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塹壕を抜け、戦場の中心に足を踏み入れると、空気が一変した。硝煙と魔力の匂い、血の生臭さが鼻を突き、遠くで兵士たちの叫び声と金属のぶつかる音が耳を刺す。
前方に悪魔の姿が見えた。胸の奥が突然締め付けられる。
「…僕は…やらなきゃいけないのか…?」
吹っ切れはずの、心の中の迷いが渦巻く。剣を握る手がわずかに震んだ。
悪魔はゆっくりとこちらに目を向け、獣のような声で咆哮した。サリエルと同じ悪魔…!
罪悪感が胸を締め付け、戦意が揺らぐ。
だが、戦場に立つ仲間たちは必死で魔物と戦っている。逃げれば仲間を守れない。
少年は深呼吸をし、歯を食いしばる。
「…でも、進まなきゃ…!」
剣を振りかざす。悪魔も応じるように爪を振るう。剣と爪がぶつかるたび、火花が飛び、衝撃が肩や腕に突き刺さる。
一瞬、悪魔の顔に幼い笑みのようなものが見えた気がした。
「…サリエル…」
心の中で名前を呼びながら、少年は葛藤を抱えつつも攻撃を続ける。 攻撃をかわすたび、悪魔はくるりと旋回し、まるで遊ぶように挑発する。
「やめろ…!僕は…!」
叫びたい気持ちを抑え、剣を振るう手に力を込める。
心の奥で、サリエルの言葉が響いた。
「あなたの言う『正義』は、時に人を縛る鎖になる。誰を守りたいのか、その心を見失うな。」
その瞬間、覚悟が胸に芽生える。罪悪感と恐怖を抱えながらも、目の前の悪魔を倒さなければならない現実。
少年は深く息を吸い、剣を一閃。悪魔の攻撃を受け止めながら、冷静に反撃を決めた。
悪魔は崩れ落ちる寸前に、低く唸り声をあげる。
その瞳の奥に、一瞬だけ人間らしい悲しみが宿った気がした。
「…すまない…」
少年は小さくつぶやき、剣を下ろす。だが後悔はすぐには消えない。
戦場はまだ終わらない。遠くで兵士たちの叫び声が響き、空にはミカリスの白い羽がかすかに揺れていた。
少年は息を整え、胸に誓った。
どんなに辛くても、迷っても、前に進む。仲間のために、そして…サリエルの言葉を胸に。
剣を握り直し、再び前線へ踏み出す足に力を込める。戦場の夜はまだ深く、敵も味方も、誰一人として気を抜ける者はいなかった。