の口に口付けをしてもらうんだよ。そしてその相手を愛し、相手からも愛されていれば君は元の世界に戻れる――」
「何よ、それーーー?」
「あ、起きた。じゃあ、いってらっしゃーい」
軽い感じで、私は世界を渡らされた。
そう、たしか私、川で溺れてる子を助けようとして……。あの子を川岸の友達に託したところで――
ドプンッ
え、また水?!
なんで? 手足が上手く動かない。助けて、誰か誰かぁぁぁ。
水が絡みついてくるみたい。私、ここで死んでしまうのかな。まだ初恋もしたことないのに。死にたくない。死にたくないよぉ!
無情に押し寄せる水が私の気力を削いでいく。
あぁ、恋ぐらいしてみたかったな。
諦めて、力を抜こうとしたその時だった。ひょいと、大きな何かにすくいあげられた。
「にゃ……にゃぁぁん(助けてもらってありがとうございます)」
ん? 声が変だ。
「にゃぁぁ(あの、私)」
何でにゃあしか喋られないの? それに、落ち着いてよく見ると、目の前には……金色の長い髪、青色の瞳をした巨人の男がいた。
「にゃぁぁぁ? にゃぁぁぁぁ? (何処ここ? 何これ?)」
「にゃあにゃあうるさいやつだ」
そう言って、巨人の男は私の首筋を掴んで持ち運んだ。首の皮!? と思ったけど何故か、とても心地よかった。
ーーー
ポイッと大きなベッドの上に放り投げられる。巨人はドスドスと、何処かへと歩いて行ってしまった。
私は自分の手足を確認すると、真っ白な毛並みと肉球、爪がちょこっとだけ見えた。何これ。
ベッドの横にちょうど姿見があったので、見える位置に移動する。二足歩行を試そうとしたが、出来なくて恥ずかしいがハイハイのように四つん這いで移動した。むしろ四足歩行が普通に出来てしまった。
「にゃ、にゃ、にゃぁぁぁぁぁぁぁ?!」
なるほど、納得した。どこからどう見ても、……猫だ! あ、さっきは確認出来なかったけど眼の色は満月みたいな黄色だった。
ふー、落ち着け私、そう私の名前は前口莉愛21歳の日本人大学生の女。今年卒業予定! よし、そうだ。
で、どうして人間の私が可愛い白色の子猫になってるのでしょうか? 誰か、教えてプリーズ。
ガチャリ
扉が開く音がした。
「こら、勝手に動いて。あー、シーツが濡れた……」
巨人の男が、嫌そうな顔でこちらにドスンドスンと近づいてきた。私、怒らせた?
怖くなって、ベッドの上を走り抜け、窓に向かう。
「こら、勝手に、あぁぁぁ、もう!」
むんずと捕まり、また首根っこを掴まれる。
あぁん、力が入らない。
身体がふにゃふにゃとなって、私は動けなくなった。
「まったく、手間だな」
そう言って、巨人はぷらぷらとつまみ上げた私を何処かへと連れていった。
ーーー
「にゃぁぁぁぁ」
こわい、こわい、こわいよー!水がこわいぃぃ。
私は必死に彼の手に爪をたてる。
「こら、いてぇぇっ、暴れるなぁ」
私はお湯でガシガシと洗われる。ここはどうやらお風呂のようだ。
あぁ、他人にしかも男の人に裸を見られたあげく、隅々まで洗われるなんて、もうお嫁にいけないよー。猫だけど、猫だけどね!!
「に゛ゃぁぁぁぁ」
哀しみの叫びがお風呂場に響き渡った。
もふもふもふ
フワフワのタオルに包まれて、水分をしっかり拭き取ってもらえた。
「よし、出来た」
ふわり
キラキラ輝く艶々の毛並みになりました。わー、ステキ! 光り輝く白銀の雪みたい!
「オレの使い魔にするか、名前は……」
名前はあります! 莉愛です!
「よし、ストームブラスト」
「に゛ゃぁぁぁぁ!」
「いて、いてぇ! 気にくわないのか? ったく、ならネコ、キサマはネコだ!」
「……」
何、この壊滅的ネーミングセンス。
「おい、ネコ」
「――――」
「おい、ネコ!」
「――――」
誰が返事なんてしてやるか!
「あー、じゃあシロ!」
んー、変な方向に行く前に妥協しておこうかな。
「にゃぁ」
「お、シロでいいのか、じゃあシロさっそく魔法の実験の手伝いをしろ」
え、使い魔ってそんなことしないといけないの?
ぐぇ
また私は首根っこを捕まれた。自分で歩けますよー!!!!
ーーー
「にゃぁ……」
これは何、卵のくさったような匂い。蛍光グリーンなドロドロ。魔女の絵でみるような釜。
「すごいだろ! これは人間を動物にする薬だ! もうすぐ完成する」
「にゃぁ!?」
「そうだ! すごいだろう」
本当ならすごい! 凄いのだけど、逆なら良かったのにぃ!!
「でだ、これを試したいんだが、実験に協力してくれる人間をオレは知らん。そういうことを頼める友や知り合い等いないからな!」
「――――」
もしかして、バカ? 誰が進んで動物になりたいんだろう。
「そこで、拾ってきたお前だ! シロ」
「にゃぁ?!」
「そう、手伝え!」
「にゃぁ?!」
「いいかいいか、そうか! ありがとう!」
まって、私承諾なんてしていません! この蛍光色のドロドロを、食べさせられたりするの?!
「大丈夫だ! お前が無事なら、今度は自分の体で試すからな!」
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁ(いや、それ、全然私が大丈夫じゃなーーーーい!)」
スプーンになみなみとドロドロを掬い上げ、彼は私の口にズイズイと近づける。あれ、蛍光グリーンが蛍光イエローに変わった! どうでもいいけれど!!
「口をあけろー」
「うぐぎぐぐぐぅぅ」
必死で口を閉じるが、力でかなうはずもなく私はドロドロを口に流された。
まずいーーーー!
ドクン
心臓が大きく拍動した。
身体が、ミシミシと悲鳴をあげている。成長に身体がついていけなかったあの時の痛みをまた味わうことになるとは……。
「にゃ、ぁ、ぁぁぁぁぁぁ」
少しして痛みが止まった。あれ、視界が高くなってる。というか、巨人だった彼が普通の男の人サイズになっている。何で……?
私を見ていた彼は、何故か顔が真っ赤で目を見開いている。
「シシシシロ?」
口をパクパクさせながら喋るから変になってますよ。
「メスだったのか!」
は? どういう――
自分の身体を見る。あれ、白銀の毛艶は? 可愛い肉球は? 小さな爪は?
全てが肌色に変わり、私は人間に戻った。
「にゃぁぁぁぁっぁぁぁ!」
猫の鳴き声を残して。
コメント
1件
**はる。@テラノベル** わっ、この外伝めっちゃ面白かった!😆 人間→子猫→まさかの人間に戻るって展開、ギャップ萌えすぎる。「にゃぁ」しか喋れないもどかしさと、最後の「メスだったのか!」で赤面する巨人のギャップにやられたわ。薬の実験台にされるシーン、必死に口閉じてる莉愛(猫)が可愛すぎて笑った。『初恋もしたことないのに』って諦めかけたところから始まる恋のフラグ、本編が楽しみすぎる🔥