テラーノベル
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◆ 朝 8:17
目覚ましのアラームが鳴る前に、俺は目を覚ます。
横には、寝相の悪いりうらがシーツをぐちゃぐちゃにして、枕を抱きしめて眠っている。
ないこは、苦笑しながらその髪を指先で撫でた。
「…朝だよ、りうら。」
「んん……あと3分……」
「絶対3分で起きないでしょ。」
そう言いながらも、その“あと3分”を許してしまうのが、今のふたりの距離だった。
◆ 朝ごはん
冷蔵庫の中には、りうらが勝手に買ってきたヨーグルトと、ないこの好きな野菜ジュース。
「、、最近さぼってんじゃん、健康食。」
「うるさい。朝飯作らないくせに。」
「じゃあ俺、トースト焼いてあげるよ。世界一焦げるやつ。」
「絶対食わん。」
なんでもないやり取りが、もう当たり前になっている。
食卓に並ぶのは、コンビニのパンとインスタントスープ。
でも、温かいのは、ちゃんと**“一緒に食べる”**ってことだった。
◆ 昼過ぎ
休みの日は、ソファに並んで映画を見るのが習慣。
りうらは途中で絶対寝るし、ないこはツッコミが止まらない。
「これさ、明らかに死んでないよね?」
「静かに見させて……Zzz…」
「寝るんかい。」
ないこがそっとブランケットをかけてやると、りうらが小さな声で言った。
「……なんか、こういうの、いいね。」
「うん、いい。」
それだけで満たされる午後がある。
◆ 夜 22:36
風呂上がりのりうらが、濡れた髪をタオルでぐしゃぐしゃ拭きながら出てくる。
「ねぇ、、前言ってたさ、あの展覧会来週行かない?」
「え、珍しいじゃん。興味あんの?」
「ないくんが行きたそうだったから。そんだけ。」
驚いた顔をしたあと、ふっと笑った。
「素直になったね。」
「うっさい。昔の俺とは違うし。」
ふたりは目を合わせて笑い合う。
タバコの煙も、もうここにはない。
代わりにあるのは、穏やかな時間と、確かな成長。
◆ 深夜 1:02
りうらがぽつりと言う。
「このままずっと、こうやっていられるのかな。」
「さあね。でも、俺は別に今のままで十分。」
「そっか。……じゃあ、俺もそうする。」
ないこは一瞬、目を見開いたあと、そっぽを向いた。
「……マジで、そういうとこだぞ、お前。」
「何が?」
「“そういうとこ”、ずるいんだよ。」
「ふふ、わかってるよ。」
最後に
0時を過ぎても泣かなくなった。
嘘をつかなくても、素直になれるようになった。
相手を傷つけない方法を、ちゃんとふたりで見つけた。
恋人とは、名乗ってない。
でも、誰よりも大切な人。
そんなふたりの“日常”は、今日もまた静かに続いていく。
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