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「……それにしてもあんた、空飛べるんだな?」
「空が飛べるというよりは、大気中の魔素を操り固形物という形で扱えるというだけです。」
「私は馬鹿だからわっかんないけど、それ多分すごいことだよね?」
「そうですかね?僕からすれば当たり前なんですけど。」
「はぁ……。なんにせよあとは任せてもいい?」
「はい。実のところここにはあなたが辿り着く前にはいたのですが、情報が無く皆さんの攻防を見させていただきました。」
「先にいたなら私の無茶見る前に止めてよ!?」
「行動派なのは初対面の時にはっきりしていましたが、まさかここまで猪突猛進する子だとは……。」
「うっさいうっさい!!」
そういい彼の腕の中で大暴れする。
「や、やめてください!暴れないでください!久しぶりに本格的に動くので貧弱なんです。」
「ならとっとと私を降ろしてワイバーン片づけてよ!」
「い、いってきますから……。」
シリルを降ろした後彼は再び空を登り空中で制止する。そして腰に携えた剣を抜くと横に軽く振る。瞬間、ワイバーンはきれいに真っ二つになり光の泡になり消えていく。
「い、今のは……。」
「……。うん。やっぱりそうだね。この子達は生まれたばかりのワイバーンたちだ。彼ら自身に属性はなく、ワイバーンの中でも一番下の弱い個体だね。これなら長らく振るっていない僕のお粗末な剣技でも倒せるや。」
「か、彼は……。」
指揮をしていたガリアスは突如現れた男を見るや否や一つの結論を導き出していた。
今回の作戦には確かにシルバー以下の冒険者しか集められなかったが姿を消した伝説の人物『ダイヤモンド』の称号を持つ最恐の冒険者と言われているアズキという人物がこの街に滞在していることは前から分かっていた。しかし、彼はこの騒動にすら関与はしないと勝手ながらに考えていたのだ。理由は明白で、これ以前にも何度か危機に瀕したことがあったのだが、その時ですら彼は姿を現さなかった。本当に彼は冒険者であることをやめたと思っていたから、今回もそうだと勝手に決めつけていた。だが、事は大きく変わり彼が初めて動いた……。その動機がなんなのかは不明だが恐らく最速で『ミスリル』の称号を獲得した彼女、シリルが関係しているのだろう。
そう思案していると助けられたシリルが近づいてきて彼に声をかける。
「あの人本当に強いんですねぇ……。」
「……彼はもしや?」
「みんなが伝説の人って呼んでるその人だよ。この件が終わったら私とタッグを組んでもらう予定なんだ。」
「はぁ!?」
とんでもない事実を聞かされたと同時に空ではワイバーンがきれいさっぱり消え去っていた。そしてゆっくりと彼は空から降りてきて二人の元に歩く。
「僕のお粗末な剣技でも倒せて安心したよ。」
そういい優しく微笑む彼の素顔を始めてみたが見た目は完全に美青年で紺色の髪に蒼い瞳中世的な顔立ちで、彼が本当にあの伝説のダイヤモンドなのか疑いたくなった。
「あ、あなたさまが本物の……。」
「う、うん……。みんなから煙たがられてるアズキです……。」
「…聞きたいことが山ほどあるから俺のギルドに来てくれないか?」
「わ、分かりました。」
ファストリア防衛戦は彼の登場により一瞬で終わった。その後の処理は別のギルドに任せてガリアス達は一足先に街にと戻る。
「では、早速で悪いがシリル…話を聞かせてもらおう。 」
「話を聞かせてもらうって言われても…さっきの通りだからさ。」
「お前がアズキさんと組むのはいいんだが、その経緯を知りたいんだって。」
「それも別に大した話じゃないよ?私がお金欲しいから高難易度の依頼をこなしたいんだけど、それには二人以上という制限があって、その相方を探してたら暇そうな人がいて声掛けたってだけだからさ。」
「それに対してアズキさんは承認したのか?」
「半ば強制的にではありますけど…そうしないとこの子駄々こねそうなので……。」
「私がガキだって言いたいの!?」
「う、うん。」
「お前コノヤロウ…!」
「仮に二人が組んだとしてそれが街中にバレたら大変なことになるぞ!?」
「何がどう大変なの?」
「街中での戦力図がひっくり返るレベルだ。」
「……僕、そんな評価される程の人物じゃないよ?」
「いいかよく聞け二人共。まず、この街に限らず今の世の中ギルドが無数に存在しているが、そのどれもが街の中での発言力を気にしている。発言力はそのままそのギルドの規模感を伝えることになるからだ。」
