テラーノベル
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合わせたその目は蕩けるように甘い色を宿しており、どう考えても仲間に向ける視線ではない。
これは恋人の俺に向けるものだ。
「は、はやと…?」
嫌な予感がする。
楽屋とか事務所とか仕事が絡む場所では恋人的な接触はしない、その約束が破られそうな予感。
「仁人」
俺の名前を呼ぶその声もやたら甘い。
待て待て、いや、あの…好きなやつから名前を呼ばれるのは嬉しいんだけど、今は違う、なんかまずい。
「ちょ、あの…えっと…ここ楽屋ね?」
わかるよね?ダメだよ?
「ごめん、俺もう我慢できねぇ」
「は?」
「今日のドラマの撮影だって少しでも仁人に会う時間長くしたくて巻いてきたんだよ」
なにそれ、可愛い。
それは嬉しい。だけど
「……ダメだよ?」
じりじりと勇斗が近付いてくる。
「無理。仁人が足りなすぎて、本当に無理。」
「とりあえず、ここ楽屋だから、落ち着こ?近いから離れて?」
「無理。仁人だって、キスしたいって顔で俺のことみてたじゃん。」
…バレてる。なんで?
「や、違うし。」
「違くないでしょ。」
「………ここじゃ無理だし。」
「無理とか無理。仁人を補給させて。」
近付いてくる勇斗から離れようと後退りしてたが背中が壁についてしまいそれ以上逃げられなくなる。
とん、と俺の顔横の壁に手をついてさらに逃げ場を塞ぐ勇斗。
やばい、完全に捕食者の目してる。
「待っ…んぅっ…!」
待って、そう言いきる前に唇を塞がれた。
勇斗を退かそうと身体を押すが、びくともしない。ぐぐぐっと更に力を入れるがやはり微動だにしない。
え、なにこいつ…ゴリラ?
約束守れよと苛つく気持ちが少しと、誰かがくるんじゃないかというヒヤヒヤする気持ち、それと……久しぶりにキスできて嬉しいと言う気持ちで複雑だ。
ちゅっと小さくリップ音を立てて唇が離れたため、終わりかと思い文句を言おう口を開いた瞬間、また唇を塞がれた。
開いてた僅かな隙間から舌が入ってくる。
「っ…?!」
俺は勇斗の肩を押すが、その手を掴まれ壁に縫い止められてしまう。
全く抵抗ができないまま、勇斗の舌が俺の口内を貪り尽くしていく。
逃げる舌を捉え吸われ、上顎を舌でなぞられ身体に痺れが走る。
「…ふ、ンぅ………ぁ…っ…」
ぴちゃぴちゃと唾液が交じる音、酸素を求め開いた口からは吐息と共に小さく声が漏れてしまう。
鼻で息をしても酸素が足りない。
気持ち良い…、ぼんやりしはじめた頭はそんなことしか思い浮かんでこない。
「ンン……ッは、ぁ……」
身体から力が抜けて立ってるのが難しくなったとこでやっと唇が離れた。
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俺は壁づたいにずるずると座り込む。
「は、ぁ…仁ちゃん、…久しぶりで腰抜けちゃったの?」
意地悪そうに目を細め口に笑みを浮かべた勇斗が言う。
「は、…ぅる、さい…ばか」
「顔真っ赤にして、そんなうるうるした上目遣いで言われても、誘ってるようにしか見えないよ?かぁいい。」
力なく座り込んだ俺の前にしゃがみ俺の顎をくいっと持つ。
またキスするつもりか、こいつ。
俺はせめてもの抵抗として勇斗の口許を手で塞ぐが、顔が近づき手を取られそうになる。
「ばか…、…だめ!」
そう言った瞬間ガチャリと楽屋のドアが開いて人が入ってきた。
「え?」
「ひょ!?」
「あ」
上から、柔太朗、俺、勇斗。
「「「………」」」
シーンとあたりに沈黙が落ちて、 柔太朗が俺と勇斗を交互にみる。
床に座り込んで上から覆いかぶさりそうな勇斗に抵抗してる俺と、顔を近付けて俺の手を掴んでる勇斗。
これは…ちょっと言い訳は難しいかも。
どうしようかと考えていると、柔太朗が口を開いた。
「…勇ちゃん、我慢できなくてついによっしーを襲っちゃったの…?」
勇斗のことを真顔で見つめてそう溢す。
「「え?」」
予想外の言葉に俺と勇斗の声が重なる。
「よっしー…合意じゃないなら、俺が勇ちゃんのこと殴ろうか?一旦。顔はまずいから腹とか。」
次に俺をみてそう言う。
殴るとは。一旦ってなんだよ。
「それとも、合意?」
「や、…えっと…えっと…?」
楽屋でのキスは合意してないけど、恋人だからキスすること自体は合意だし、なんて言えばいいんだ?
