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足元の光に向かって落ちていった“ないこ”は、次に目を覚ました時、そこが“どこでもない場所”だとすぐに理解した。
空もない。床もない。ただ、“空間”だけが、広がっていた。
その中央――
“椅子”に座る、もうひとりの自分。
ないこ(心の声):(また、俺……? 闇ないこ、じゃない……)
椅子に座るその“ないこ”は、静かに笑っていた。
けれどその笑みは、どこか壊れていて、苦しげだった。
???:「よう、“俺”。やっと会えたな」
ないこ:「……お前は誰だ」
???:「お前の中にずっといた、“忘れたふりをしていた俺”さ」
???:「“本当の声”を出すのが怖くて、
本当の痛みを知るのが嫌で、
“歌”に隠れて逃げてた、弱ぇ俺」
ないこは無言で睨む。
???:「……でもな、俺たち、ずっと一緒だった。
歌ってる時も、笑ってる時も、心のどっかで、
『もう全部投げ出してぇ』って思ってただろ?」
ないこ:「……思ってたよ。逃げたかった。
でも、もう……逃げねぇって決めたんだよ、俺は」
???は立ち上がる。
???:「じゃあ――戦え。お前が“ないこ”って名を名乗る限り」
その瞬間、世界が軋むように震えた。
彼の背後に、影が集まり、“深層”の音が再び鳴り始める。
ないこ(心の声):(これが……俺の中にいた、“もうひとりの俺”)
ないこ:「……いいぜ。壊しにきたんだ、俺は。
自分の弱さも、後悔も、闇も、ぜんぶ――」
ギターが手元に現れる。
ないこ:「俺の音で、ぶっ壊す。俺の歌で、叫ぶ。
この闇が全部俺だったとしても――歌うしかねぇだろ」
影が迫る。音が揺れる。
“自己との対決”が、今、始まる。
次回:「第三十二話:名前のない声に、名を与えて」