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花月夜れん
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榎本くもり
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「これを着ろ!」
バサッと彼は自分の服を脱ぎ私に被せた。
ブカブカだ。
なんだか違和感を感じて頭とお尻に手をやると、耳と尻尾は猫のままだった。
さらっと流れる髪の毛の色も、白銀だ。
猫人間? なんちゃってコスプレみたい。
「にゃぁ」
言葉も喋れないし……。
「さて、反対の事象は確認できたな。よし、シロもう一度お前が飲め!獣人から動物になるかの実験だ!」
「シャァァァァァァァ(誰が飲むかぁぁぁ)」
「む、反抗する気か!」
そう言う彼はずっと明後日の方向を向いている。何でこっちを見ないの?
「仕方がない、ならばオレが」
スプーンを構えて釜に突っ込みドロドロを掬い上げた。
「いざ!」
『一番最初に君が目にした人にキスしてもらうんだよ。そしてその相手に愛されていれば君は元の世界に戻れる――』
私は思い出す。人、人って! まさか動物になったら帰れない?
まってぇぁぁぁぁ!
ごくり
飲んじゃったー!
彼が目をカッと見開いた。さっきの私の様にあの成長痛みたいな痛みに襲われているのだろうか。
「……まずい」
うん、不味かった。あれ、でも彼は全く変わっていない。
「……失敗だったか」
とぼとぼと哀しげに彼はドアの外へと歩いて行った。
おーい、何か忘れてませんかー!!
ーーー
カチャリ
ドアを開く音がした。だいぶ時間がたったけれど、やっと帰ってきたのかな?
「にゃぁぁぁ(おかえり)」
彼がまた目を見開く。あまり見開きすぎると、目落ちちゃいますよ?
「シロ、お前がやったのか?」
「にゃ」
そう、あまりに汚い部屋だったので、手持ち無沙汰だった私はそこそこに掃除をしてあげた。
「あの薬は、動物の知能まで引き上げるのか……」
いえ、私、もともと人間ですから。これくらいできるのですけれど。
「にゃぁぁ」
「何ぃ!」
綺麗にしたダイニングテーブルに、目玉焼きと焼いたベーコンをお皿に盛り付けて並べておいた。あとは、あのパンらしきものと一緒に食べればいいよね?
キッチンと思われる場所も掃除して、よく見ると火さえあれば使えそうだったので、さっきの釜の火を拝借してなんとかそれっぽくしておいた。料理の材料は沢山置いてあったから、匂いを嗅いで大丈夫そうなものをチョイス。
危険そうなものはお外に埋めておきました!
「にゃぁぁにゃぁぁ」
「なんだ、この高性能猫型獣人は!」
あ、青い何かと、ちょっとおしい感じ。
「にゃぁーん」
「食べろと言うのか」
こくこくと頷くと、彼はテーブルにつき、もくもくと食べ始めた。
私は味見でいっぱい食べたので彼が食べ終わるのをじっと見る。
この人に愛されて、キスをして貰わないと帰れないのかぁ。
金色のボサボサした髪。前髪で片方の綺麗なサファイヤブルーの目が隠れてしまっている。
髪をもうちょっとなんとかしたら、カッコいいかも。
とりあえず、私は彼を餌付けしてみることにした。
「美味しかった」
「にゃぁぁ」
パタパタと、お皿を片付けて私は洗い物に取りかかる。
あっちの世界では、蛇口を捻れば簡単に水がでたのに。うーん。また外から汲んでこないとかな。
スッと、彼が近づいてくると私の後ろに立ち囁くように言った。
「水の精霊よ」
チャプン
洗い場に水がたまる。チャプチャプと水が揺れて、ザァッと流れた。お皿が綺麗になってる。
小さな水色の小人さんが現れてお皿を洗ってくれたみたいに見えた!
「にゃ?」
今のは何? 魔法? 聞けないのがもどかしい。
「魔法を見るのは初めてか?」
目を合わせずに彼は聞いてくる。魔法があるの? ここってやっぱりファンタジーな世界?
