コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
***
「今、思い出しても感激モノだったなぁ。レインくんのはじめて」
「ブッ!」
大倉さんに押し倒されて、いつものように励んだ後、テーブルに用意されていたレモネードを飲んでいたら、唐突に告げられたセリフのせいで、思いっきり吹き出してしまった。
「なっ、なんでそんなモン思い出すんだ。バカらしい」
動揺しながら乱された服を、さっさと手早く直す。動揺しまくりで、上手くシャツのボタンがはめられないとか、どんだけ不器用なんだか。
「ホントに俺が、はじめての男だった?」
「何を疑ってんだよ、くだらない!」
「だってさ、はじめて挿れたのに、その瞬間いきなりイクとかありえないと思って」
「くっ! しょうがねぇだろ、人よりも敏感なんだって」
背中を向けて誤魔化すように、コップに残っていたレモネードを飲み干した。この甘酸っぱさとほのかな苦みは、残念ながら過去の出来事に、面白いくらいに比例しまくってる。呆れるくらいワガママで、嫉妬深い大倉さんには分からないだろうな。
「敏感なのは、抱く前から分かったけれど。それでもさー……」
うだうだ言いながら後ろからぎゅっと抱きついてきた、華奢なクセに力がありまくる両腕。ため息をついてテーブルにコップを置き、その手の上に自分の右手を重ねてやる。
「俺は回数重視なんだ。感じさせられるお陰で、大倉さんの倍はイってるだろ」
「倍というか、いい感じにたくさんイってくれるのは、嬉しい限りだけど」
「その数と気持ちは、同じってこと。だから疑うなよ」
「だったらさ……。一緒に暮らしたら、その数は減ってしまうだろうか?」
(一緒に暮らす――!?)
口元を引きつらせながら顔だけで振り返ると、少しだけ頬を染めた大倉さんが、じぃっと見つめ返す。
「俺と一緒に暮らすの、イヤ?」
恐るおそるといった様子で訊ねる言葉に、すかさず首を横に振ってみせた。
「別にイヤじゃねぇけど。でもいきなりすげぇ言葉、投げつけたな」
「いきなりでもないんだ。ずっと考えていたことだし。レインくん、縛られるのイヤがっていたから、ずっと言い出せなかっただけ」
「チッ、僅差で言われちまった。残念」
くすくす笑って胸ポケットに忍ばせていたものを、強引にその手に握らせた。
「これって……何のカード?」
「マンションのカードキー。おねぇ店長に頼んで、いい物件を探してもらっていたんだ、記念日までにってさ」
「だって昨日逢ったとき、アイツ何も言わなかったのに」
珍しく混乱しているんだろう。いつも浮かべてる笑みが消え失せ、呆然といった表情を浮かべる。先に言えなかったが、サプライズな同棲宣言は成功らしいな。
「大事なことを、簡単にゲロされて堪るかよ。それなりに報酬を渡してある」
(某ブランドの口紅、世界300個の限定販売のものを握らせたからな。絶対に口は割らないだろうと思ったんだ)
背中を向けていたのを止めてきちんと向き直り、大倉さんの両手を握りしめてやった。
「秀彦、一緒に暮らそう。いつでもアンタの笑顔が見たい、傍にいたいんだ」
この記念日を境にお互い引越しをし、用意していたマンションに一緒に暮らし始めることができたのに、一緒に暮らしても、事件は起こってしまうのである。
めでたし めでたし
事件の話はのちほど、ここで語られる予定です(・∀・)
その前に番外編を連載していきますので、お楽しみくださいね。