混乱してると、俺の代わりに勇斗が柔太朗に向かって話し出す。
「…柔太朗、実は俺と仁人付き合ってるんだよね」
「ちょ、勇斗?!」
「あ、そうなんだ。ならいいか。」
柔太朗はなんでそんなあっさり納得してるの!?
「驚いてないな?」
「驚いてるよ。勇ちゃんの片想いだと思ってたし。」
「…え、俺の片想い?」
「うん。勇ちゃん仁ちゃんへの愛すんごいじゃん。でも、仁ちゃんは気付かずスルーしてたから片想いだと思ってた。」
「……俺みんなの前では抑えてるよな?な、仁人?」
「え、あ、うん…?みんなでいる時の勇斗は、俺だけ特別じゃなく全員に同じように重くない?なんなら太智に一番構ってると思うんだけど……?」
「おい、重いってなんだよ!仁人が一番に決まってんだろ!」
「ちょっとイチャイチャやめてー。確かに勇ちゃんはみんなに愛情重いし太ちゃんに構いがちではあるけど、どう考えても仁ちゃんだけ特別でしょ。」
「えー…?」
「俺がえーって言いたいんだけど。2人のときどんだけイチャイチャしてんの?……いや、でも勇ちゃんの恋愛感情には俺しか気付いてないっぽいから隠せてたのか。」
柔太朗がぶつぶつと喋っている。
よく分かんないけど、俺達が付き合ってることに対しての拒否感はないらしいことにホッとする。
そんなことを考えながらふと時計を見ると、いつの間にか20:45を指している。20:45……?
「え?!あ、勇斗お前打ち合わせだろ、時間平気なの!?」
俺がそう声をあげると、勇斗が時計をみて焦りだす。
「やっべ。そろそろ出ないと。打ち合わせ即効終わらせてくる!あ、今日仁人ん家行くからね!」
そう言って、座り込んでた俺を立たせながら自分も立ち荷物を掴んだかと思うと、ちゅっと俺に口付けをしてバタバタと出ていった。
ちゅっ…?
「………………は?」
「わお(笑)」
あいつ……!
柔太朗が居るのに何してくれてんの!?ありえないんだけど!
勇斗が居なくなった楽屋で、気まずいなーと思いながら柔太朗を見る。
柔太朗は鼻の下伸ばした顔してる。
おい、やめろその顔!
「………柔太朗、劇場版の撮影だからって帰ったんじゃなかったの」
「あー、忘れ物したから戻ってきたんだった。」
「あ、そう。」
「まさかあんなことになってるとは思わず、ノックしないで開けてごめんね(笑)」
「う゛っ、あれは、ちがっ…!俺は楽屋ではだめって言ってて!」
「めっちゃ焦るじゃんww」
「ほんと…まじで普段はあんなことしないから!」
「ま、メンバーしかいないときなら良いんじゃん?」
「良くないだろ!?お前なんでそんなに肯定的なの」
「俺、さのじん厨だからね」
「は?」
「勇ちゃんとよっしーには永遠に一緒にいてほしい。」
「は?こわ。なに?」
「それよりさ、いつから付き合ってんの?」
「……はぁ?……1年半ちょっと」
「え!!!??」
「わっ、珍しい大声をここでだすなよ」
「えー、まじぃ?結構前だ。」
「はい、この話終わり。」
「もうちょっと!他のメンバーには言わないの?みんな受け入れるよ?」
「…あー…柔太朗にバレちゃったし…言ってもいいけど、…気まずいし…恥ずい」
「え、付き合ってるって言わない理由って、恥ずかしいからなの?かわいっ(笑)」
「うるせーな!」
「ねぇねぇ、勇ちゃんのどこが好きなの?」
「おっまえ、女子高生か!?」
「いいじゃん、教えてよ」
「うるさいうるさい!もう、帰る!」
「えー、仕方ないな。今日はここまでにしておいてあげるよ。ちゅーしてるとこみられて恥ずかしいんだもんね。」
「!!!!」
柔太朗の言葉に、ぼっと熱くなる。
「よっしー、真っ赤すぎwww」
「アホ!帰る!」
俺は喚きながら柔太朗を置いて、楽屋を後にするのだった。
コメント
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うわああ第2話読み終わったけど、まじで仁人の立場に立たされたこっちまで恥ずかしくなる展開だったわ(笑)!柔太朗に「さのじん厨」って言わせるところとか、バレた瞬間の「ぴゃ!?」みたいな3人の沈黙、めっちゃ好き。勇斗の仁人補給発言には「お前それ食事かよ」ってツッコミ入れたくなったし、でも最後に「今日仁人ん家行くからね!」ってチューして飛び出していくの、ほんとアイドルやめろ(褒めてる)。続きめっちゃ気になる!