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大森視点
「お疲れっ!」
いつものように軽い口調で声をかけるが、
その相手は目を合わせないどころか、
軽く会釈しただけだった。
相変わらず愛想が悪い。
他の人にもこんな態度なのか?と、
心配になる程だ。
「⋯⋯ま、
です」
(え!?
声ちっさ!!
こんなの聞き取れないだろ?)
しかし普段であれば無言でスルーされるので、
今日はまだマシな方だ。
その後は雑談する間もなく、
しれっと立ち去る彼は、
俺の後輩である、
星崎瑠璃夜(ほしざきるりや)だ。
音楽を始めたのは八年前で、
まだまだ無名の新人なのだが、
TASUKUという芸名で、
持ち前の低音を生かした色気のある独特な声が売りの歌手だ。
正直TikTokやYouTubeチャンネルで見かけて、
彼に興味を惹かれたために話をしてみたいのだが、
何故かイマイチな反応しかされなかった。
「距離感も馴れ馴れしく詰め寄らないようにしてるし、
声掛けも怖がらせないように優しくしてるつもりなんだけどなぁ。
何でだ?」
彼に嫌われるようなことをした覚えが全くない。
一人でどこに問題があるのか分からずに唸っていると、
メンバーから声をかけられた。
「お疲れー⋯って元貴?
なんか悩み事か?」
「あ、
もしかして例の後輩?」
心配そうに若井が俺の顔を覗き込んでくる。
その後ろで藤澤が星崎が去った方向を見ながら聞き返してきた。
何故かズバリと言い当てられて内心ドキッとした。
「俺⋯嫌われてんの?」
「本人に聞きなよ」
呆れたように藤澤が笑う。
それが出来たら苦労はしないのだが、
会話すらしたがらない相手にいきなり、
自分のことを嫌いかと聞くのはとても勇気のいることだった。
知りたいような、
知りたくないような、
何とも言えなくて、
すっきりとしないこの気持ちはどうしたらいいのだろうか。
(もっと仲良くなりたいんだけど、
難しいのか?)