あるバイトの日珍しくS岡さんが遅れてきた。
昨夜から悪寒がとまらず高熱が出たとかなんとかで。
そんな体調なら何とか別の人に代わってもらえばといったがS岡さんは今月厳しい、といって早々にタイムカードを切っていた。
案の定そんな体調のS岡さんはいくら暇なローカルコンビニの夜勤とはいえまともな戦力になる訳もなく店長に連絡しようか迷っていたところで店のドアがあき店長が顔を出した。
「あ!やっぱりS岡さんきてる!」
店長の声にS岡さんはビクッと肩を震わせて苦笑いだ。
「ダメだって。そんな熱あるのに!」
店長はS岡さんの手を引きながらバックルームに引きずり込んでいった。
S岡さんは口パクでどうやら(たすけて)と言っていたようだが自業自得だと僕は自分の業務に戻ることにした。
そのあとS岡さんは店長に家に帰らされたようで店長とその日は業務をこなす事になったのだった。
数日してまだ鼻声は残るものの無事回復にむかったS岡さんがバイトに来た。
鼻をすすりつつもテキパキ業務をこなす姿にS岡さんがいると楽だなぁと呑気に考えいるとS岡さんが隣にやってきて悪かったね、と言った。
「なにがですか?」
「しばらく休んだし。そっちは大丈夫?」
風邪のことを言っているんだろうと僕は大丈夫ですよ、と気にしていないと首を横に振った
そう、といってS岡さんは僕と並んでレジに立って話し始めた
「あの日さ、家に帰ってすぐ布団に倒れたんだけど天井が歪んでてさー」
それだけ熱が高かったんだろう。
ウンウンと頷きながら話を聞いた
「もうなんか身体中あついしものが大きく感じたりかと思えば小さく感じたり」
不思議のアリス症候群と言うやつだっただろうか。
「そうしてると急に寒くなってきて足先からぞぞぞって。」
まだ熱が上がり掛けのよくあるやつだ。
「どんどん下からあがってくるんだよ。足先から。そしてあっという間に馬乗りになられて真っ暗な部屋の中に目だけ蘭々と輝いててヒューヒュー口から息を吐き出して」
「え!!ちょっと!!何の話ですか!?」
「え。いつも家に入り込んでくるやつがいるんだよ。さすがにあの日はやばいと思ったよ」
その後もたんたんと話し続けるS岡さんに僕はめまいがした。
「それでやっと眠れて朝には居なくなってたんだけどこれがさ」
S岡さんは腕にはくっきりと手の後が青白くのこっていた。
祟られたのだろうか?呪われたのだろうか?
「S岡さんの、…家って」
事故物件ですか?いわく付きですか?と言おうとして
「父親が死んだんだ。孤独死ってやつだね。借り手もいないしってことで格安で住まわせてもらってる」
息子に対してあの態度は無いけど生前仲も良くなかったからしかたないよなぁとわらってS岡さんは外のゴミ箱の掃除に向かった。
その後ろにぼんやりとした黒い影を引連れたまま。
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