テラーノベル
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夜、ベッドに入ってから2時間。
石川はすやすや眠っているのに、藍だけが眠れずにいた。
「……祐希さん」
そっと名前を呼ぶと、石川は薄く目を開けた。
「藍……? 起こした?」
「ごめん、眠れなくて」
「……こっちおいで」
優しく手招きされ、藍は石川の腕の中にすっぽり収まった。
静かで、あったかくて、心臓の音が近くて。
「……ありがと」
「……なんか不安になった?」
「ううん。ただね……祐希さんのこと考えてた」
「……うん」
「好きすぎて、どうしようって思って」
「俺も好きだよ」
「でもね、たぶん──祐希さんが俺を好きって思ってる以上に、俺は祐希さんが好き」
「……は?」
「ほんと。たぶん世界でいちばん祐希さんが好き」
真剣な顔で言うから、思わず笑ってしまう。
でも胸の奥は、ぎゅっと温かくなる。
「俺も、負けないくらいお前が好きだよ」
「……じゃあ、どっちが好きか勝負する?」
「くだらない」
「ふふ。でも祐希さん、顔ゆるんでる」
「うるさい。寝ろ」
言いながら、石川はそっと藍の額にキスを落とした。
そのままふたりは、手をつないだまま、静かに眠りに落ちた。