テラーノベル
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柔太朗を置いてそそくさと帰宅した俺は適当に作ったご飯で腹を満たしたあと、風呂に入り一息つく。
髪を乾かし、さっぱりしたと思いながらソファに座っていると、なにか忘れているような…という気持ちになってきた。
…んん?なんだ…?
うーん、と考えて浮かんできたのは勇斗の声。
『あ、今日仁人ん家行くからね!』
あれ、勇斗……今日、俺の家に来るって言ってた…?
あまりにもどさくさ過ぎてスルーしちゃってたけど、本当に来るのだろうか。勇斗は明日も朝早くから仕事のはずだけど……。
今の時刻は23:00を過ぎたところだ。
スマホを見ると示し合わせたかのようにピコンとメッセージアプリの通知が表示される。
メッセージの送り主は勇斗。
内容は【あと5分でつくから】
…あと5分?早くない?
そんなことを考えてるとピンポーンとインターフォンが鳴る。5分経ってないけど、この時間だし確実に勇斗だな…。
俺は腰を上げ、インターフォンのモニターを確認する。
案の定モニターに映ってるのは勇斗だ。 俺はロックを解除して勇斗を招き入れた。
「ただいまぁ」
「…おかえり?」
一緒に暮らしてないけどね。
手洗いうがいをして、リビングに入ってソファに座る勇斗。俺もその横にちょこんと座る。
……なんか、久しぶりに勇斗が隣にいる。
いや、仕事では隣にいるし今日も数時間前まで会ってたけど、家という完全にプライベートな空間にいるのが久しぶりでなんだかソワソワする。
「ふっw」
そんな俺に気付いたのか、勇斗が笑う。
「…なに笑ってんだよ。」
「だって、仁ちゃんソワソワしすぎ(笑)」
「うるさいな」
「ずっと初々しくて可愛いね」
「うざ!」
だって、2ヶ月も恋人らしいことしてないし。まぁ、今日の楽屋でのあれは置いといて。
そりゃあさ、勇斗はメッセージで好きだのなんだのって送ってくれるし電話もしてくれたりはするけど、会って過ごすのとは違うじゃん。
「ごめんて、そんなむすっとした顔しないで。可愛いけど。」
「…別にむすっとしてないし、可愛くない。てか、勇斗、明日も朝早いんじゃないの?」
俺の家に来てていいのか、と言外に問いかける。
「だいじょーぶ。明日午前オフにしたから。」
「…は?」
「仁人と恋人として2人きりで過ごせてないのが無理すぎて、仕事詰め込んで明日開けた。」
「え、あ、あんなにギチギチのスケジュールを…?」
「うん。仁人不足で死にそうだったから。」
「死にそうって…」
「スケジュールとにらめっこして、ここしかないって思ったよね。仁人、明日午前オフで14時に現場入りでしょ?絶対にそれに合わせるって思ってめっちゃ頑張った。」
「勇斗…」
忙しいなかでも俺と過ごすことを考えてくれて、逼迫したスケジュールをなんとか調整してくれたことにジーンとする。
だが、その後に続いた
「ま、夜まで我慢できなすぎて、楽屋で手をだしちゃったけど。」
という言葉で、楽屋での所業を思い出し俺はチベット狐のようなジトッとした目になった。
「お前…、ほんと…ドア開けたのが柔太朗だから良かったけどスタッフさんとかだったらどうする気だったんだよ…。」
「ごめんね?」
こてん、と首を傾げて謝る勇斗。
こいつ反省してねぇな。
「は~や~と~?」
「だってぇ、ほんとは俺、仁人は俺の恋人ですって言いふらしたいもん…。」
「もん、じゃない!ダメ!」
「ケチ」
「ケチじゃない!俺達、アイドルなの!」
「わかってるよぉ。だから、今まではちゃんと我慢してたでしょ?今後も外では気を付ける。楽屋は…ちょっと、手をだしちゃうかもだけど。」
「おい…最後ダメだろ。」
「まあまあ」
「……はぁ、今日は不問にする。」
久しぶりにキスできたの…嬉しかったし。今日だけね。
勇斗は俺の言葉ににこっと笑ったあと、話を変える。
「俺、今日泊まるからね」
「…ん、わかった。ご飯は?…俺、食べちゃった。」
夕飯を食べてなかったら申し訳ないと思いそう聞くと、勇斗は俺の頭を撫でながら「食べてきたから大丈夫」と言う。
大きな手が心地よい。
そのまま撫でられていると、勇斗がにこにこと笑う。
「…なんか嬉しそうだね?」
「嬉しいよ、大好きな仁人と一緒に過ごせるんだから。」
さらりとそう告げる勇斗に、頬が熱くなる。
「…あっそ。」
「仁ちゃんは?嬉しくないの…?」
少ししょんぼりしたように聞いてくる勇斗。こいつ絶対わかってるのに…!
