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「ふざけんな、若井のばーか···何が寂しかった、だよぉ···どうせ僕は、無価値だよ···」
若井にとって自分は価値がないのだと分かるたびに悔しくて虚しくて仕方ない。
ちょっと最近良い人がいて、と若井が嬉しそうに話してくれた時、僕はなんて返事したらいいかわからなかった。
寂しい時にそういう相手がいるといいよね···その軽い口調に、男の僕ではためだと思い知らされる。
好きなだけではだめなんだって。
どんなに可愛い格好をしても、化粧をしても変えられない。
けど好きな気持ちは諦められなくてこんなふうにうだうだと言っている。
はぁー、とため息をついてベッドに寝転んだ。
「無価値ねぇ」
「うわぁっ、もとき?!」
「ドア開けてくれてたから」
そうだった、元貴からちょっと行っていい?って連絡がきて開けておいたんだった···ちょっとお酒を飲んで酔って忘れてた。
「ごめん、すっかり忘れてた···」
「忘れるくらい、俺はりょうちゃんにとって“無価値”?」
「そんなわけないから!何言ってんの!」
「じゃあ若井からしてもそうでしょ」
元貴が言ってくれることはわかる。
けどメンバーとしてとか友達としての価値じゃない。
僕は若井から恋愛として、もしくは性的対象として求められたいんだ。
「···なら、いいけど」
「りょうちゃんってわかりやすい、顔に納得いかないって書いてある」
「別に···」
元貴の手が僕の頬を撫でて、 その優しい触り方にドキッとしてしまう。
「“僕は若井に好きって言われて求められたいです、女のところなんかいかないで僕にして”」
「ちょっ···何言って···!」
「俺が気づいてないとでも?りょうちゃんの気持ちなんてね、ずっと前からお見通し」
ここまでズバリ言い当てられるとすぐに反論も出来ず、元貴から目を逸らして手首を掴むその手を振りほどこうとした。
「もう若井なんてやめなよ、あいつはりょうちゃんのこと好きだけどただのメンバーで友達と思ってるだけ。どんなにりょうちゃんが好きでも可能性なんてない」
やめて、言わないで。
わかっていたつもりなのに言葉にされるとそれは心に刺さり痛くて堪らない。
「わ、わかってる···けど、諦めつかなくて···元貴には言われたくなかった、嘘でもがんばれって諦めるなって言ってほしかった···! 」
自分勝手な言葉が口を突く。
可能性ゼロ、どころかマイナス、元貴からすれば迷惑で見ているだけでも痛々しくてみっともないんだろう。
それをわざわざ言いにきたの?
なら帰って欲しい、打ちのめされるなら若井の言葉でそうなりたかった。
「帰ってよ···!見てられないならいっそ若井に気持ち伝えるから、拒否されて嫌な顔されて困らせてそれはありえないって言われて戻れないくらい分からされて···そしたら諦めつくよ、さすがの僕でも」
「諦めはつくの?それならそれもありかもね。そしたらやっと次を見てくれる?がんばれ?諦めるな?思ってもないことは言えない。さっさと諦めて、あいつなんかどうでも良くなって。···そして俺のこと見てよ、りょうちゃん」
怒りと惨めさで俯いていた僕はその言葉でハッとして元貴の顔を見た。
珍しく余裕のない、泣きそうな表情。
元貴は僕が目を逸らしていた間、ずっとこんな表情だったんだろうか?
「どういう意味···?」
「やっとこっち、見てくれた。りょうちゃんを見つけたのは俺だったのに、若井ばっかり見てさ、ズルいよ。俺はずっと好きだった。気づかないほど若井のことが好きだった?彼女が出来ても脈がなくても···いつもりょうちゃんは若井のことばっかり。俺を見て欲しい、一生大切するよ、りょうちゃんのこと愛してる。俺じゃだめ?」
最低だ、僕。
元貴の気持ちなんて本当に気づいてなくて、今だって嘘じゃないかと思ってしまうくらい。
僕が若井を見ていたように、元貴も僕のことを見ていたの?
「元貴···今、びっくりしてて···本当に?そんなの···気づかなかった···」
「いいよ、言えなかったのは俺もだし。けどね、そろそろ···俺だって見て欲しい。好きな人がさ、報われないで泣いてるのを隣で応援するほど俺は性格良くないんだよね。それなら奪ってしまおうって、俺が幸せにしてあげたいんだよ」
元貴のことは好き、もちろん。
けど恋愛対象かとか、好きって言われたから好きになれるのかとか、今は正直全く分からなくて僕の頭も心もぐちゃぐちゃだ。
「···今更、急がないから。ちょっとさ、考えてくれる余地はある?」
元貴の手が僕の手に重なる。
意外とおっきなその手は珍しく僕より冷たかった。
「そんなの、僕都合良すぎない?若井が好きで、けどだめならこっち、とか。元貴は···そんなのいいの?」
「俺にとっては好都合。もし選んでくれたら若井のこと好きだったことなんて忘れるくらい愛するし。絶対好きにさせてみせるし。俺、言ったことは絶対叶えるから」
昔から変わらない元貴の自信たっぷりの言葉···そんな元貴に、昔から僕は弱いんだった。
「すぐは···無理だし、正直どうなるかわかんないけど···嬉しい、から。考えても···いい?こんな僕で、いい?」
「いいよ、もちろん···俺は、そんなりょうちゃんを好きになったから」
ふぅぅ、と元貴が息を吐いて、緊張した、と笑った。
あの大森元貴をこんなに緊張させてたんだ、僕。
「···俺の気持ち、ようやく言えた。聞いてくれてありがと。このあとどうしよ?帰ったほうがいい?」
「···一緒に居てっていったら?」
元貴は眉をハの字にして嬉しそう笑って僕の頭を撫でて、バッグからいろんなお菓子を取り出した。
全部、僕が大好きなものばっかり。
「りょうちゃんって···ずるいよ、ほんと···まぁ、惚れたから仕方ないか」
そうやって自虐的に笑った元貴が僕にとって無価値どころか大切で愛おしくて一生を共にする人になって、今日のことをこんなこともあったねと笑えるようになるのはそう遠くない未来のお話。
コメント
3件

めっちゃいいです🥺すんごい好きです🥺ぜひ、報われた後のお話も見たいです、、、2人が幸せになるお話を!!

たった一人に愛されたい。でもそれが難しい状況って、意外と多いよね。切なっ!どうか報われますように✨