「まぁ、それは何となくわかるよ?」
「街はそういった大規模ギルド達によって平和が保たれてるのだが、裏を返せば規模の小さなギルドは言いなりになるしかないわけだ。」
「大規模ギルドに匹敵する力なんてそう簡単には手に入らないからね。」
「しかし、それをひっくり返せる方法が幾つかある。一つは大規模ギルドから人員を中抜きすることだ。人数の多さがそのまま発言力という訳ではなく、あくまで実力が基盤でそこに人数が乗ってるというイメージでいいだろう。」
「じゃあ例えばギルドとしての人数が十何人でも団員がみんな『ミスリル』なら発言力は大きいくなるってことよね?」
「その通り。なので中抜きという手段は悪くない。もちろん成功率は低いがな。で、もう一つひっくり返せる方法が無所属を強くする事だ。」
「ここに来て無所属の存在が出るの?」
「無所属は小規模ギルドよりも発言力がなく、いわゆる何でも屋と化してる。しかし、そんな彼らが突然大きな戦果を持ってきたらことは大きく変わる。この界隈は言ってしまえば実力主義のためその人の強さがそのまま発言力にもなる。無所属がそういった成果を持ってきたらそれを棚に上げて弱小ギルドも発言力を得るんだよ。」
「小さなギルドが発言力を得る理由が僕はまだ見えてこないんですが……」
「規模の大きいギルドにはさっき話したとおり実力者がそれなりに存在する。逆に小さなギルドはそういった人材をあまり持ってない。無所属に関してはその土俵にすら立てないのだが、そんな無所属が大規模ギルドを差し置いて成果を出したら大規模ギルドとしてのメンツが崩れる。バックが手厚いはずなのに、フリーの冒険者に先を越されたらギルドの意味が無くなるわけで、その信用は大規模ギルドの方がダメージは大きい。それを利用して小さなギルドも口撃を開始し、ギルドの縮小を図り、溢れた実力者を自分のギルドに匿うって策だ。」
「そういった面で発言力を得るわけか…。」
「てことは何?私がアズキさんと組んだらその勢力図が変わってくるってことなの?」
「大規模ギルドVS小規模ギルドVSシリル&アズキって構図になるな。そうなるとアズキさんの存在感が大規模ギルド以上に目立つ。」
「ま、仮にも『ダイヤモンド』の称号を持つ冒険者だしねぇ。」
「さらに驚異的な速さで『ミスリル』に上がったシリルとなると、注目度は他の追随を許さないほどになるだろう。俺はそこを危惧してる。」
「でもさ?私らが頭角を現したとしてそれがどうして危険になるの?別に一個人だから実力あっても数には勝てないよ?」
「……。確かにそうかもしれないけど、ここでの問題は『僕らが何かする』ではなく、『僕等をめぐって何かが起こる』ということだよ。」
「はぇ?」
「さっき話した小規模ギルドの話は覚えてるな?」
「それはもちろん。」
「彼らは戦力に乏しいわけで、楽に且つローリスクで強い人員の確保をしたいわけだ。そんな時にお前らが出てきたらどうなる?」
「どうなるの?」
「無所属のお前らは両ギルドからすればただの景品なんだよ。お前さんも体感してる通り無所属は金がとにかく入らない。しかしギルドに入ればバックアップもしてくれる上に受けられる依頼も大きく増える。両者ともに損はしない関係になるんだよ。で、今回その景品になる君らはとんでもない実力者だからどちらに加入しても戦力図は大きく変わるし、それによって内紛が起きるのは目に見えてる。だから困るんだよ二人が組まれると。」
「……じゃあさ、私らがギルド作ればいいじゃん。」
「え?」
「だって、私らが野放しだからこうやって考えることになるんでしょ?ならさ、そもそもの問題である私らがギルドを作れば土俵は同じになるわけじゃん?ギルドができれば大規模ギルドと小規模ギルドの枠に私らも入るだけ。第三勢力じゃなくて有象無象の小規模ギルドの一員になるんだから、勢力図は変わらず大規模VS小規模ギルドの構図のままでしょ?」
「……まぁ、確かにその通りだな。しかし一つ問題がある。」
「それは?」
「ギルドとして認めてもらうには最低でも後二人は人員を確保しないといけないんだ。僕らに着いてくる人員はそう簡単には見つからないからその案は厳しいと思う……。」
「……いや、その案通してやる。」
「本当にできるの?がリアスさん?」
「あぁ。新設ギルドを作るのに協力してやる。俺としても内紛は避けたいからな。」
「それで?人数増やすために何するの?」
「俺からの依頼で奴隷救出をやってもらいたい。」
「これまた面倒くさそうな……。」