私、いったい何処に連れてこられたんだろう。
魔法を見て驚いた私の尻尾がパタパタと揺れていた。
コンコンコン
ドアを叩く音がする。誰がきたんだろう。
「ペンパパー! 開けてー!」
「少し待っていろ」
彼が声のする場所に向かうみたい。
えっと、ペンパパ? 名前がペンさん? そしてパパなの? それは困るわ。私、不倫とか嫌なんですけど。
後ろから気がつかれないようにそっと後をつけた。
後をつけたら、扉が沢山ある部屋に着いた。そのうちの一つの扉が開いている。
「こんにちは! ペンパパ。これ、お母さんがいつものって」
「む、ありがとう。いつも言ってるが俺はペンドラゴンだ。ペンパパではない。まだ俺は結婚すらしていないのに何故パパと呼ばれなければならない」
「ペンドラゴンパパじゃ長すぎるよ。それに僕達の魔法の師匠なんだからパパでいいでしょ!」
なるほど、ペンドラゴンさんっていうのね。たしかにちょっと長いし、ペンさんで覚えよう。
そして、パパは師匠だから尊敬の意味でパパをつけていたのかぁ。良かった、不倫は免れそう。でも、愛かぁ。あの人と、果たして愛し合えることなんてあるのかしら――。
「あーっっ!」
何、何、何?
「猫がいる!」
隠れてみていたのに、くるりんくるりんと自由に動く尻尾がどうやらはみ出してしまったようだ。
「にゃぁぁ」
「シロ、中にもどってい――」
「ねこさんー! ってあぁぁぁぁぁぁ?! ペンパパが! 綺麗なお姉さんを連れ込んでる!!」
はぁぁと、彼は大きなため息をついた。
にゃ、にゃぁんって、ダメ? 私は招き猫のように手をあげた。
ーーー
「あら、本当! ペンさんったらスミにおけないねー!」
「違う! コイツは拾ってきた猫で。あと俺の名前は――」
「猫獣人を拾ってきたのかい」
「いや、だから」
「お嬢ちゃん、名前は言えるかい?」
「にゃぁにゃぁにゃぁぁ」
「おやまぁ」
喋れないんですよ。本当。困った困った。
あれから、男の子が帰ったと思ったらすぐにお母さん? らしき人を連れてきた。
「喋られないんじゃ、不便ね。ペンさん、喋る薬、作ってやんなよ!」
「だから、コイツは――」
「私はニーナ。さっきのルシフの母親だよ。よろしくね、猫耳のお嬢ちゃん」
「にゃぁぁ(よろしくお願いします)」
「可愛いねー。でも服は、それじゃあおかしいだろう、ペンさん!」
「あ、あぁ、これでいくつかお願い出来るか」
そう言って、彼は何かをチャリチャリと渡していた。
お金……かな?
「それじゃあ、見繕ってくるね」
そう言いながら、彼女はもときた道を戻っていった。
「ふむ、確かに喋れないのは意志疎通しにくいか。よし、たしか使い魔を喋らせる薬があったはず。どこだったかな……」
バタバタと、あの釜のある部屋へとペンさんは歩いていった。
うーん、喋る事が出来れば便利ではあるけれど。
蛍光色のどろどろを思い出した。今度はどんなのを飲まされるんだろう。
コメント
1件
わあ〜!!もうめっちゃ可愛いエピソードだった!!😭💕 シロちゃん(主人公)が掃除して料理作っちゃうとことか、猫耳&尻尾のままブカブカ服着てる姿とか想像しただけで悶える!!!「高性能猫型獣人」てペンさんのツッコミもウケたw ルシフとニーナ登場で一気に賑やかになって、ペンパパ呼びの謎も解決してスッキリ!でもまだ帰るのに「愛されキス」が必要って条件が残ってるのが気になる〜!次どうなるんだろ?早く続き読みたいよー!!🌸✨