テラーノベル
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「ここは何だ。いやそんなことより。俺のカツ丼はどこへ消えたんだ」
と、望という名の男は叫ぶ。さっき『デデスト候』と名乗って望を下郎呼ばわりしたやつは、目の前で玉座のような立派な椅子に腰かけていた。でっぷり太って、ほほの肉がたるんでいる。王冠というほどのものはないが、明らかにこの世界の権力者なのだということが分かる、黄色と赤を基調にした豪奢な衣装をまとっている。望は立ち上がり、まだわめいている。
「御前であるぞ。無礼であろう」
「無礼もホーリーグレイルもあるか! 俺のカツ丼返しやがれこのデブ!」
そこで横から口を挟んだ者がいた。デデスト候の斜め後方にいた。女だ。
「候よ。呼び出したばかりの異世界人が混乱するは無理からぬこと。話を焦るべきではない」
その女は床に座っている。その足の片方は、奇妙なことに、巨大な鎖のようなものに繋がれていた。罪人などを拘束している、というのにしてもあまりにも大仰でありすぎ、ぱっと見た感じに違和感がある。彼女の身体の大きさなどからして、異質である。女は衣服をまとっているが、それが高貴な装束なのか、それとも粗末な衣装なのかということすら、いまの望の目からするとよく分からない。女自身も、若いようにも、そうでないようにも見える。謎である。
「異世界人、だと。俺はここでは異世界人だって言うのか。ここは、地球ではない異世界だと?」
「そうだ」
望とデデスト候の会話。
「ここはアルティメイアと呼ばれる世界。貴様ごときのような下郎の種族が、本来身一つで訪れることを許されるべき場所ではない。……テトラ、とりあえず、やれ。ステータス開示だ」
テトラと呼ばれたのは最前からそこにいる、巨大な鎖に繋がれた女であった。
「任せよ。ステータスウィンドウ・オープン」
すると、望の頭の上に半透明の画面のようなものが立ち上がった。
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■ステータス・ウィンドウ
名前:オゾン・バラーダ(原田望)
種族:人間
出身世界:地球
職業:無職
レベル:1
【基本能力値】
体力 (HP): 8/ 17
魔力 (MP): 0 /0
筋力: 7
耐久: 9
敏捷: 4
知力: 10
幸運: 2
【スキル】
ユニークスキル《ペコペコ》: 腹が減る。
《料理 Lv.1》: 初歩的な家庭料理が作れる。
【耐性一覧】
飢餓耐性
【称号】
なし
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それを見たデデストが呆れた。
「なんだこれは。《ペコペコ》? 腹が減る、だと? テトラ、もう少しましな人間を呼び出せんかったのか」
「その者は強い感情を胸に抱いていた。余に分かったことはそれだけだ。そうした人間を選ぶように言ったのは候、そなたであろうが」
「それはそうだがな。これでは、闘技場の見世物にするにも足らぬ。やむを得ん。こいつは餌に回すとするか」
デデストは玉座のような椅子から立ち上がり、望に背を向けて、行ってしまった。椅子の奥の方に扉があった。その向こうがどうなっているのかまでは望には分からない。望はテトラと一緒に空間に取り残される。鎖が冷たく輝いている。
「おい、そこのあんた。俺はこれからどうなるんだ。飯は食わせてもらえないのか」
「お前のための飯は用意されないだろうな、オゾン。むしろ、お前が飯になるんだ。これから」
「俺はオゾンじゃなくてノゾムだってのはこの際いいとして、俺が飯!? 何の!?」
「その日になれば分かる」
テトラも黙った。どこからともなく兵士のような姿の人間が二名現れて、オゾン、立て、と言う。望は……いや、この世界でオゾンと呼ばれることになった人間は、おとなしくそれに従っていき。そして、鉄の格子がはまった牢屋の中に、放り込まれた。
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