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翌日。
屋上への階段を上ると、澪はそこにいた。
風で髪が揺れ、いつものクールな横顔なのに、
どこか不安そうでもある。
りなが近づくと、澪は小さくつぶやいた。
「……昨日、ごめん。追いかけられなかった」
「澪は悪くないよ。悪いの、あたし」
言うと、澪は首を横に振った。
「昨日のりな……すごく、つらそうだった」
その声が痛いほど優しくて、
りなは胸の奥がぎゅっとなった。
「……嫉妬、したの」
澪が瞬きをする。
「翔太くんと話してるの見て……
あたし、なんか、置いてかれたみたいで……」
言いながら、涙がにじむ。
「澪の全部が欲しいとか……
そんなの言えないし……重いと思われるし……
でも……」
澪が歩み寄ってきた。
そっと、りなの頬に触れる。
「重くない」
澪の声が、風より静かにりなの耳に落ちる。
「重くてもいい。りなの気持ちなら……全部受け止めたい」
「澪……」
「私も……りなが他の誰かを見るの、嫌」
その一言で、りなの胸の奥まで熱が走る。
「りなが、好き」
澪の瞳が揺れながら、まっすぐりなを見ていた。
りなの世界が一瞬で真っ白になる。
「……あたしも……好き。
澪じゃなきゃ嫌……」
息をするのも忘れるほど近い距離で、
お互いの言葉が、心の奥に落ちていく。
澪がそっと手を伸ばし、りなの指に触れた。
少しずつ絡まる指。
温度が伝わってくる。
「りな……私と……恋人になって」
りなは涙をこぼしながら笑った。
「なるよ……当たり前でしょ……ばか……」
二人の手は強く結ばれた。
風が二人の間を通り抜け、
屋上の世界が静かに光を帯びる。
こうして、
二人は正式に“恋人”になった。