S岡さんはよくわからない。
いつも塩飴を持ち歩いているしたまにくれる。
すごく適当かと思えば接客はすごくキッチリしてたりするしフェイスアップもこまめにしている。
真面目かと思えば勤務中にアダルト雑誌を立ち読みしたりする。
「僕君は彼女とかいるの」
S岡さんの急な問いに戸惑ってしまった。
「え、いや。今はいないです」
「…今は、かぁ」
手持ち無沙汰なのかレジに置かれた輪ゴムを引っ張ったり縮めたりしているS岡さん。
「S岡さんは、いるんですか」
「いないよー。」
今度は客の置いていったレシートに落書きをし始めた。
「そうなんですね」
会話が続かないがS岡さんは何処吹く風だ。
「あ、あの」
「僕君さぁ」
僕の言葉を遮ってS岡さんは話し出した
「その前はいたであろう元彼女ってちょっと茶髪で肩までくらいの髪の毛?」
何を言ってるんだこの人は。
「いや、どうだったかなぁ」
「右耳に2つ左耳にひとつピアスをつけてるね。」
レシートにした落書きを見せてきた。絵心は壊滅的だ。
「なんですか?それ」
「君の元彼女。」
自分の書いた絵を満足的に見つめながら違う?と言いたげにレシートをヒラヒラしている。
僕が彼女と付き合っていたのは3年前だし髪型も変わっているだろう。
「髪型は今はどうかわからないですけどピアスはしてましたよ、星型のと僕があげた…」
そこまで言いかけると突然パッと全ての電気が消えた。
店内BGMはガッガッと途切れて気持ち悪い音を流している
「えっ!なんですか!これ!S岡さん!」
「うーん。めんどくさいねー。」
S岡さんは携帯の灯りを頼りに懐中電灯を取りに行った。
そこで僕は1人取り残されたことに気づいて追いかけようとしたがバックルームに携帯を置いてきたことに気づいて為す術なく立ち尽くしていた。
薄暗い店内のレジで立ち尽くすのはきつい。
S岡さんが懐中電灯をもって帰ってくるのをただ待つしか無かった
店の外を眺めるが人通りはなく客が来ないのが幸いだ。
レジの横の水道からぽちゃん、ぽちゃんと水の滴り落ちる音が聞こえる。
S岡さんが変なこと言うから余計に怖くなってしまった。
元彼女、たしかに髪型は肩くらいまでだったような気がする。どんな別れ方をしたっけ?
「別れてないよ」
不意に耳元で囁くような声がして飛び上がった。
それと同時に店内の電気とBGMも元通りになった。
「あれ?僕君なにかした?」
バックルームからひょこっと顔を出したS岡さんに僕は半泣きで駆け寄った。
「もう何なんですか!!! 変な声は聞こえるし停電するし!!!」
「え?停電?」
「停電してましたよ!!真っ暗でしたよ!なんで早く懐中電灯持ってきてくれなかったんですか!」
S岡さんはうーんどうなりながら塩飴を僕の口に放り込んでこういった
じゃあなんで街灯はついていたのさ。
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