「ぅ」
「う?」
「………………ぅれしい」
そっぽ向いて小さくそう呟くと勇斗は嬉しそうにニヤニヤする。
「可愛いなぁ」
「うるせぇ」
「口悪いとこも好きだよ」
「………」
「仁人、俺シャワー浴びてくるね」
「突然だね?」
「…午前オフとは言えもう遅い時間だし、それに……」
そこで言葉を区切る勇斗。
「…?それに?」
なんだ?と思ってそう言うと勇斗はニヤッと笑って俺の耳元でこう囁いた。
「仁人と早くイチャイチャしたいから。…ベッドで。」
その言葉の意味を理解した瞬間、顔に熱が集まる。
「なっ…!」
「いい子で待っててね♡」
「なに言ってんだバカ!」
悪態をつく俺にニヤニヤしながら勇斗は浴室に消えていった。
一人残された俺は勇斗が残した言葉の意味を頭の片隅に追いやって、勇斗の着替えを用意してやる。
前に泊まりに来た時に置いていった服を脱衣所に置きにいくと、シャワーの音が聞こえてきて、心拍数が上がった。
リビングに戻り、テレビをつけて眺めてみるが、久しぶりにそういうことをすると思ったら内容が全然入ってこない。
初めてでもないのに、意識してしまうのがなんだか悔しい。
そんなことを考えながらこてっとソファに横になって、テレビをしばらく眺めていると勇斗が戻ってきた。
「じーんと♡ただいま。」
「…おかえり」
「なんかちんまりしてるね(笑)」
膝を曲げてソファに身体を全部のせて猫みたいに丸まって横になってる俺をみた勇斗が笑う。
「んー」
「なぁに、どーしたの」
転がったまま、適当に返事した俺を斜め上から覗き込む勇斗。
勇斗の顔は恋人の時にしか見せない甘ぁい顔で…。その顔をみていたら、ああ好きだな、と思う。
ちゅー、したいなぁ…。
久しぶりだし、たまには思う存分甘えてもいいかな、なんて考える。
「ねぇ、はやと…ちゅーして」
「………は?」
「ちゅーして」
「じ、仁人さん?」
「なに、やなの?」
身体は横向きのまま顔だけを勇斗に向けてそう言うと、勇斗が両手で自分の顔を覆う。
「俺を殺す気なの?可愛いが過ぎる、何こいつ、こわ。」
なんかブツブツ呟いてるけど、よく聞こえない。
「勇斗…?」
全然キスしてくれないから身体を起こそうと曲げてた足を伸ばしソファに手をついて上半身を持ち上げようとしたその時、勇斗が顔を覆っていた手を退けて俺のもとに来て起き上がりかけてた俺の肩をとんと押す。
中途半端は体勢だった俺はソファにぽすっと逆戻りし、仰向けになる。
「わ、」
「仁人」
「勇斗?」
「…ちゅー、したいんでしょ?」
そう言いながら、ソファの背凭れに手をかけ片足だけソファに乗せて、仰向けになった俺に覆いかぶさるようにして迫る勇斗。
俺はそんな勇斗を見つめたあと、そっと目を閉じる。
ふに、と唇に柔らかい感触。
すぐに離れてしまったそれに目を開けると、ぼやけてしまうような至近距離に勇斗の顔がある。
目と目が合って、また、わずかに触れるだけのキスをされる。
唇だけじゃない、そのまま頬、目蓋、おでこ、鼻先と優しく口付けが落とされていく。
そして、また唇に口付け。
唇が離れる瞬間、ちゅと小さくリップ音が鳴る。
優しい触れあいに心が満たされていき、なんだか嬉しくて勝手に口角があがってしまう。
もっともっと触れあっていたくて、勇斗の首に手をまわし離れていかないようにする。
「勇斗、もっと…ちゅーして?」
そう告げると、勇斗の目が大きく見開かれる。
「……仁人、そんなのどこで覚えてくるの。」
「?」
「…覚悟しろよ?」
「え?、ン」
低く呟かれる言葉とともに、唇を塞がれた。
先ほどの触れ合いよりも、幾分かしっかりとした口付け。角度を変えながら、何度も何度も繰り返されるキス。
唇が離れた隙間に笑みが漏れる。
「…ン、ふふ…」
「なぁに笑ってんの」
「…勇斗とちゅーできて幸せだなぁって」
「!…仁ちゃん、今日やけに素直ね、俺の心臓やばいんだけど。」
コメント
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ただいま戻りました、寺島あおいです🌷 第3話、あったかくて甘くて…もう胸がいっぱいになりました。特に、勇斗が「仁人不足で死にそうだった」ってスケジュールを詰めてまで時間を作ったところ、切実で愛おしくてじーんとしました…。それでいてラストの仁人さんの「ちゅーして」からのあの流れ、素直で色っぽくて、思わず息を止めて読んじゃいました。お互いの”好き”が溢れてるのが伝わってきて、こちらまで幸せな気持ちになりました🤍
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